07
おじさんのソーセージの挟まったパンを笑顔で頬張る彼らを横目で見ながら受け取った代金を数えているとおじさんから声を掛けられた。
「兄ちゃん名前は?俺はベンゾってんだ」
「あ、済みません。俺はブレッドって言います・・・ってあれ?これって多くないですか?」
確か一個十五ゴーンって言ってたのに。明らかに倍近い金額だ。
「いや、俺もこいつ等に言われて気が付いたんだが、こんな柔らかいパンは食った事ないし、三十で売るつもりだったがそれじゃ安過ぎるって言われてな。どうする?こいつ等の話じゃ五十でも安いってんだ。うちに二十五で卸して俺が五十で売るのを取るか、自分で売って五十以上取るかだ」
物価が解らないから、それがどれだけの価値なのか解らないんだよなぁ・・・確かに自分で売る方が儲かるんだけど、露店出す余裕なんてないし・・・何より売ってる最中に光られたら拙過ぎるよな。
「いえ、ベンゾさんがこれからも買ってくれるなら俺はそれで構いません」
「おう、解った。それじゃ明日からは五十で頼むが、いけるか?」
「有難う御座います!必ず用意してきます!!」
木箱にお金を仕舞って家に帰ろうとしたら、食べ終わった冒険者の一人が声を掛けてきた。
「ちょっと待ってくれ。俺はこのパーティーのリーダーをやってるアルバって言うんだが、ブレッド君だったね?君、保存の利くパンって作れないか?」
「保存食ですか・・・・・」
「お、そりゃいい考えだな。何時も買ってる固焼きパンは粉食ってるみたいで味がしねぇからな」
「あ、あたしも偶には違った物が食べたいわ。野営中に文句は言いたくないけど、あれだと食べるのにも時間が掛かるしさぁ」
「そう言う訳だから考えておいて貰えないかな?試作品でも出来たら持って来てくれれば買い取るからさ」
「えっと・・・連絡は如何したら良いですか?」
「親父さんかあそこにあるギルドでも良いよ。俺の名前出してくれたら解るからさ」
アルバさんが指をさした方、役所の西側に剣と盾の看板が見えた。多分あそこだろう。つーか、やっぱり冒険者ギルドとか有るんだな。流石異世界だ。
「解りました、アルバさんですね。出来次第伺います」
「おい、俺を伝言板代わりに使うな」
「ハハハ・・・いいじゃん、ブレッド君は毎日卸しに来るんだし」
「いえ、ギルドの方に頼みますよ。ベンゾさんに迷惑掛けられませんから」
その後ベンゾさんと少し話をして帰った。保存用のパンか・・・固焼きパン以外で何か良い物は・・・・・あ、あれが有ったか、子供達におやつで出してみよう。
家に帰って裏庭の倉庫を漁った。木箱は結構有るな・・・ベンゾさんのは返すとして、取り合えず四つ洗って乾かしておこう。後は荷車ってこれか?
板の横に木製の車輪が付いた大八車?のような物が有ったが、このままだと荷崩れが怖いし持ち手も無い。よく見てみれば車軸も支えている金属部分と擦れて削れていた。修理は勿論しなくてはならないだろうし、リアカーみたいに改造出来ないかと、更に倉庫を漁った。
ゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン―――
昼を告げる鐘だ、子供達のご飯を用意しないとな。身体に着いた埃を払い、井戸で手を洗って食堂へと向かった。
「ブレッド、 ごはんたべたらあそんでくれる?」
「あ~御免な、明日の準備しないといけないから・・・お詫びにおやつを出してあげるから我慢してくれるか?」
「おやつ?おやつってな~に?」
「お昼と夕ご飯の間にちょっと休憩しながら食べる物をおやつって言うんだ」
これで合ってるかな?感覚で覚えてる言葉って説明が難しいな。
「へ~・・・じゃあがまんする!」
ちょっと現金な気もするが子供だし、まぁこんなもんだろうと裏の倉庫で使えそうな資材と道具を漁った。
「う~ん・・・釘は少しあったけど、木槌しかないか・・・・・鉱山都市が近いのに金属製品が無さ過ぎるんだよな」
ぼろい木箱を解体して、荷車に荷物をロープで固定出来るように引っ掛ける所を付けた。周りを囲むにも、持ち手に出来る程の長さの有る木材も無かったのでロープで代用する事に。車軸だけは予備が有ったのが救いだ。
荷車の改造途中で子供達におやつを出してあげた。乾パンだ。俺的にはあまり旨い物だとは思えないが、子供達も喜んでくれたし、試しにアルバさんに渡してみよう。
日が暮れる前に何とか改造も終わった。無いなりに何とかなるもんだなと感心していると、ライザが帰って来たので埃を払って手を洗い家に入った。さて、夕飯とライザに今日の報告しないとな。
ここまで読んで頂き有難う御座います。