終戦
最終話です。
まさにこの話の完結! 最後のお話をどうか、拙い文章ですがお楽しみくだされば幸いです。
どこかの薄い暗がりに俺は3人のガラの悪い連中に連れ込まれてカツアゲにサンドバック。
人生において俺と言う存在は常にその対象になっていた。
気が弱くどんくさい。頭だって冴えないダメ男。
それが俺、神咲辰也という存在でしかない。
何気なく送って行った中学も高校もほぼ、友達などできずに終わり、バイトも始めたがそのバイト先でもほぼパシリ扱いを講じられ人生にあきらめがついて引きこもった。
そして、否応なく無理やりこの島につれて来られたがほんの少し希望の兆しが見えて改心しかけていた自分が情けなく思えた。
結局の俺の人生とは他人に支配され奴隷のようない使われる結果しか待っていなかった。
「現在、70パーセントまで力が集まっています」
「継続よろ」
銀髪の少年の指示のもとに俺が入ったカプセル装置のようなものを操作する白衣を着こんだ連中。
彼らがここにやってきたのはほんの数分前だ。
それはつまり外はもう支配されつつあるということなのだろう。
(教師に勝ち目はなかった。俺の人生もこれにて閉幕か)
まったくもって情けない人生だった。
呆れて何も言えないような愚かな末路。
彼らの目的を聞いてなお俺にはそれを覆せるとは思えない。
このカプセル装置を使い俺の力支配力を使ってまず手始めに多くの能力者から力を簒奪する。
あのパーセントが100になった時、その強大な集まった力を使い装置ごとどこかへ飛んで逃げるらしい。
溜めこんだ力は転移のほかにも使いどころを計画してる。それが銀髪の少年、アルスの国、ロシアの軍事利用として同僚にその力を分け与えるつもりらしい。さらに、この100パーセントになると俺はどうなあるかは聞かされてはいないが――
(先ほどからみるみる身体が脱力していく感じやこの寒気――死ぬよな)
それがまさに死を確信して思いこんでしまう鬱状態の結果。
「ん? なにやら外が騒がしいね。なんだろ?」
突然とこのホールの観音扉式のドアがブチあけられて大勢の生徒とその生徒を取りまとめる生徒と教師の姉妹の姿があった。
「へぇー、まぁだ生き残りがいたのか。それに、星姫大佐あなたもなかなかにしぶとい」
「悪魔の思想家の愚老者が! 今すぐその計画を止めないと地獄に送る!」
星姫大佐の一喝に全然ビビリもせず、アルスは飄々としながら喉を引きつらせて笑い始めた。
「たかが、その数でぼくらを相手に戦う? はぁー、これだから日本人は愚かで平和ボケ集団なんだ。まぁ、技術力は認めるけどね。狩野君、相手をしてあげな。君一人で彼らは倒せるでしょ?」
「で、ですが相手は星姫大佐で――」
「狩野君、君との交渉の件はなしにされたいのかい? 君はもう僕の部下としてしか居場所がないんだよ」
「わ、わかりました」
アルスに完全に脅しをかけられ服従しきってしまった狩野は懐から拳銃を引き抜くと同時に即座に発砲する。
だが、数人の生徒が二人の前に飛び出しその身体を鋼色に変色させ鋼鉄化させたり岩を生み出し防壁を張り巡らしたりと工夫した防衛を引いた。
「へぇ、まだ余力をもってる生徒もいるのか。でも、限界だろう?」
アルスの言うようにどこか、生徒一人一人の顔は蒼白で立って力を一回使うのが限界とばかりだった。
まさにそう言うように今防衛を敷いた生徒はその場で倒れた。
「生徒の命を諸刃の武器として使うとは飛んだ下郎だ、星姫大佐」
「私は女よ!」
星姫大佐が地を蹴って接近を開始する。相対するように狩野も突っ込んだ。
両名がすばやく引き金に手をかけて銃を掲げあげて銃弾を射出。
両者が頬をかすめた程度で銃弾は致命傷にならなかった。
対面しざまに拳をぶつけ蹴りをかましあい、打撃の応酬を始める。
その隙に妹の月と、他生徒一同が装置へ向かう。
「君たち生徒は僕一人で十分だ」
アルスが指を鳴らすと彼の足場から黒いオオカミのような姿をした獣が飛びだした。
それらが生徒を捕縛して噛み食らう。
生徒たちの絶叫がこだまする。
しかし、その生徒数名の中でもオオカミをうまく撃退できた者もいた。
それはわずか3名。
東条紗枝、種島沙耶、そして神楽坂月だ。
「へぇ、やるね」
3人が同時に仕掛けている。
アルスの背後へ、能力『透明化』を使い、回り込んだ紗枝の射撃。
アルスの足場を封じ込めるは、能力『影支配』を駆使する種島沙耶。
最後は頭上へ『転位』を使い舞い現れた神楽坂月。三つ巴の攻撃がアルスへ集中砲火した。
けど、アルスは足場の影を支配されて尚動いた。
それは突然とアルスから発生した光の空砲が影を打ち消したからだった。
能力が強引に弾き飛ばされたことやその空砲で弾かれたように吹き飛ぶ沙耶。
さらにアルスは影の支配からのがれると素早く背後へ気をまわして銃弾を素手でつかみ取って拳を紗枝の腹に打ち込んで紗枝は悶絶させた。その場に彼女は倒れこんだ。
頭上の月へ今度はアルスは視線を向けた。彼は足踏みすると足場から無数に出現した黒い腕が彼女を無数に殴打して沈めた。
あまりにも一瞬にしては壮絶な光景に俺は唖然となる。
「な、なんで……能力が……」
「ああ、言わなかったかな? 僕は相手の能力を奪うことができるんだよ。それを何度だって使用できる」
「なっ!?」
「この獣の能力『召喚獣』というらしい。他にも彼女の影を支配する能力を打ち消したのは『光天』って能力さ。これはまぁ、最初の実験段階での実験者から簒奪した能力だけどね。丸山修三って軍事研究者はおもしろいものを開発したよ。まさに凄い発明だ。ノーベル賞も夢じゃなかっただろうね。ロシアになんてその研究の存在が勘付かれなければ」
「あなたは……いつから……丸山中佐に?」
「いつから? 研究開始して少ししてからのことだったかな」
あまりの事実にそのことをカプセル内で聞いていた俺はクラっときた。
目の前の月も撃ち震えていて言葉を失っている。
「ぎゃぁああああああああああ!」
「ん?」
狩野中佐の悲鳴がホールに反響し視線を向けた。
狩野中佐の首を掻きひらいて食堂をえぐり取って惨殺する血にまみれた素顔を見せる星姫大佐の姿があった。
「さすがは『狩人』の異名をもつ星姫大佐というべきだね。彼では相手にならなかったか」
「今すぐ装置を停止……がふっ」
彼女は喀血した。
よくみると彼女も相当苦労していた。
あちこちに銃創が見受けられ致命傷になっている。
「狩野君、君の頑張りに感謝するよ。さて、能力者じゃない星姫大佐はリタイアしてもらわないと困るんだよ」
そう言ってアルスは1踏みで星姫大佐の倒れた入口付近の観客席まで移動した。
すさまじい跳躍だがそれも一種の簒奪した能力だろう。
そして、彼が簒奪の能力をもったのも丸山に変装したことでその技術を盗んだからに違いない。
「なぜ、ロシアは技術力を盗んだだけじゃ飽き足らず……こんな真似を……」
「それはねぇ、君たちがいけないんだよ。研究計画を当初知った我が国ロシアはそれはそれは日本を恐れたよ。君たちの技術力はすさまじいからね。その研究では火星から極秘で持ち込んだある特殊な隕石を使って能力を引き出すって言う行為だった。まさにSFじみた話だった」
この能力は火星からの隕石?
たしかに世界では火星探索などの計画が年々勧められ移住できる話もあと数年でできるとか話は聞いていた。
だが、まさか日本に隕石が持ち込まれていたのか。
「その隕石を持ち込んだ日本人、それが丸山修三」
丸山と言われた名前にあっけにとられる俺や他の同級生たち。
「ぼくたちは即座に丸山を暗殺して為り済ます行為に及んだ。そして、その技術をこっちは盗んでやろうと思った。だが、上が思わぬ計画を思いついてしまったんだよ。それがソルジャー計画さ。その技術を使い軍人を作る。まぁ、元々日本がそれを先に進行していたのを我が国が利用しようという奪う計画ってね。そこで、計画の最初の段階でぼくは強い能力を作ることを思いついたそれは支配と簒奪。まず一個は僕が適合したからね。これで、人体実験にした子から幾度か能力を奪った。それで死亡した彼らがどうなったかわかるよね? 君たちもひどいことをする」
「…………」
つまり、人体実験が裏では行われていたということである。
それをロシアも便乗してその実験や計画をすべて奪い取ってしまう。
その結果がこれなのか。
「支配にはまず能力適合者がいなかった。だけど、ある時狩野君がある一人の男の血液サンプルをもちだした。それが運び屋業をしてるサラリーマン男性の者。だけど、彼はもう歳だったために軍事学校勧誘は難しい。だけど、調べたら息子がいた。彼をうまく扱い狩野君には働いてもらったよ」
「彼、神咲辰也の突然の入学申請許可を井出大佐に嘆願したのはそういうことだったのね」
「ソルジャー計画のためさ。でも、この計画を乗っ取るためにはまず君たち教官はいらないし一般生徒もいらない。さらには学校と言う教育機関も必要なかった。ある程度彼と言う存在が支配力に目覚めた時に一掃する腹積もりだったんだけどまさか生き残りが出たのは想定外」
彼女の額にアルスの拳銃が押し当てられた。
「話は以上だ。じゃあね、星姫大佐」
その時だった。
アルスの背後に突然と月が現れその背中にナイフが突き刺された。
「がふっ」
「私たちはおもちゃなんかじゃないのよ! ロシアと言う国になんかの奴隷じゃない! 私たちは日本と言う国のために戦う戦士よ。人体実験をされていたことは腹立たしいけれどでもね、だからってみすみすおもちゃにされるがままに死ぬのはごめんよ!」
アルスは突然のことに反応が遅れたがそくざに彼女を殴り飛ばした。
殴り飛ばされた彼女はまたしても消えて俺の前に現れた。
「神楽坂さん?」
「あなたもこんなところで寝てないで戦いなさいよ! 日本の軍人でしょ! あなたはあんな男が従う国のおもちゃになり下がるの!? 違うでしょ!」
そして、俺が入ったカプセルに銃弾が打ち込まれクモの巣状のひびが走り破壊される。
俺はそのまま転がり出た。
「なっ! 小娘ぇ!」
アルスが脱出できた俺の存在に気付いた。
脱出させた張本人の月にむけ銃口を向けている。
何発か放たれた銃弾が月の腹部へ命中した。
狂人化したそのアルスに星姫が飛びかかる。
「ぐっ! この離せぇアマぁ! 装置を止めさせるなぁ!」
装置は未だに動いていた。
銃弾で破壊したのはカプセルの部分のみ。
俺はふらつく足取りで紗枝が取り落とした拳銃を手にして白衣の連中を射ち殺していく。
「やめろぉおお! やめるんだぁあ!」
アルスはついに星姫大佐から逃れ彼女の胸元へ銃弾を撃ち込んだ。
彼女は血しぶきをあげて倒れた。
月の悲鳴が上がる。
その月に向けて飛びかかるアルスへ俺は銃口を向けた。
「邪魔だぁ!」
突如として吹き荒れた風に俺は吹き飛ばされる。
月に馬乗りになったアルスはその顔面に手を押し当てた。
「貴様の能力を奪って殺してやるぞ! 小娘ぇ!」
「彼女は殺させない!」
俺は即座に立ちあがった。
そのままアルスに向かい駆けだす。
「邪魔だと言ってるんだぁあ!」
アルスが大手を振るうとステージの床面から現れてくる黒いオオカミたち。
飛びかかるオオカミの群れの集団の動きを見切った俺はそのまま合間をくぐりぬけてアルスへタックルした。
「ぐがぁ!」
「神楽坂さん! 装置を破壊しろぉおお!」
「や、やめろぉおお!」
月は銃弾を装置の要の部分とも割れるパイプへ打ち込んだ。
電流がほとばしり爆発がどんどんと起り始める。
「な、なんてことをなんてことをしてくれたぁああ!」
「なんてことをしてくれただ? ふざけるな。月の言うとおりだ。俺らはおもちゃじゃない。日本のために戦う戦士なんだ」
俺は一歩一歩アルスに近づいていく。
アルスは指を鳴らしてオオカミに指示を出した。オオカミが飛びかかるが俺はほくそ笑んだ。
「たしか、簒奪と支配を作ったとアルスあんたは言った。それはつまり同じ時期。ならば、能力仕様の仕方も同じか?」
指を俺は鳴らす。
途端に、なにか波長のようなものを感じ取る。
その波長を手繰り寄せるように左手で自分にだけ見えるオオカミから出ている一本の線を掴んだ。
すると、オオカミは消滅。
「なっ! ま、まさか支配が覚醒を――」
俺はさらに彼から見えた太い線を見た。
それは彼の能力の波長。あれを掴めば支配を行使できる。
「支配などされてたまるかぁあ!」
放たれた銃弾。
だが、俺には副次的能力で銃弾の軌道は見える。
「なっ!」
そして、アルスの前に立ちはだかる。
アルスは怯えながらに懇願した。足元にすがりつきあわれにも泣きながら。
「お前は多くの人をだまし殺した。そのお前に慈悲はない」
その能力の波長を掴み支配すると彼自身は自らで能力を行使する。
出現したオオカミたちは自分自身に向かわせるように俺が指示を送った。
彼が目の前で血と肉片に変わっていく姿を憐れみの目で見送り続けた。
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クーデター事件から数日後。
多くの死者を出したあの忌むべき事件。
あの事件後にすぐに緊急回線を送っていた星姫大佐のご助力により俺らは日本軍の増援に救出された。
そう、俺ら。生き残ったのは俺だけではない。
生き残ったのは10人。
そう、10人。たったというべきか10人もと言うべきか悩みどころだが。
あの事件でそれでもこの数は生き残れたのは幸運と評価すべき点だろう。
そんな10人の中の俺と月に紗枝と沙耶、星姫大佐のメンバーは国の貢献として叙勲式兼追悼式を終えて広々とした草原公園に来ていた。
「生き残れたのは奇跡っすねー」
「……本当です」
「あれからそういえば、ロシアと日本は和平交渉を行ってるんだっけ? お姉ちゃん」
「お姉ちゃんはよすのよ、月軍曹」
「いいじゃん、プライベートタイムだよ今は」
そんな女子4人のたわいもない話を傍らでただ男一人さびしく聞きながら手紙を書く。
「んで? 辰也は何をしてんの?」
「な、なんだっていいだろ?」
気にかかったらしい月がこっそりとこちらを覗き込んでくる。
咄嗟にかきこんだ手紙を隠した。
「まっさか、彼女さんとかにおくるてがみでもかいてたんじゃないっすかー?」
「え? 辰也さん彼女が?」
「あら? それは負けてられないね月ちゃん」
「な、なんで私に振るのよお姉ちゃん! そんなの私気にならないし。第一辰也がどこのだれと付き合おうが私には関係ないし」
などと月は言うがなぜ、こっちを見て言うのか分からない。
「へぇー、本当にィ?」
「ひつこい! おねえちゃん!」
彼女はそのまま姉を突き飛ばして俺の手を引いていく。
「あ、おい!」
「ちょっと来て!」
そのまま強引にどこか人気のない場所へ連れ込まれる俺はちょっとドキドキする。
「あんたその手紙、恋人に書いてるの?」
「恋人って……いたらこんな学校入ってねぇよ」
「じゃあ、なんで隠すのよ? だいたい誰?」
俺は降参の態度を示し手紙を見せた。
「両親?」
「そう、父さんと母さんにな。苦労をかけたし三階級特進した報告したって報告をな」
「それでも兵長だけどね」
「うるせぇ! 准尉殿に絶対追いついて見せますので」
「追いつけるかしら?」
おもわず笑みがこぼれる。
最初のころは嫌で嫌で仕方がなかった軍事学校も今では彼女といることで楽しく思える。
「俺さ、お前といれば頑張れる気がするよ」
「は? ちょっとなに? やめてよ鳥肌たつわー」
「おぉい! 人の好意をなんだと……まぁいいや」
そんなくだらないことを言いあいしてると3人が呼んでいる。
どうやら、もう休憩時間は終わりのようだ。
「さていくか」
「そうね」
俺はその場から動いたが彼女が動かない。その代わりそっと、俺の袖を引いた。
「なんだ?」
「わ、私も……あなたとなら頑張れる気がするわ」
ちょっと照れた仕草でそんなことを言われ俺の鼓動は少々高なった。
彼女はそのまま行ってしまう。
その時、彼女に俺は何かを言おうと口がひらき――
「いや、何を言おうとしてんだよ」
咄嗟にその言葉を呑みこんで彼女の後に続いた。
「おい、待てよ俺を置いてくんじゃねぇ」
今までお付き合いくださった読者の方々ありがとうございました。短い連載のお話でしたがこの話はこれにて完結です。他の作品も多くあるのでそちらをご愛読くださるとうれしいです。それでは、また




