【3分】全校集会・発表会【※説明なし】
中学校の春の全校集会。
そこで生徒によるピアノ演奏があった。
特に問題は起きず、拍手で終わる。
翔太は義理で拍手をしながら、こんなことを思った。
(なるほど。学校はこういう場を作ってくれるのか、だったら俺も───)
翔太は成績は上位で生活態度も問題ない。
だから自分もゲーム会社のイベント大会で入賞したことがある得意のEスポーツを、全校集会で披露できると考えたのだ。
数ヶ月後、夏の全校集会で生徒によるゴスペル歌唱があると告知される。
(キタコレ! このタイミングだ!)
放課後、翔太は意気揚々と職員室に乗り込んだ。
「僕もゲームのプレイを全校集会で発表したいです」
教師が言う。
「学校でゲームなんかできるわけないだろ」
「娯楽じゃないです。Eスポーツという、れっきとした興行ジャンルです」
「Eスポーツだかなんだか知らないが、ゲームはダメだ」
「!!」
断られるとは思わなかった翔太は驚いた。
「なぜダメなんでしょうか?」
「全校集会でやる内容じゃない」
「ピアノやゴスペルはいいのに?」
「音楽は教育の一環だろ。ゲームとは全然違う」
「ゲームにも音楽はあります。じゃあ太鼓の名人をやらせてください」
「ダメだ」
「なぜでしょう?」
「とにかくゲームはダメなんだよ。学校という空間ではな」
翔太が食い下がる。
「なぜダメなのか、その理由を説明してください」
教師が答える。
「総合的な判断だよ」
「何を基準に?」
教師は少し苛立った。
「細かく説明するものじゃない!」
翔太が皮肉っぽく言う。
「“立場が上だから従え”で通るなら、それは正しさじゃなくて力ですよね。それを基準にするのは危ないと思うのですが」
教師が眉をひそめる。
「理屈で全部決まるわけじゃない」
「じゃあ何で決まるんですか」
「学校の判断だ」
「その判断の基準を聞いてるんです」
教師は小さく舌打ちした。
「いい加減にしろ! これは議論の場じゃない!」
(なんなんだこの教師……支離滅裂じゃないか……)
話が全く通じない。
翔太は絶望的な気分になった。
その時だった。
「待ちたまえ。Eスポーツ、けっこうじゃないか。私は許可するぞ」
「!?」
驚く教師。
「こ、校長! ホントにいいんですか!?」
「構わんよ。アイドルのコンサート、マジックショー、オーケストラ、世の中には様々なイベントがあるが、Eスポーツは興行として成立してる立派なイベントの一つだよ」
「………」
押し黙った教師をよそに、校長が話を続ける。
「ただ、そのままEスポーツを許可というわけにはいかないが」
翔太が校長にたずねる。
「なぜでしょうか?」
「他にも何かを発表したいと思ってる生徒がいるかもしれない───そうだよね?」
「それは……はい」
頷く翔太。
「だったら希望者を募って、抽選制にするのが公平というものだろう。ゴスペル以降は全校集会で抽選会をやる。クジをひくのは教師ではなく希望者の生徒たち。そして透明な箱を用意し、当選者が決まったあとも残りのクジを全部開示する。これなら不正がない。どうかね?」
素晴らしい案に翔太は感激した。
「すごくいいです。是非それでお願いします!」
数日後の昼、校内放送が流れる。
「今後、全校集会での発表については、公平性の観点から、希望者の中から抽選で決定します。応募したい方は職員室前のリストに名前の記入をお願いします」
教室がざわつく。
「いいじゃん」
「それなら納得だな」
翔太は思った。
(良かった。これなら公平だ!)
放課後、職員室。
「でも校長、本当にいいんですか? 抽選なんかで。そこまでしてやる必要ないと思うのですが」
校長が答える。
「偏りがあると言われるよりはいい」
「ワガママを許したら、つけ上げるだけだと思うのですが」
校長はある新聞記事の切り抜きを教師に見せた。
そこには劇の主役をめぐって、親が学校へ乗り込むことが増えたという事が書かれてあった。
ひどい時はモンスターペアレントのようにもなると……。
「……君がこの問題を一手に引き受けて、絶対に解決してみせると誓うなら、抽選はやめて、こちらで勝手に選ぶという君の教育方針で構わないよ。どうしたいかね?」
「………」
教師は押し黙った。
沈黙のあと、小さく呟く。
「……抽選でいきましょう。公平性は大事ですもんね」
教師と校長はともに苦笑しあった。
一方で教室では、抽選になったことで翔太も笑みを浮かべていた。
そして教師と校長と翔太の笑みは、それぞれ全く違った意味をもっていた。




