謎の青年
早朝5時。
俺は教官にしてもルームメイトの月にしても愚痴を言われるのが癪なのもありなるべく早めに来ていた。
「30分前は早すぎたか」
自分自身でもかなり真面目なことを行っていると自覚して鳥肌もんであるが事実この学校に来てから身の危険を嫌と言うほど思い知らされてしまい真面目にふるまう意欲がわいたのだと思えた。
集合場所の運動場のグラウンドは東京ドームくらいの敷地面積があり床には銃弾を吸収する防弾使用の素材が使われている特殊なグラウンド。
他にも周りには鉄柵がありもしもの時のための防護柵である。
この学校がどれだけ危険な軍事学校であるかと言うのがこの場所を見るだけでぞっと思う。
「走り込みでもするか」
この学校で生き抜くためにも体力をつけねばならない。
東京ドーム分の広さもある場所でマラソンを始める。
周回しながら走り続けて10分ほどして『特異生徒』が3名やってきた。
一人はルームメイトの神楽坂月、他二人は、東条紗枝と種島沙耶である。
後者2名はフェリーでの騒動で世話になったというかかかわり合う形になった二人。
始まりはあの犯罪者どもに絡まれてたのを目撃したのが始まりだが、交友関係に発展したのはフェリー騒動の一件が原因と言える。仲良く3人して談笑しながらグラウンドに入ってきてこちらに気づくと紗枝は愛くるしいような笑みを向けて駆け寄ってくるが月と沙耶はあきらかにげんなりしていた。
「辰也さん、おはようです」
「ああ、おはよう」
あいかわらず小動物の様な印象を受ける彼女、紗枝。小柄な体にツインテールにした茶髪の髪形。
なによりも彼女の一番の魅惑のポイントは雰囲気もそうであるがその胸である。小柄な体に似合わぬ大きな胸は男の目を釘づけにする。
うむ、今日も目の保養だ。
「おい、何さっちんのことエロい目で見てるの? マジキモ。マジ死ね」
「ふぇえ!」
種島からのどぎつい視線とあられもない疑いをかけられた。
そのことで激しく紗枝が動揺して胸元を抑えてこちらを涙目で見上げてくる。
はい、ごめんなさい。実はエロい目で見てました。
などと、男のプライドとしては言えない。
「な、何言ってんだか」
「目が完全に泳いでる人が何を言ってるの」
「神楽坂さん、余計なことを言うなよ」
「その呼び方はやめてといったでしょ、変態」
「変態はやめろぉ!」
「だって、変態でしょ? 呼び方変態でいい?」
「よくねぇ!」
その呼び方の固定は今後の人生に大きく影響しかねないだろうが。
本当にこの女は恐ろしいことを平気でしでかすに決まってるから侮れない。
「夫婦漫才してないでさっさとウチらも走り込みしない?」
「「夫婦漫才じゃない!」」
「夫婦漫才じゃん」
月と視線を合わせてどちらからともなくそっぽを向いた。
こいつの夫婦なんて絶対いやだ。顔はよくっても中身がキツイ。
「まぁ、夫婦漫才ではないのだけど、走り込みには賛成よ。おねえちゃ……星姫大佐が来る前に体力づくりをしておきましょう」
「それには私も……賛成……です」
3人してそのまま走り込みを初めて俺もまた、再開するように始めようとした。
ふと、その時遠くから誰かが見てるのに気づいた。
奥の方にあるフェンスの向こう側。ちょうど学校の裏庭に続く森林区域にいる。
白銀の髪に青い瞳をした長身の青年。制服は一般学生のものである。
「なんで一般学生が?」
青年はしばらくこちらを見ていたが森林の中に引き返すようにして消えていった。
俺はなんでか魅了されたようにそちらをじっと見続けた。
「男に趣味はないはずだ……なぜ、興味をひかれる!」
頭を抱え込んで自分の心の揺れに激しく動揺した。
それをもう1周してきた月が後ろから見て声をかける。
「何その馬鹿な動き? ウケるわよ」
と小馬鹿にするのだった。
だが、俺の心にはあの青年の妙な視線が根付くように引っかかった。




