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 もしかしたら俺はパンじゃなくって椅子なんじゃないかと思い始めてきた或る日。


「どしたのブレッド?」


 もう少しで領民がロイドの町に到着する所だったのでアルファに集中していたらセシリアに声を掛けられた。


「・・・ああ、もう直ぐロイドに到着するからそっちを気にしてたんだ」


「ふ~ん・・・皆無事なんだよね?」


「勿論。疲れてはいるけど、怪我や病気をした人は居ないよ」


「良かったね、裏切る事にならなくて。皆ブレッドを信じてくれたんだもん。」


「そうだな・・・お、防壁が見えてきたな。取り合えず一安心だ」


 無事に到着する自信は有った。それでも子供や老人を無事に送り届ける事が出来て本当に良かったと思う。


「ガルおじさん達は?後どれ位で着くの?」


「三、四日ってとこかな。彼等の方が過酷な旅の筈なんだけど、元気過ぎて拍子抜けする位だよ」


「そっか~、良かったね~。メアリー!おちゃのおかわりほしい!」


「はい、どうぞ。ミレーヌは如何します?」


「ん~・・・あたしは後で良いや。切りの良い所まで手を止めたくないし」


 ミレーヌはここ数日セシリアの服を縫っている。なんでも女王に相応しいドレスを作りたいとか。


 にしてもだ、テーブルに足がぶつかってても俺の上に座るのは如何かと思うんだが・・・・・


*


*


*


「皆さん慌てず順番に!鉱山都市へ移住する方は町の中央に有る建物に向かって下さい!数日はゆっくり休息を取って体調を整える事を優先に願います!」


 領民がロイドの町に着いた。事前に話しておいたので混乱も無く受け入れが完了しそうだ。


「ブレッ・・・じゃなくて、アルファだったな。取り合えずはお疲れさん。俺はこれから役場の連中を手伝えば良いんだな?」


「はい。ザイツェン殿には行く行くは町長をと主はお考えですので、冬の間に役場の者達から学んで置いて下さい。では、我々は次の任務に向かいます」


 鉱山都市への道と街中の雪搔きもしないとな。後は―――


「アルファさん!俺達を鉱山都市へ連れてってくれ!!大工仕事の経験者全員で話し合ったんだが、移住者が移動する前に出来るだけ家の修復を進めた方が良いだろうってな」


 こっちの職人も脳筋だったよ・・・・・


「この先は街道整備も済んでおりませんし、先程も言いましたが先ずは身体を休める事を優先して下さい。皆様にはこれから先、やって頂く事が沢山ありますから」


「この程度で壊れるような柔な身体しちゃいねぇよ!一晩休めば十分だから連れてってくれ!頼む!この通りだ!!」


 説得する俺に大工達が頭を深々と下げたまま話を続けた。


「あんた等のお陰で俺達はやり直す事が出来るんだ。今ここで立ち止まって魔族の職人達だけが直した家に住むなんて事になったら俺達は自分自身を許せそうにねぇんだよ・・・・・だから頼む!あんた等には迷惑かもしれねぇが連れてってくれ!!」


「あああぁぁぁぁ~!もう!!如何して職人ってのはどいつもこいつも断り難い言い方してくるんだよ!!」


「クックックッ・・・おいおい、アルファさんよ、言葉遣いが素に戻ってるぜ。ハハハハハ・・・・・!!」


「グッ!解った!解りましたから、今日の所はきちんと休んで下さいね!!明日の朝、北門前に集合ですから遅れないように!!」


 腹を抱えて笑い続けるザイツェンさんを一睨みして北へと向かった。先行して出来るだけ雪搔きとカマクラ作りをしておかないとな。


 翌早朝、十五人の職人と、何故か五人の女性が北門前で待っていた。


「・・・・・あのですね・・・何で女性の方が居るんですか?この先は本当に厳しい状況だって解ってます?」


「いやぁ・・・俺達も止めたんだけどよぅ・・・・・」


「あたい等の事なら心配いらないよ、馬車の中で大人しくしてるからさ。大体こいつ等に家事が出来ると思ってんのかい?食事の心配は要らなくても掃除や洗濯とか出来るもんが必要だだろうに」


「いや、そうかもしれませんけど・・・・・」


「魔族の職人連中は如何なんだい?どうせ仕事の事しか頭にない連中なんだろ?ま、あたい等に任せときな、上手い事使ってやるからさ」


 ダメだ・・・どっちのおば・・・お姉さま方も変わらねぇ・・・とてもじゃないが勝てそうにないと、項垂れながら北へと向かうのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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