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 クッキーからロールパンに変化して蓋を少し持ち上げて周囲を伺う。室内に誰も居ない事を確認してバゲットに変化し、箱から置かれた棚へ、棚から床に転がり落ちて直ぐに乾パンに変化して誰にも気付かれていないか息を潜めて周囲を見渡した。乾パンだから息はしてないけど。


 何だこの部屋?服や靴にバッグに・・・あれは宝石箱かな?手紙の束とかカップや皿なんかも置いてあるし、物置か?それにしては掃除や手入れも行き届いてるように見えるし・・・そう、例えるなら『小さな子供の玩具箱』のような雑多さだな。


 ・・・・・もしかして・・・王妃様の宝箱・・・宝部屋か?だとしたらとんだツンデレさんだな、おい!感情云々お嬢さんに言ってたけど、あそこまで感情消す事ねぇだろ。王子さんと結婚してから急に態度変えたら逆に気味悪がられるぞ・・・いくらなんでも不器用にも程があるっての・・・・・


 閉め切られた薄暗い部屋の中で聞き耳を立て、警戒しつつ人型へと変化し、悪いとは思ったが手紙を幾つか読ませて貰った。差出人は『ロドリゲス・アルバゴーン』で内容は・・・・・歯の浮くような台詞満載の恋文で、読むんじゃなかったと少し後悔した。


 現国王が若い頃に王位を継ぐ前に婚約者の彼女へと送った物か・・・・・王妃様には宝物でも国王からしたら黒歴史だろこれ。


 この部屋に置かれた物の殆どが両親や国王から贈られた物らしく、奥の方には古くなった子供服や人形なんかも置いてあった。この部屋の存在がばれたら王妃様も悶絶するんじゃなかろうか。


 そして掛けられた服の内、手前から五着は奥の物と比べてサイズが一回り程小さく新しい物で、それが王妃様の物では無い事は明らかでだな・・・本当に素直じゃない!自分の娘になる女性、将軍さんの娘へのプレゼントだろ、これ!


 王妃様が嫌いで結婚したくないなら連れ出そうかとも思ったけど・・・これ見ちゃったら出来ねぇよ・・・・・一応敵対してる訳だし、俺が口出しする事じゃないんだけどさぁ・・・不器用過ぎて応援したくなっちゃうじゃん・・・・・はぁ・・・どうしようかなぁ・・・・・


*


*


*


 共同住宅の食堂で一人煽るように酒を飲むアルバさん。う~ん、絵になるなイケメンは。


「お前がそんな吞み方をするのは珍しいな、アルバ」


「グレイ・・・・・お前は如何するか決めたか?」


「俺か?俺と言うか俺達は今までと何も変わらないさ。あの日、お前に付いて行くと決めた。喩えそれが国に剣を向ける事になろうともだ」


 肩を竦めて笑顔で答えるグレイさん。この人もかっこいいな。アルバさんに対する信用と言うか忠誠心みたいな物を感じる。


「・・・そうか・・・・・お前達は強いな・・・僕は・・・僕には出来そうにない・・・・・」


「では、お帰りになりますか?」


 うん?何だ?グレイさんの雰囲気が変わったぞ。


「止めてくれ・・・僕にはもう帰る所なんか・・・・・」


「良い機会だと思いますが?そろそろ逃げ続けるのにも飽きた頃でしょうし、玉砕覚悟で戦いに赴くのも悪くないと思います。何方にしても我々は貴方と共に在ると誓いましたから、何処へでも、何処までもお付き合い致しますよ」


 もしかしてアルバさんって良いとこの坊ちゃんで仲間は皆護衛か?


「僕は・・・僕は・・・・・」


「悩みなさい。残された時間一杯悩んで悔いの無い答えを出すと良いでしょう。私は先に休みますが、飲み過ぎてその場で寝て風邪等お引きにならぬよう願います」


「ああ・・・解ってる・・・・・グレイ、済まないな・・・・・」


「いえ。では、失礼致します」


 グレイさんが一礼して食堂を出て行く。アルバさんは暖炉の灯を暫く見つめ、カップに残った酒を一気に飲み干してから食堂を出て行った。アルバさんの正体と決断次第では敵に回る可能性も有りか・・・・・彼等とは戦いたくないなぁ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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