反撃
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
右、左、右、左――その攻撃はあまりにも単調だった。
両の腕で交互に殴り続けるだけ。
タイミングも一定、軌道も変わらない。
ドキャッ!
ゴギャッ!
ガシャン!
ただ、三メートルの巨体で薙ぎ払う。
ただ、それだけだった。
ただ、その威力はバット男の比ではない。
ただ、前へ前へとボスは突き進んでいた。
壁も、機械も、その場にあるものすべてを蹴散らしながら。
「ッッッッ!」
世羅は歯を食いしばり、その一方的な攻撃を躱し続けた。
合間の反撃など試しもしない、考えることすらしない。
掠っただけで終わる。
その確信めいた直感が、全身を支配していた。
たとえるなら、バスが丸太を振り回して一直線に迫ってくる――たとえになっていない時点で、もう洒落にならなかった。
『まちなよ世羅くん! 手加減してあげるからっ!』
そう口にしながらも、威力が弱まる気配はない。
世羅にとって不幸中の幸いは、四天王ふたりの攻撃がなかったことだ。
ボスのラッシュで押しつぶす形は必勝パターン。
正確に言えば、これを受けて立っていられた敵がいなかったという意味だ。
このラッシュがはじまったら最後、すべての決着がついてきた。
ボスが他の行動を試す機会はそもそもなかったのだ。
だからこそ、ふたりはあえて加勢しなかった。
ひとつは、見守るだけで十分だと考えたから。
もうひとつは、下手に手を出してボスの邪魔をすれば逆にボコられる。
それだけは避けたかったからだ。
加勢のタイミングを図るような“フリ”をしながら――結局は何もせずに追従している。
ゴンッ!
ゴギャッ!
ドガン!
工場内はすでに滅茶苦茶だった。
大型機械は凹み、壁は破れ、何もかもが散乱している。
それでも攻撃の勢いは止まらない。
(単調だっ! だが当たれば終わるっ! 目を逸らすなっ!)
恐怖心は確かにある。
だが戦いの場では、多くの場合それは邪魔にしかならない。
世羅はそれを理解し、一時的に感情を脇へ追いやっていた。
遮蔽を頼りに、物陰から物陰へ素早く移動する。
攻撃を避けるための動きだ。
それでも視線だけは、常にボスを正面から捉え続けていた。
『世羅くんっ!』
金属が弾け、コンクリが砕ける音に混じって、ボスの声が響いた。
くぐもっている割に、やけに鮮明だ。
この暴風のような攻撃に晒された人間がとる行動はふたつ。
半端に反撃するか、半端に逃げるか――そのどちらか。
だが、世羅は徹底していた。
中途半端な反撃は一切せず、ただ回避に集中する。
物陰に隠れる敵なら、ボスにとっては見慣れたものだった。
ただ茫然と殴られるばかりの相手なら、なおさら珍しくない。
それでも世羅は違った。
同じように回避を続けながらも、その瞳に怯えはない。
意思をもって反撃の機会をうかがっていた。
『どうしたのっ!? 痛いのがイヤならっ! 投了すればっ!?』
投了――自ら敗北を宣言する、要するにギブアップ。
ボスはそれを促すが、世羅にその選択肢はなかった。
それは"負けるまで戦う”という意味ではない。
配下である月乃たちを奪われるくらいなら、彼はすべてを道連れに自爆すら辞さない。
――徹底的な敗北拒否。
ドグォンッ!
だが、その覚悟と目の前の脅威は別の話だ。
世羅が身を隠した大型機械が、地面のアンカーごと引き抜かれた。
《どうかしらっ? そろそろ“やる気”……出てきたんじゃないかしら!》
付かず離れず浮遊するドローンから、冗談めいた声が響く。
「そうだなっ! 死にたくはないからなっ!」
無残に転がった機械を横目に、世羅は応えた。
だが、言葉とは裏腹に力は沸いてこない。
“欲望強化”――第三世代以降の変異体に備わる機能。
個体が執着する欲望に応じて出力を強化するバフだ。
世羅はその仕組みを熟知しているつもりだった。
ピンチになれば力が漲るものだと、そう“誤解”していたのである。
彼の“欲望”は“独占”。
だが、その対象となる女たちはいまここにいない。
厳密に言えば、ソフィアは隣にいる。
とはいえ、あくまでもソフィアが操る“ドローン”。
本人の姿ではないのだから、生を感じることができていなかった。
自らの危機では足りないのだ。
すくなくとも、まだ五体満足でいるうちは。
「ソフィアっ!」
《なにっ?》
「夏休みの宿題はすぐ終わらせるタイプかっ?」
《急に何の話なの!? そうだけどっ!!》
「私は最終日にやる性質でなっ!」
《だから何の話なのっ!?》
どう考えても、いまこのときの話題ではない。
だが彼が伝えたいのは「ケツに火がつかないと本気になれない」ということだった。
ソフィアと軽口を交わす最中も、ボスの攻撃は止んでいない。
『世羅くん、何なの!? いまはボクが相手でしょ!? イチャつくなよっ!!』
ボスは嫉妬にも似た怒りを隠さない。
ブォンッ――ブォンッ!
ラッシュの勢いが増す。空間すらへし折りかねない威力。
それでも、世羅は冷静だった。
破壊力が増そうが、当たらなければ意味はない。
単調なうえに力みで大振りになった拳を、体捌きで的確にかわしていく。
ゴンッ! ガンッ!
「硬すぎだろう!」
ついに反撃まで入れ始める。
しかし、拳の打撃では、ボスの装甲に傷ひとつ付けることもできない。
『世羅くんっ!?』
だが、ボスにとってははじめての経験だった。
これまで多くの相手がワンパンで決着がついていた。
反撃を受けることなどなかった。
いまのようにラッシュを必要とすることすら稀。
手こずることも皆無ではなかったが、それは相手が逃げ惑ったからにすぎない。
だが世羅は違った。
目を逸らさず、正面から向き合い続けてくる。
正々堂々、彼は敵に背を向けない――というタイプでは決してない。
必要であれば逃げもするし、隠れもする。
不意打ちも、ブラフも、恥ずかしげもなく使ってみせる。
そのことはこれまでの戦いで明白だった。
なのにいまはどうだ、背をむけることなく堂々と迎え撃っている。
ブォン――ドグォンッ!
続けざまにボスの巨腕が振り下ろされた。
直後、世羅は鉄板入りシューズの蹴りを合わせ、攻撃の軌道にぶつけた。
カウンターの衝撃が装甲に伝わり、わずかにボスの体を震わせる。
もちろん効いてはいない、すなくとも内部へのダメージは皆無だ。
『世羅くぅん!!』
「ふんっ!」
ブォン――ゴゴゴンッ!
ボスのラッシュは止まらないが、世羅のカウンターもそうだ。
突きに始まり、不安定な蹴りでのカウンター、その次はコンビネーション。
ボスの一撃一撃がそう速くはないとはいえ、一振りに対して数発の反撃をやってのける。
《装甲越しじゃ無理よっ!》
「みなまで言うな!」
効いてはいない――繰り返すが、ボスに効いてなどいない。
だが、確実に世羅の手数は増えている。
一見、ボスのラッシュに押され後退しているが、彼の“意思”は前に進んでいるのだ。
受けるだけではダメ、攻めなければ勝利はない。
世羅はそのことを理解していた。
だからこそ、後退の一歩一歩さえも、次の攻めへの布石に変えていた。
『世羅くぅ~~~ん!! 生意気なんだよぉおおおっ!!』
台詞とは裏腹に、ボスの心は踊った。
そうでなければ――そうじゃないといけない――他の“雑魚”と同じじゃダメだ、と。
自分をこんな気持ちにさせてしまったのはキミなのだから、と。
『責任とらなきゃダメじゃないかぁ!!』
ますます強く、そして大振りとなるボスの攻撃。
ブウォォンッ!
「シッッ――!」
世羅は一息の呼吸で三つの連撃を放った――
『ッッッ!』
微かに感じていた衝撃は、微かな痛みに変わっていた。
(関節っ? 装甲の薄い、関節を狙ってきたの!?)
偶然かもしれない――ボスはそうも思った。
だが、三連撃が偶然、一か所に集まることはあり得ない。
《狙いは悪くないわよっ!》
「だろうなっ!」
ガガガッ――!
これまでの世羅の攻撃は、あくまで回避後に行われた。
ボスの一撃をいなし、その隙を突く反撃。
後の先――主が防御、従が攻撃。
だが、いまは違う。世羅から仕掛けていた。
その拳はやはり、装甲の隙間から関節を狙っていた。
岩と鉄の鎧の下、ボスはそのちいさな背中にゾクリとした悪寒を覚えた。
今回を含めて、これまで世羅の攻撃は一撃たりとも通ってはいない。
ダメージなど皆無だし、捨て置けばいい。
だが、ボスの直感が「危険だ」と告げていた。
攻守が逆転する気配を感じていた。
そんなことは、あってはならない――
『キミたちぃ! 何ボケっとしてるのっ! 手伝えよぉ!』
ボスの怒号が飛んだ。
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