許可済みのストリート演奏者を連行する「警察官」、光の意外な対抗策
ソフィーと坂口が深刻な話を続ける中、光たちは全員でテレビのニュースを見ている。
その中で、全員が顔をしかめた報道があった。
それは、ストリートピアノを演奏中に、警察官の集団に演奏を強制停止され、道路使用許可証を見せても、虚偽許可証として相手にされず、逆に連行されてしまう事件が月初から多いとの報道である。
不審に思った人々が、管轄警察署に問い合わせたところ、そのような警察としての指示はなく、もちろん行動はないとの一点張りで、問い合わせそのものが全て門前払いとなっていること。
また、連行された演奏者の行方も、全くわからない状態。
それが、今日だけで5件、月初からの累計では、30件を超えているらしい。
また、行方不明の捜査においても、警察は件数が多い、あるいは多忙を理由に積極的な協力が得られていないとの報道になっている。
まず華奈が文句を言った。
「警察の役目を全くわかっていない、市民を守る職務を放棄しているとしか思えない」
温厚で冷静なルシェールも顔をしかめる。
「ほんとうに、適当で恣意的な感じ、だからストーカー被害もなくならない、事なかれ主義の集団でしかない」
由香利も立腹。
「よほど、親父の子分のほうが頼りになる、顔は怖いけれど、情は厚い、カタギは守るよ、身を挺して」
柏木綾子は、不安気。
「それより連行された人は、どうなったのかな、身の安全は・・・」
春奈が光の顔を見た。
「ねえ、光君、誘いをかけてみたら?逆に」
光は腕を組む。
そしてブツブツ言い始める。
「まあ、たわいもない相手だけどさ」
「やるかなあ」
由紀が光の手をスッと握る。
「私、歌う、ピアノ弾いて」
光は、「え?」と驚くけれど、少し笑う。
「うん、いいよ、でもピアノだけじゃないよ」
由紀をはじめとして、目を丸くする巫女集団に、光はますます笑って、とんでもないことを言い始める。
「えっとね、八部衆の神々のバンド演奏にする」
「もうね、この間の銀座の楽器店の演奏から、やらせなかったって文句ばかりで、うるさくて仕方ない」
キャサリン、サラ、春麗の目が同時に輝いた。
キャサリンが代表して気持ちを伝える。
「私はトランペットで参加、サラはチェロ、春麗はフルート!」
光は、また笑い、指でクールサイン。
そして話は、また拡大。
「内田先生はキーボード、小沢先生は指揮かな、僕はドラムでもいいや」
「晃子さんも呼ぶかな、すぐに来るから」
ずっと黙っていた華奈が、また文句を言う。
「いけません、晃子さんは、豊胸魔女です、却下です」
しかし、光は華奈の言葉など聞かない。
「弦楽五重奏団『光』も入れちゃおう」
そこまで言って、ようやく、怒り顔の華奈を見る。
「華奈ちゃんは、入る?」
華奈は、またしても落胆。
他の巫女は、全員、プッとふきだしている。




