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かえってきた
夜になって、春貴の言葉が正しいと知った。
冬馬とあきおが消えた。
一緒にいた大人たちが、ひたすら不思議がっていた。
手をつないで、家に帰る途中。
いきなりその手が消えたらしい。
──あきお……。
弟が消えてしまって、おれは立ち上がることができなくなった。
……どうして?
家で寝込んでいると、外から父さんや他の大人の声がした。
『神隠しでは?』
『山の神様ですか?』
『天狗様かも……』
『朝になっても……ならばもう……』
イヤだ……あきお………たのむよ。
どうかみんな、無事に……。
ざわざわしていたけど、おれは眠ってしまったみたいだ。
気づいたとき、外は闇から、白くなるところだった。
だんだん明るくなっていく。
静かで、きれいなとき。
縁側でボケッとしていると、目の前のもやの中に、小さな影が二つ。
おれはその影が近づいてくるのを、ただひたすら待った。
ようやく、顔が見えるほど近くなって、はじめて手をとる。
みどりと冬馬だった。
「父さん! 母さん!! みどりと冬馬だ!! 帰ってきた!!」