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異世界症候群は死の夢さえも殺せない  作者: 凡人a
二日目 からくり仕掛けの時計鳩
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12:02 昼時雨の城下町に浮かぶ風船は破裂する

 12時まで城門前まで待ち続けると、世界中に響くような音量で鐘が鳴った。ほどなくして、城門が厳かな雰囲気で開き始める。どうやら12時にこの門が開閉し、内部に入ることができそうだ。

 アオイが有無を言わさず歩を進めるので、それに黙って追従し城への侵入を試みる。


「誰もここを通らない。商人や城下町の人たちが行き来するかと思ったけど。魔物の存在を恐れているってことなのかな」

「どうだろうね……。とにかく入ってみるしかないんじゃない。私たちが元の世界に帰るためにも、スキルを使えなくなった原因を探るためにも調べてみる価値はあると思う」


 ナミダは腕を組んで頷いた。

 確かに、現状現実世界に帰る方法を探すにしても、ひとまず本来の能力は取り戻したい。“魂蘇生”をもう一度使えるようになれば――なれば、なんだっけ。何か重要な出来事をしなければならなかった気がするけど、




「おい。大丈夫か。おまえはその能力を使って、カエナを蘇らせるんだろ」




 ルルゥの放った言葉が、矢となってナミダの心臓に突き刺さる。




「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」「……………………」



 視線を交わすナミダとルルゥだが、次の言葉が出ずに沈黙という槍を刺しあうだけだ。その槍を抜くことができるのは一人だけで、


「大丈夫? ナミダくん」


 アオイ。ふわふわした風船のような魂を射抜かれ、自分の中に戻った気がした。


「…………はい」


 頭上のルルゥはまったく納得していない様子で、しばらく先導するアオイの姿を睨んでいた。



 門の前に立つ2人は、その奥を覗いた。入ってすぐに階段が待ち構えており、それをせっせと上ると城下町が待ち受けているらしい。

 2人が門をくぐろうとすると、やはりという感じで門番2人が槍をクロスさせ、立ちふさがった。


門番「通行書を見せていただこう」

「通行書? そんなの持ってないですよね、アオイさん」

「んー、無いね。すみません、入りたい場合は通行書をどこで発行すればいいんでしょうか?」


 門番は警戒を解き、槍の矛先を空に向けた。甲冑の隙間から生まれるカチャカチャという音を立て、


門番「城下町の住民に配られる身分証明書か、商人等であれば自分の役職を明記できる証明書だ。町の役所で発行することができる」

「役所、か……ナトゥー村にそんな所あったかなぁ?」


 ともかく、運転免許証じゃあるまいし自分の役職を証明できるものなんてこの世界じゃ入手出来ているわけがない。

 しばらくどうしようかと悩んでいると、門の向こう側から恰幅の良い――というのは世辞が過ぎるが、裕福なボディの男が息を荒くして近づいてきた。その男の巨体はゆうに2メートルを超え、偉そうに顎に手を当てながら、


サースディ公爵「ふむ、きみたちが例の勇者候補かね? 話には聞いておるよ」


 どうやらナミダたちのことを知っているらしい。もちろんだがナミダとアオイはルルゥを指先だけでひねり潰してしまいそうな『サースディ公爵』については完全初見である。


「サースディ公爵、お初にお目にかかります。私はアオイと申します、彼はナミダ」

サースディ公爵「うむ。存じておるよ。貴公らの姿を一目見たとき、雷鳴が落ちるような感覚に浸った。この者らが今、我らが抱える問題を解消してくれる勇者たちであると。ささ、こちらに来なさい、今夜宿泊できる施設に案内させていただこう」

「お心遣い感謝いたします、公爵」


 アオイは目を閉じて、軽い会釈で返した。それに倣って慌ててナミダも真似をする。

 ずいぶんと慣れているが、アオイは以前にも酷似した場面に遭遇したのだろうか? 憶測を立てるが、彼女と出会ったばかりのナミダでは想像力が足りなかった。


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