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06

 ライザの働いている食堂に着いた。ここで俺の出すパンを扱って貰えれば、一定の収入が得られると言う算段だ。店の店主夫妻にライザの友人として紹介して貰い。ライザに借りた肩掛け鞄から出すように見せかけて二人にロールパンを渡した。


 まぁ、残念な結果に終わった訳だが。


 味は良いけど、長年の付き合いが有ってお互い持ちつ持たれつの関係を続けてきたのだから裏切るような真似は出来ないと。そう言われちゃ仕方ない。早々上手く行く訳も無いかと、食堂を後にして町の散策に出た。


 出て直ぐ右手側に町の外壁と門が見えた。反対側には少し開けた場所と、その中央に大きな建物が見える。ライザの話では町役場らしい。


 取り合えず町の中心、役場へと向かってみた。どの建物にも窓ガラスは無いか・・・高価なのか、それともガラス自体が存在しないのか・・・・・


 役場の周辺は芝生が植えてあり、露店が幾つも並んでいて憩いの場となってる。ん~パンは売ってないか・・・いけるかな?


「こんちわ~。ちょっといいですか?」


「なんだ?兄ちゃん。一つ五十ゴーンだ、買わないなら横に退けてくれよ」


 ソーセージを焼いているおじさんに声を掛けてみた。因みにゴーンは通貨単位で下から銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、となっていて、十枚ごとに繰り上がる。大金貨の上も有るらしいがライザは知らないそうだ。


「いやぁ、食べたいんだけど手持ちがなくってさ、良かったらこれと交換してくれない?」


 鞄の中に手を入れてコッペパンを出しておじさんに渡した。


「俺が作ったんだけどさ、売ろうにも店を持つお金も無いし、おじさんの所で使って貰えないかなって」


「あん?売るんじゃなくて使う?如何言う事だ?」


「ほら、真ん中に切れ込みが有るでしょ?そこにソーセージを挟むんだよ。ソーセージだけで食べるよりも旨いと思うんだけど」


 どうやらパンに物を挟む文化も無いらしい。


「・・・・・食ってみても良いか?」


「勿論さ。それは仕事の邪魔したお詫びって事で」


「ほぉ・・・結構旨いな・・・肉汁が染みた所も良い感じだし・・・・・試しに置いてやるから昼までに・・・そうだな、三十用意出来るか?一つ十・・・いや、十五で買い取ってやるよ」


「ほ、本当ですか?有難う御座います・・・あ、済みません、入れる物が・・・・・」


 入物まで気が回らなかった・・・木箱位なら孤児院にも有るかな?


「はぁ・・・しょうがねぇなぁ。まぁ元手はこのパン作るのにでも使っちまったって所か?ほれ、この木箱もってけ、早くしないと昼に間に合わねぇかもしれねぇぞ」


「あ、有難う御座います!箱代って訳じゃないですけど、取り合えず今持ってる分渡しておきますね」


 鞄から五つ出しておじさんに渡して、木箱を担いで孤児院へ向かった。何処でも出せるけど流石に人前って訳にもいかないし、ある程度時間が経ってないと不審に思われてしまう。昼なら十分時間も有るし、一旦帰ってジャンに木箱とか荷物を運ぶための台車でも無いか聞いてみよう。


「あ、ブレッドさんお帰りなさい」


「おかえり、ブレッド~」


「ブレッドもいっしょにあそぼ~」


「ただいま皆。仕事が決まりそうだから遊ぶのは後でな」


「え~」


「ごめんごめん。ジャン、ちょっと聞きたいんだけど空の木箱とか荷物を運ぶ台車とかないか?」


 ジャンと話しながら持って帰った木箱にコッペパンを出していく。最早見慣れた風景なので子供達も只眺めているだけだ。


「空の箱なら裏の物置に有ったかな?台車がどんな物か解らないけど、小さい荷車なら・・・使えるかな?壊れてた気が・・・・・」


「解った、後で見てみるよ。それじゃ行ってくる!」


 再び木箱を担いで露店広場まで駆けだした。荷車使えると良いなぁ。


 路地を抜ける直前に身体が光った。やべぇ・・・誰かに見られてないだろうな?服を着てるとは言え、一瞬でも顔が光れば目立つし、騒ぎになったら洒落にならん。


 おじさんの露店に着くと直ぐに箱を渡した。なんかお客さん結構来てるし、もしかして人気店なのかな?


「お、早かったな。一応中を改めさせて貰うぜ」


「ええ、勿論です。でも良いんですか?お客さん待たせてるみたいですけど」


「何言ってんだ、皆お前を待ってたんだよ」


「え?俺?」


「こいつ等うちの常連なんだけどな、お前のパンが気に入ったんだと。ほれ、三十五個分の代金だ」


 おじさんからパンの代金を受け取った。店の前に並んでいた人は俺のパンを待っていてくれたらしい。


「ほ、本当ですか!有難う御座います!!」


「いやいや、これ結構いい小麦使ってるだろ?それにこんなに柔らかいパンなんて食べた事ないんだ。親父さんのソーセージとの相性もいいしさ。俺達は仕事に行く前の腹ごしらえに何時もここに寄ってるんだけど、これからはこのパンも一緒に頼むからよろしく頼むよ」


 男性五名女性三名の集団は武器や防具を身に着けた冒険者風の出で立ちだった。この格好で仕事って事は狩りとか討伐なんだろうな。


「はい!こちらこそよろしくお願いします!」


 幸先良いなと上機嫌でおじさんから受け取った代金の確認をした。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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