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冒険者アル  作者: テステス
6章 ロマン
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エルフの古謡と、月笑う宝の地図

裏通りでの素晴らしい夕食を終え、ほろ酔い気分の仲間たちと共に『赤猫亭』の部屋へと戻ってきた。

アルが新調した槍の穂先を布で磨いていると、窓辺で月を眺めていたフィオが、ふとリュートを爪弾きながら見知らぬ歌を歌い始めた。


フィオ「♪~三つの岩の影法師、月が笑えば道が開く。眠る金貨と古い杖、忘れられた王様の箱庭へ……」


どこか郷愁を誘う、しかし不思議な旋律。アルが耳を傾けていると、隣で魔導書を読んでいたセシルが突然ガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。


セシル「……フィオ、今の歌、どこで覚えたの?」

フィオ「え? うーん、さっきの裏通りの匂いを嗅いでたら、昔おばあちゃんが歌ってくれた古いエルフの伝承歌を思い出したんだよ。どうしたの?」


セシルは無言で自分の荷物をひっくり返し、羊皮紙の束の中から一枚の薄汚れた紙を取り出した。それは以前、フィオが市場の怪しい商人から「ロマンだよ!」と言って銀貨1枚で買わされた『怪しい宝の地図』だった。


セシル「……アル、見てくれ。この地図の端に描かれている意味不明な落書き……『三つの尖った岩』と『三日月が笑っているような図形』だ。フィオの歌の歌詞と完全に一致している!」


アル「なんだって……? じゃあ、この宝の地図は本物だって言うのか?」


セシル「本物かは分からない。でも、この地図がただのガラクタじゃなく、エルフの古い伝承を元に描かれた暗号図である可能性はある。……ただ、地図の地形から推測するに、場所はカランドラから東へ片道三日はかかる『嘆きの荒野』の最奥部だ」


「片道三日」という言葉に、部屋の空気が少しだけ引き締まった。往復で六日、探索も含めれば一週間以上の長旅になる。


ミラ「……ちょっと待ちなよ。往復一週間もかけて、もしこの地図が精巧な偽物だったり、すでに誰かに掘り尽くされてたりしたらどうするんだい? 完全な無駄骨、大赤字の遠征になるんだよ?」


セシルの顔にも慎重な色が浮かぶ。

セシル「ミラの言う通りだ。確証はない。片道三日の行程は魔物も出るだろうし、着いた先がただの空っぽの洞窟という可能性も十分にある。……堅実に依頼をこなした方が、家を買うためには確実だよ」


全員の視線が、リーダーであるアルに向けられた。

アルは少しだけ顎を撫で、手元の飛竜骨の槍と、仲間たちの顔を交互に見つめた。


アル「……確かに、無駄骨になる確率は高いかもしれない。でもな、この地図の謎を解いて、誰も知らない『王様の箱庭』を探しに行くなんて……最高にワクワクしないか? 俺たちの新しい装備と、今の連携なら、たとえ空振りでも無事には帰ってこれるはずだ」


アルがニヤリと笑うと、ガンテツが「ガハハ!」と豪快に笑い飛ばして大盾を叩いた。


ガンテツ「違えねえ! 若い時は無駄骨こそが最高の冒険ってもんだわい! 準備ならわしに任せておけ!」


ミラ「……チッ。どいつもこいつも、本当に馬鹿ばっかりだね。……まあ、たまにはそういうロマンに付き合ってやるのも悪くないか」


「宝の地図」――その甘美で底知れないロマンの響きに、結果がどうあれ挑んでみようという空気が、パーティ全体を包み込んでいった。


サイドストーリー


地図を囲んで盛り上がる一行の中で、ザインだけが頭を抱えて天を仰いでいた。


ザイン「おお、神よ……! やっと真っ当な冒険者としての軌道に乗ったというのに、なぜ妖精の歌と怪しい落書きに一週間の労力を注ぎ込まなければならないのですか! 不条理です! 徒労の匂いしかしません!」


フィオ「やあやあ、ザイン! 神様だってたまには宝探しでワクワクしたいはずだよ! もし王様の箱庭に黄金の燭台があったら、教会の祭壇に飾ってもいいからね!」


ザイン「黄金の……燭台……? ふむ。異教の遺物を正しく管理し浄化するのも、また神徒の務め……。もし空振りだった時は、帰り道であなたがた全員に一晩中説教をしますからね! 仕方ありません、アル殿! 明日の朝一番で出立できるよう、野営の準備を急ぎましょう!」


現金なザインの態度に、部屋中がどっと笑い声に包まれた。

確かな実力を身につけたアルたちにとって、徒労に終わるかもしれないリスクよりも、仲間と共に未知へ踏み出す冒険のワクワク感のほうが遥かに勝っていた。

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