初恋
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
『……』
沈黙した巨人が膝を折っていた。
だが、地に伏すことはない。騎乗者が意識を失っても、ゴーレムが自動で姿勢を制御し、巨体を支えている。
「思いのほか……上手くいったようだな」
世羅は装甲に添えたままの拳を見つめながらつぶやく。
「アイツの出番はなかったか……」
口調は静かだが、油断はしていない。
ボスがわずかにでも動けば、もう一度撃ち込むつもりでいた。
「……」
沈黙の空間に、一分にも満たない時間が流れる。
「MONOLITHッ!」
世羅は誰に向けるでもなく声を放った。
「決着はついただろう? 決闘の終了宣言はどうした?」
《警告します。あなたに審判権限は付与されていません。越権行為は処罰の対象になります》
つめたい機械音声が返る。
左腕に装着したR.I.N.Gから発せられる声だった。
「何を言ってる? 私はただ“終わった”と言っているだけだ」
《再度警告します。あなたにその権限はありません》
無機質な応答が繰り返される。取りつく島もない反応に、世羅は苛立ちを覚えた。
「話を聞け……終わったと言っているだけ――」
《忠告します。対戦相手は意識も戦意も喪失していません》
その瞬間、静止していた巨体が震えた。
装甲が軋みを上げ、再起動するかのように動き始めた。
「――ッ⁉」
壊れたおもちゃが急に跳ね回るように、巨体が弾けた。
ガクガクと不規則な動きのまま、しかし恐ろしい勢いで鉄塊の腕が振り抜かれる。
追撃の発勁を撃ち込むどころではない。
世羅はただ、真後ろに跳躍してかわす。それしかできなかった。
『ぐが…………っっっ! はぁっ!』
振り抜いた巨腕の重さに耐えきれず、ボスは地面に手をつく。
自らの筋力だけで支えているわけではないが、無傷で姿勢を保てる状態でもなかった。
『ゼェゼェ……痛いよ! ……痛いよ! なんだよ! いまの何なのっ⁉』
喧嘩無敗。
ギャングクラン“アイアンメイデン”を統べるボスは、殴られる痛みを知らなかった。
殴った痛みも、同じく知らなかった。
岩と鉄に守られた戦いは、どこか現実味を欠いていた。
争っているのに、実感はなく、まるでゲーム画面を隔てたやり取りのようだ。
だが世羅の一撃は、その虚ろな感覚を打ち破った。
装甲の奥、肉体の芯を直接ぶん殴る。
ボスを空虚から引きずり出す“現実”な一撃だった。
「発勁だ」
『はぁ!?』
世羅は不敵に笑った。
少女めいた顔に浮かぶその笑みは、あまりに不釣り合いだ。
虫を弄ぶ少年のような愉悦が、そこに宿っていた。
「発想は中国武術から借りた、名前もな……だが、原理は私のオリジナルだ」
『ちうごく……はぁ? なに? 漫画の話?』
「オマエの装甲は破れない。だったら内側へ“浸透”させればいい」
『ふざけんなっ! 意味がわからんっ! 何をやったか聞いてるんだよ!』
ボスの感情が、堰を切ったように溢れだした。
「なに……ゼロ距離で衝撃破を撃ち込んでるだけだ。簡単だろ?」
異能によって放たれる衝撃破。
銃口とも言える拳を装甲に押し付けたまま解き放つ。
エネルギーは外へ弾かれず、装甲の内側に生じる。
『うっ……うっ……』
親にすら殴られたことのない身に、容赦ない痛みが突き刺さる。
驚き、怯え、悲痛。さまざまな感情が一度に押し寄せる。
『うぁーーーーーん!』
消化できぬそれらの感情は、涙となってあふれ出した。
「……おいおい」
拳を交わす最中に泣き出す者など、珍しいことではない。
大の男が泣き叫び、小便を漏らすこともある。
戦いとは、そういうものだ。
『ひどいっ! ひどいだろぉ! あああ~~~っっっ!』
しかし、この巨人は、あまりにも堂々と泣いていた。
それは赤子が欲を通すために泣き叫ぶ姿にも似ていた。
弱き者が唯一持ち得る“武器”を振りかざすようでもある。
「……見苦しいな」
世羅は静かに吐き捨てた。その表情に、呆れも同情もない。
「命乞いか? 男の涙に価値などない」
決闘とは零か百か。
持てるすべてを“かけ金”にして、相手から奪おうとする行為そのものだ。
まして、仕掛けてきたのはアイアンメイデン。
その覚悟の浅さこそが、世羅を苛立たせていた。
『世羅ぁ……! ボクはっ……ヒック……ボクわぁっ――』
涙声のまま、巨体が突進してきた。
振り回される両腕は、ただのぐるぐるパンチにしか見えない。
だが三メートルの質量と鋼鉄の硬度を伴えば、それは致命的な凶器となる。
世羅は冷静だった。
一歩も退かず、迫る巨腕の内側へと潜り込む。
経験値も、技も、速度も、反応も――そのすべてで世羅はボスを凌駕していた。
圧倒的なパワーの攻撃も、当たらなければ意味はない。
無敵を誇った装甲も、いまはもうないも同然だった。
「発勁っ!」
ドンッ!
的確な角度と的確なタイミングで、必殺が撃ち込まれる。
振るわれる巨腕を打ち落とし、支える脚を揺らし、分厚い装甲を無視して“本体”に。
『うぎゃぁ!!』
あらゆる衝撃を弾くはずの装甲だが、裏を返せば衝撃を逃がすこともできない。
内部に撃ち込まれた衝撃は逃げ場を失い、ボスの生身を痛めつける。
その一発一発が、致命傷になりえる威力だった。
「忠告したはずだ。手加減はできんと……死ぬぞ?」
『ぶふぅ……ぶふぅ……世羅ぁ……世羅ぁ……』
効いている。ボスには明らかに効いていた。
強がりやブラフを挟む余地もなく、膝を折り、ガクガクと震えている。
吐き出す呼吸ひとつひとつが、受けたダメージの深さを物語っていた。
「クランを失いたくない気持ちは理解した……だが、死んでは何にもならん。投了しろ」
『ぶふぅ……ぶふぅ……』
「心配するな。私が必要なのはスコアだけだ。二度と仕掛けてこないと誓えば……見逃してやる」
決闘の勝者は敗者のすべてを得る。
だが同時に、不要なものを切り捨てる自由もまた与えられていた。
『ぶふぅ……ぶふぅ……うぁあああぁぁぁっ!!』
無謀な突撃を、ボスは再び繰り返す。
「……そうか――」
ドンッ――ドンッ――ドンッ!
正中線上へ、三連の発勁が撃ち込まれる。
急所が並ぶ線を正確に捉えた攻撃だった。
とはいえ、装甲の表面で狙った急所と、内部の急所が一致するはずもない。
だが発勁の威力のまえでは、その理屈は意味を成さなかった。
内側へ直接穿つ衝撃は、全身を急所と化すに等しい。
ドシャッ!
轟音を立て、巨体が崩れ落ちる。
束の間、重苦しい沈黙が場を支配した。
そのなかで、ボスの荒い呼吸だけが響く。
ゼェゼェと絞り出すような息が、静まり返った空間を塗りつぶしていく。
世羅はボスを見下し、深く息を吐いた。
「先ほどの非礼は詫びよう」
泣き出したことを見苦しいと揶揄した――その言葉を、世羅は謝罪した。
涙を流そうと、血を流そうと、なお負けを認めぬ者への最低限のリスペクト。
「だが、私も失うわけにはいかない……私の配下には“殺しても構わん”と命じてある」
生死不問――決闘に殺人罪は適用されない。
だが、その命令の真意は“勝つために殺せ”ではない。
敵の命よりもまず自分の命を優先せよ。
その上で下した決断の責は、クランマスターである自分が負うと定めている。
ボスは膝をつき、まえのめりに手をついて動けない。
世羅はその背を見下ろし、無防備にさらされた後頭部へと拳を振り上げる。
「そう命じている私が……“できない”とおもうなよ……」
勝敗は明らかだ。
だが、この先がどう転ぶかは誰にもわからない。
相手が折れぬのなら、世羅は打ち下ろすしかない。
生き残るか、死に果てるか――それを決めるのは、ボス自身だった。
「オマエに答える義務はない……だが、聞かせてくれ。何がオマエをそこまで突き動かす?」
問いは単なる好奇心ではなかった。
クランを失いたくない気持ち、それは世羅にも理解できる。
だが、ボスのこれまでの行動。
配下への態度や言動は、大切に思っているとは言い難い。
ならば、なぜ執着するのか。
なぜ負けを受け入れられないのか。その根っこを知りたかった。
もしボスが、世羅と同じ覚悟を抱いているなら、終止符が打たれても仕方がない。
生半可な思いであれば命は惜しいだろう。
命懸けであれ……そうであってほしい……そうでなければ寝覚めが悪い……。
世羅はそう考えていた。
だが、ボスから返ってきた言葉はあまりにも意外だった。
『……は、はじめてなんだよ……こ、こんな気持ち……は……』
声は途切れ途切れ、言葉の端に震えが混じる。
抉られるような痛みは衝撃による内臓へのダメージ。
だが胸の奥を焼く熱の理由は、それだけではなかった。
『ねぇ……教えてよ……ボクおかしくなっちゃったの……?』
装甲に覆われた顔から表情は読めない。
だが、虚空のように黒く開いた二つの穴から漏れる光は、敵意でも憎悪でもない。
戸惑いの色を帯びている。
『世羅くん……キミをはじめて見たときから、胸が苦しいんだ……』
吐き出される気持ちは止まらない。
『歩いていても……食べていても……寝ていても……バカどもを殴っていても……キミのことしか考えられない……』
考えないようにしようとして、既に考えている。
寝ても覚めても、考えてしまっている。
『推しの声優が出演してるアニメを観ても頭に入らないんだ……大好きなゲームがおもしろくないんだ……』
日常が色あせていく。たったひとりの姿で塗りつぶされていく。
『キミのことを考えると苦しくて眠れない……目が覚めたらキミのことを考えてる……そうだよ、ボク……おかしくなっちゃったんだ……』
息が詰まるほどの執着。どうしようもないほど焦がれていく。
『世羅くん……キミだ……キミのせいだよ……ボクにどんな魔法をかけたの……?』
それは理屈では説明できない感情だった。
胸を焼き、息を詰まらせ、眠りさえ奪う。
抗う術もなく、ただひとりに囚われる。
報われることのない、甘く苦しい“呪縛”。
「……オマエ……それは……」
世羅は知っている。その感情の名を知っている。
数十年前、まだ若さと愚かさにまみれていた頃、幾度も身を焦がした熱情。
誰かに惹かれ、浮かれ、そして傷ついた。
ときの流れに熱は消えても、痕跡だけは消えることなく残り続ける。
思い出したくはないが、思い出さずにはいられない“遠い記憶”。
『クランなんて必要ない。キミがボクの“所有”になるなら……何も必要ないっ――』
慟哭にも似た叫びとともに、ボスの巨体から青いモヤが揺らめく。
同時に世羅のR.I.N.Gが明滅し、警告を告げた。
《“所有”トリガーによるカタリシス反応……上昇中……130%……140%……》
「……!? 欲望強化だと!?」
各々が執着する“欲望”に比例して出力を強化する、欲望強化。
変異世代3.0以上が備える機能であり、島にいる若者の大半がその世代に相当する。
だが、それを覚醒させるほどの“欲望”を抱くことは稀だ。
何かを掴み取るために伸ばす腕。
代償にその腕を失っても構わぬほどの“想い”。
それが“引き金”となる。
『――世羅くん……ボクは……キミが…………ボクはキミが……ッ――』
《……上昇中……160%……170%……》
「クソッ!」
世羅の表情に焦りがはしる。
振り上げた拳を慌てて解き放った。
手心などない。ただ仕留めるだけの攻撃だったが、一歩遅かった。
『――キミが“所有”いんだぁあああああっ!』
これがボスの、はじめての恋だった。
《200%……第一制限突破しました》
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