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 領都に着いたフォスターさんが領主館の会議室でセレスタさんからの報告を聞いていた。ケベックさんと並んでフォスターさんの後ろに居る人は誰だろう?


「申し訳ありません閣下・・・私の力が足りないばかりに・・・・・」


「よい。其方に任せた私の責任でもあるのだからな。それにだ、いずれ町ごと取り返すのだから問題は無い。其方が代官との引継ぎを終え次第出立するぞ」


 ああ、セレスタさんの代わりの代官さんかな?


「あ、あの・・・街の方でも少々問題が出ておりまして・・・・・」


「何だ?スラムが無くなった事で問題が起きたのか?申してみよ」


「いえ、スラムは関係ないと思うのですが・・・小麦の相場が急落しておりまして・・・原因はこの冬から出回った安価で高品質の物のせいと判明しているのですが出所が解らないのです。もしかするとこれも魔王の仕業なのではと・・・・・」


「出所が解らない?そんなもの取り扱っている業者を締め上げればよかろう」


「勿論詰問しました・・・ですが、売りに来た者の名前も人相も全てバラバラで、現在は何処に居るのかも解らない状況でして・・・逆に何処に居るのか知りたい位だと言われました・・・・・」


「・・・・・私は経済に明るくは無いが、拙いのではないか?その高品質の物が無くなった時、一度下がった価格は如何なる?従来の物を買うしかなくなった民達の不満は何処に向かう?誰か解る者はおるか?」


「・・・・・閣下、僭越ながら私が思うに高品質の物に慣れてしまった者は従来の物を買い控え、価格が元に戻るにはかなりの時間を要すると思われます。それ以上に小麦を取り扱っている小売店や卸業者が襲われる心配をした方が良いかもしれません。最悪の場合は暴動がおこる事も想定した方が・・・・・」


 フォスターさんの後ろに控えていた代官さんらしき人が予想を述べると、フォスターさんの顔が怒りに歪んでいった。おお、怖い怖い。


「会議中失礼しま・・・す・・・・・ろ、ロイドへ偵察に行っていた者達が帰って参りましたが・・・その、如何致しましょうか・・・・・」


 偵察部隊が帰って来た事を知らせに来た兵士が、怒れるフォスターさんに睨まれる形になって歯切れが悪くなった。最悪のタイミングだな・・・可哀想に・・・・・


「・・・構わん、入れろ」


「ハッ!失礼しました!!」


 逃げるように去って行く兵士と入れ替わりに入って来た偵察部隊の隊長さんがフォスターさんの顔を見て青褪めて行く。この人も災難だよなぁ・・・この状態のフォスターさんに追い返されたって報告しなきゃいけないんだし、生きた心地しないだろ・・・・・


「・・・・・話し合いだと?・・・ふざけおって!ここまで舐められて今更引けると思うたか!!どうせこの会話も聞いておるのだろう!魔王よ!!必ずや領地を奪還し魔族を滅ぼしてくれるわ!!その首を洗って待って居れ!!」


 報告を聞いたフォスターさんが怒りに任せて打ち下ろした拳がテーブルを破壊した・・・・・今話し掛けたら如何なるんだろう・・・火に油を注ぐ様なもんだし止めとくか・・・面白い事になりそうだけど、セレスタさんとかに八つ当たりしたら可哀想だしな。


 結局フォスターさん達王国軍が領都を出たのは引継ぎや領都民の不満を解消するために御触れを出して力技で収めたりした十五日後の事だった。出立時のフォスターさんの顔は怒りで鬼のような形相になっていたと言う。まぁ、確かに全部俺のせいかもしれないけど、その怒りを全部向けられるのはちょっと納得いかないかなぁ。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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