強制召喚
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてChatGPTを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
・ 世界観・キャラクター・ストーリーの基盤は完全オリジナル(整理や補助を行ってもらうことはあります)
・ プロットは自身で立案(ストーリー展開、キャラの行動、テーマ性などを自分で組み立てています)
・ 重要なセリフ・行動・心情変化はすべて文章で指示(キャラクターの一貫性を重視)
・ プロットをもとに叩き台の原稿を出力 → 30%以上の加筆修正(表現のブラッシュアップ・個性の強化)
・ 執筆の過程で違和感のチェック・校正を補助的に利用(つなぎの違和感や文章の整理)
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「ChatGPTをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
氷室はR.I.N.Gを介して生徒会と通信し、警報の解除を指示していた。
「現場には私が到着しました。問題は収束しています」
学園内で異能による衝突が起これば、担当教師が招集される。
しかし、今は違う。通報のプロトコルなど関係なく。抗う余地もなく。例えどこに居ようとも。どんな状態にあろうとも。
"強制召喚"だされる。
通常の通報システムを介した呼び出しではない。一般の"データベース"には情報が存在しない異能。
こんな異常な転送を可能にするのは、ごく限られた"存在"と"意思"だけ。そして、その"意思"が誰のものかも氷室にはわかっていた。
(また……か)
氷室は小さく息を吐いた。いつでも、どこでも、問答無用で"強制召喚"だされる。この状況では、トイレすら安心して行けたものではない。それを理解していない、とは言わせない――。
指先でホロパネルを操作しながら、内心で小さく息をつく。
「ふぅ……」
曇り眼鏡の奥で、氷室の瞳が世羅を捉える。
「あなたの異能記録……学園のサーバーからは消去しておいたわ。MONOLITHの方は無理。それでいいのよね?」
「さすが。頼みもしないのに、手際の良い」
「……世羅くん」
「なんだ?」
「担任として言わせてもらうけれど……暴力は許されません」
「へぇ?」
世羅は興味なさげに片眉を上げる。
「この島で暴力がいけない……? なんの冗談だ? "外界"とは違うぞ?」
世羅は言葉を続ける。
「今学期……学区外で何人死んだ? ひとりか? ふたりか?」
氷室のまぶたが、一瞬だけ伏せられる。
他の学園では、朝登校してきた生徒と、夜に帰る生徒の、”頭数"が違うこともある。
視線を落としかけたが、すぐに持ち直し、冷静な表情を保つ。
「ここは第八特別区第三学園。学園内での"無闇"な私闘は生徒会規則で固く禁じられているの……それに……」
氷室は一拍置き、ゆっくりと息を吐いた。
「……それに、"学園内"では、生徒の安全が保障されているわ」
(……ちょっと待って。"外界"? どうしてそんな言葉を当然のように……?)
この学園の生徒たちは島生まれがほとんどで、"外界"について詳しい者は少ない。なのに、世羅はまるで当たり前のようにその言葉を口にした。
「……なぜそんなことを知っているの? あなた……もしかして……」
「"先生"。そろそろ授業に戻った方がいいんじゃないのか?」
世羅はにやりと口角を上げる。
氷室は僅かに言葉を詰まらせたが、すぐに教師としての態度を取り直した。
「……そうね。でも、その前にもうひとつ」
「屋上の件。怒島さんから報告がありました」
不意に話題が変わり、世羅は軽く肩をすくめる。
「へぇ?」
「怒島さんは子供ですよ? あまりからかわないように」
「月乃が自分から報告したのか? しまパンを?」
氷室の指がピクリと動いた。
「……っ」
曇り眼鏡の奥の瞳がわずかに揺れる。
「"監視"てたんだろ? さすが超特級のハッカー様だよな?」
世羅の言葉に、氷室は小さく息をのんだ。怒島月乃が自分で報告した、というのは方便。彼女が実際に"監視"していたことに気づかれた――、一瞬の動揺が走る。
氷室はわざとらしくせき払いし、表情を整えると話題を戻した。
「とにかく、年ごろの女の子をからかうんじゃありません」
世羅は小さく笑う。
「さすが、"大人の女"だな」
「……私までからかうつもりなの?」
世羅はとぼけたように軽く首を傾げる。
「僕が? まさか、僕は子供ですよ? ……"大人"をからかうなんてできやしない」
氷室の視線が僅かに鋭くなる。
「……あなた、どこでそんな口の利き方を覚えたの?」
「さぁ? どこなんだろう?」
ふっと微笑む世羅に、氷室は口を引き結ぶ。教師として生徒を諭すべき立場だと理解している。しかし、時折、彼との会話がまるで"対等以下"であるように錯覚してしまう自分がいる。
「……生徒と教師という立場をわきまえなさい」
氷室は意識して言葉を硬くする。
本当は、この場で"主従関係"を思わせるような態度を取るわけにはいかない。"教師"としての立場を崩してはならない。"学校"や"人前"では教師と生徒でいるように――
ある男に"厳命"されているからだ。
「……そのつもりでいてくれるわよね?」
「もちろん。"大人"には、"先生"には従わないと」
世羅はさらりと流す。
氷室は小さく息をついた。学校では教師と生徒。それは決められたルール。
そう"決めた"のに、"本人"だけが従わない。
「そういえば……先生って、本当に大人か?」
「は……?」
氷室の曇り眼鏡。その奥の瞳がわずかに揺れる。
「あたりまえでしょう? 私は"色々な"なことを経験してる」
氷室はピクリと肩を揺らした。だが、言葉を重ねることはしない。
"色々な経験"――それは事実だった。ハッキング、諜報、裏社会での立ち回り……氷室の手は、ずっと"大人の世界"に汚れてきた。
生徒には見せられない顔も、教師としての立場では語れない過去もある。
実際、命のやり取りすら経験してきた、変異島においてはそれほど珍しくはないが。
けれど――"そういうこと"だけは、違った。
その隙を、世羅は見逃していない。彼の目が、曇り眼鏡越しにじっとこちらを覗き込んでくる。無言のまま、ただそこにある"事実"を指摘するように。気づかないふりをするのも、誤魔化すのも難しい。
それが氷室にとって、ほんの少しだけしゃくだった。けれど、今さらそんなことでムキになるのも、また"子供"のすることだ。氷室は静かに息を整え――それでも視線を外す。
その仕草に、世羅の唇がわずかに緩んだ。
氷室はピクリと肩を揺らした。
「……からかわないで」
静かな声。しかし、わずかにすねたような響きが混じる。その様子を見て、世羅はふっと口元を緩めた。
「からかうな? ……それは先生次第じゃないのか?」
氷室は、そういう経験においては不器用だった。そして、世羅はそれを誰よりも知っている。世羅は満足げに微笑み、わざとゆっくりとした口調で続けた。
「でも、"今"は"大人の女"だもんな?」
その瞬間、氷室の眉がピクリと揺れる。
「……っ、そんなの、当たり前でしょう!」
「だよな? あの日、もしかして夢でもみていたのかと心配した」
「~~~っっ! ……ば、ばかっ! ……アレはっ……!」
氷室が何かを言いかけたが、結局はぎゅっと唇を結ぶ。
世羅が氷室を置き去りにしながら言った。
「それじゃあ、教室に戻ろうか? "先生"」
氷室は世羅が十分に離れてから動きだす。
コツ、コツ、とヒールが静かにアスファルトを叩いた。
その足取りはほんの僅かに速かった。
「……これじゃ、私が年下みたいじゃない……」
最後までお付き合いいただき、感謝です!
「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!
今後の励みになりますので、もしよろしければ……!