(島津騒動)14
誤字脱字等のご報告、ありがとうございます。
感謝大感謝です。
伊達政宗は表情を引き締めた。
「もう一度申せ。
何が出来したのか、分るように詳しく話せ」
宮内右近も表情を引き締めた。
「伊集院家の重職にある者が国元から大坂屋敷に入りました。
これを知らせてくれたのは抱き込んだ伊集院家の者です。
重職によると、島津勢が伊集院領に侵攻したそうです」
「そうか、それで」
「伊集院家は侵攻を受けたものの、
島津勢を見事返り討ちにしたそうです」
戦の仔細は不明だが、明朝そうそう公儀へ届け出るという。
翌朝、政宗は登城した。
行き交う者達が怪訝な表情になるが、意に介さない。
幸いと言うべきか、話し掛けて来る者もいない。
無表情を貫いたまま奥へ通った。
大々名の控えの間で、先触れに出した近習が待ち構えていた。
「石田様との面会の約束を取り付けました」
「刻限は」
「午後だそうです。
刻限前に、案内の茶坊主を寄越して頂けるようです」
おそらくだが、伊集院家からの届けが出されると、
上を下への大騒ぎになる。
政宗はそれを見んが為に登城した。
面会は登城の理由付け。
日延べになるだろうが、惜しくはない。
日を改めても何ら問題ない。
先乗りしていた別の近習がお茶を差し出した。
ほど良い加減だ。
飲みながら尋ねた。
「様子はどうだ」
大雑把な質問だが、それに難無く応じた。
「どなた様もまだ入手されてないようです」
島津と伊集院との間に漂っていた戦雲が、
ついに現実のものになった。
なのに、それを真っ先に入手したのが東北の伊達家。
思わず政宗は笑みを浮かべた。
騒ぎになったのが分った。
城内が騒然としたのだ。
陪臣や茶坊主等であろう。
あちこちで情報を、声高に交換し始めた。
気が急くのか、廊下を駆ける者も出る始末。
この控えの間にも次々に知らせが入った。
陪臣等がそれぞれの主人に入手した情報を齎す。
当人達は声を潜めているつもりなのだろうが、良く聞き取れた。
お陰で政宗は耳を傾けるだけで済んだ。
伊集院家の未亡人が重職を伴い、
五奉行筆頭の浅野長政に面会し、島津勢の侵攻を伝えた。
その際、島津勢の戦死者名簿を提出した。
一番に挙げられたのが佐多宗次。
政宗は知らぬが、九州では知られた存在なのだそうだ。
彼の者の名前があることにより、
現地に詳しい者達に事実だと了解された。
その際、長政に島津家の侵攻ではなく、
島津家の内輪揉めと言い換えられたとも。
未亡人は文言の訂正はせず、公儀の支援を求めたが、
そこは曖昧にされ、島津家の言い分を聞く必要性を説かれた。
公平を保つ為に、片方の言い分を鵜呑みにする訳には行かぬ。
検視役を選任し、双方の領地に送ると。
悠長な公儀を、政宗は腹の中で笑った。
遠方の薩摩と日向へ急ぐには船便しかない。
それだと、検視役が往復する間に戦局そのものが変わってしまう。
その辺りを考案すると、検視役も塩梅が難しい。
島津の国元からの使番が大坂屋敷に入ったのはその翌々日。
伊集院家は日向の港から。
対して島津家は薩摩の港から。
船便では島津家が後手に回るのは当然であった。
ところが登城したのは五日目。
おそらく、身内同士の話し合いが難航したのだろう。
登城したのは島津義弘と島津忠恒。
伊集院家とは違い、大老筆頭の毛利輝元に面会を求めた。
これは明らかに伊集院家に対しての面当てのようなもの。
ところが毛利輝元は即座に断り、浅野長政の元に向かわせた。
城内の噂によれば、この一件は浅野長政殿が扱うと、
にべもなかったそうだ。
浅野長政の元を訪れた島津家側は、
現当主の島津忠恒を差し置いて、義弘が前面に出た。
大殿の書状を差し出し、伊集院家が島津領に侵攻し、
家来の多くを討ち取ったと戦の一部始終を語った。
ついては、当家としては伊集院家討伐をせねばならぬ。
それを認めて欲しいと要求した。
島津家側は、毛利輝元に面会を断られた腹いせではなかろうが、
態度は当初から強硬であったという。
政宗は城から情報を持ち帰った近習に尋ねた。
「それで話し合いはどうなった。
討伐許可が貰えたのか」
「浅野様は始終のらりくらりだったそうです。
言質を取られぬように為されたのでしょう」
五奉行筆頭といえど、権限は万能ではない。
その手の許可は、易々とは出せない。
検視役を派遣し、その報告を元に五奉行で話し合い、
合意に至れば四大老に差し上げるもの。
最終的には上様の裁可を必要とした。
近習が言う。
「お二人は薩摩へ戻られるそうです」
義弘は島津家の、上方での渉外役。
当主の忠恒は、自主的に謹慎している立場。
それらをかなぐり捨てて薩摩へ戻ると言う。
おそらく大殿、義久の指示なのだろう。
そこで気になるのは分家、佐土原島津家の立場。
伏見勤番を命ぜられ、主力を上方に呼び寄せていた。
政宗はその辺りを尋ねた。
「伏見の島津豊久殿の動きは」
「そちらは聞き及んでおりません。
ですが、彼の方も戻られるとなると、僅かな供回りになるかと。
立場上、勤番の兵は割けませんので」
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えっ、余計なお世話だって。
そうですね。
余計でしたね。
でも、でもデモでもは民主主義の入り口。
『彼方へ飛ばされて』『異世界ブギウギ』
『oh! 銭ぜに銭 ぜに銭ぜに』『異世界召喚物語にゃー』。
都合により完結させたものばかりです。
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