第2話 必殺の刃
手がかじかんで、上手くタイピングができぬ・・・。
「ピギュァァァ!!」
長が雄叫びを上げながら、ドシン、と体をうねらせ、兵士たちを手当たり次第に食い散らかしていく。
宙を舞う兵士たちが、長の凶暴性と暴力性を存分に示す。
勇者パーティーの壁役である女騎士が焦りながら言った。
「い、いかん!このままでは軍が崩壊する!退け!退けーエェ!」
戦場であってもよく通る女騎士の声に反応したか、兵士達がノロノロと撤退を開始し始める。
それを確認した女騎士は、
「だが、私はここで撤退してしまっては、騎士の名折れ!末代までの恥ィ!かくなる上はぁ!突撃あるのみィィィ!」
そう言って長に単身、突撃していった。
女騎士が、長に向かって盾を構え、叫ぶ。
「こっちを向けェ!!<超位挑発>ッッ!!」
女騎士の体から赤い光が溢れ、長の目を釘付けにした。
長は、
「ピューッフッガァァアア!!」
と鳴きながら、女騎士にワッサワッサと飛び込んでいった。
巨大な怪蟲と小さな女騎士。双方がぶつかれば、若く可憐な女騎士の方が、たちどころに吹き飛ばされるであろう。
「やあぁァーーー!!」
ーー普通であれば。
ドゴン、と爆破音が女騎士を中心に発生した。
長と女騎士が激突した衝撃で発生した砂埃が晴れると、
「ピッ、ピギィ!?」
長に押し込まれ、周囲にクレーターを形成しながらも、両足でその突進に耐え切った女騎士の姿が見えた。
そんな勇ましい姿の後ろでは
「キャーッ!!ガイウス卿がお一人で突っ込んでしまわれましたわぁぁ!?メ、メリッサぁぁぁ、どうしましょう!!」
「姫様、まずは落ち着きましょう。最初に、長の攻撃を受けているガイウス卿に、次に勇者ヒロキ様にバフを掛けます。なので魔術で長を消耗させるか、足止めしてください。<超位回復><超位防護>」
あたふたと焦る魔術師を、聖職者らしい服を纏った女性が、聖女にふさわしい包容力で諭すという、なんとも和む光景を見せてくれる、勇者パーティーの残り2人のメンバーがいた。
しかし、さすがは勇者パーティーといったところだろうか。
「わ、分かりましたわ!!虫なら火に弱いはずよね!!エェーい!!」
魔術師の女が杖を振る。無詠唱で放たれた大火球は、防御魔法のかかっていない長を重点的に焼き焦がさんと、圧倒的火力で炎の渦に飲み込んだ。
ーードッゴシュバァァァン!!
「プギャー!?」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
・・・味方を巻き込んでいるように見えるが、気のせいである。
「ピギィィィアァァァ!!」
長も虫という宿命には逆らえないのか、熱さに耐えかね、たまらず足を止める。
ガイウス卿は防御魔法が発動し、その体がキラキラと発光している。
その間に
「今です!! 勇者様!! ガイウス卿は退避を!!」
と、聖女が言う。
すると勇者の体から先ほどの女騎士に似た、しかし色は金色の光が溢れだす。
それを見た女騎士ガイウスは、
「了解した!!」
とサムズアップし、急いでその場を飛び退いた。
ガイウス卿が飛び退こうとすると同時に、一抱えほどもある火球が次々と姫様から長へ撃ち込まれる。
「きゃー!?」
着弾した衝撃が、ガイウス卿を吹き飛ばした。
長の周りに誰もいないことを確認した勇者は宣言する。
「水よ、 ーそれは、旅で感じた悲しみをー
火よ、 ーそれは、旅で感じた怒りをー
土よ、 ーそれは、旅で感じた喜びをー
風よ、 ーそれは、旅で感じた楽しさをー
全ての力を合わせ、俺に力を!!」
4色の光が混ざり合い、天に届くのでは無いかと錯覚しそうになる、長大なオーラを纏った聖剣を勇者は振り上げ・・・
「<全属性融合撃剣>ァァァ!!」
長めがけて振り下ろした。
ーードギュヴァァァァァァァァァァァァァァァ!!
その金色に輝く光の奔流は、長の影を押し流す。
振り下ろされた聖剣の威力は、長の小山の如き体を易々と切り裂き、大地を分かち、吹き飛ばし、長の後ろに存在していた山をも、虹色の光を撒き散らしながら半壊させた。
振り下ろされた後の地面には、山にまで続く半円状の太い道が形成されている。
「ピ・・・ピギュ・・・ア・・・アァ・・・」
そんな攻撃をまともに喰らった長は、流石に耐え切れなかったのであろう。
恨みがましく鳴きながら
「ピ・・・ギアァァァァァ!?」
ーーボゴーン!!
光を散らし、轟音を響かせながら、爆散する。
爆発の後、勇者は静かに剣を振り下ろした姿勢をといた。
「「「わあぁぁぁ!!」」」
その瞬間、勇者が勝利したことを確信した、兵士たちによる大歓声が響き渡った。
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・・・PV数を表示する画面を見て、ニヤニヤしているのはナイショの話。