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 長い長い冬が本格化してきた領都に残った避難民は不満が溜まっていた。食料や薪や毛布の支給はされた物のテント生活は変わらない。降りしきる雪の中で少しでも寒さを凌げるように連日テントの周囲の雪掻きをするだけの日々が彼等の心を蝕んでいった。


 あの時ロイドの町に帰っていれば。


 何故俺達がこんな目に遭わなければいけないのだ。


 王国軍は何をやっているんだ。


 国は俺達を見捨てるつもりなんじゃないか。


 帰りたい―――


貧しくとも平穏な、家族皆が笑いあえたあの故郷に―――




 ―――その望み我が叶えてやろう。出立の準備をせよ。二日後に迎えを送る。我が名は『飽食の王』全ての種族を導く者なり―――




 ちょっとカッコ付けてみた。現在鉱山都市で搔き集めたフルアーマー姿の俺達が街道を雪かきしながら領都へ進行中です。勿論荷車もありったけ持って来てますよ。後は・・・一応あの人にも声かけとくかな。


*


*


*


『ザイツェンさん、ザイツェンさん、ロイドの町に帰りたいですか?』


「んぁ?・・・あぁ・・・帰りてぇなぁ・・・俺達の町に・・・・・ん?・・・ブレッド!ブレッドか?!てめぇ、今まで何で黙ってた!!」


『そんな事は如何でも良いじゃないですか。それより国を捨てて俺に付くなら今直ぐ宿屋の裏に来て下さい。頼みたい事が有るんですよ』


「は?国を捨てる?・・・お前、何を言って―――」

『これで俺と話せるのは最後になるかもしれませんよ?良いですか、直ぐに決断して下さい。荷物を纏めて俺の所に来るか、それともここで愚痴を溢すだけの生活を続けるか、です』


 この人は何だかんだ言ってもギルドマスターをやってただけは有って人を引っ張って行く能力は有るんだよね。ロイドの町では纏める人が居ない現状で、この人は必要な人材の筈だ。


「クッ!・・・・・ああぁぁ~!!解ったよ!国でも何でも捨ててやらあ!直ぐに行くから待ってろ!!その代わり・・・ちゃんと説明しろよ」


 ザイツェンさんが乾パンの俺をポケットに突っ込んで、バタバタと荷造りを始めた。領主館に隠れていた俺の内一人が壁を越えてザイツェンさんの居る宿屋の裏に向かった。


「おい、何が起こってんのか説明しろ、ブレッド」


「余り時間が有りません、話は移動しながらで」


「何処に行くのか位は教えて貰えるんだろうな?」


「馬と馬車を買えるだけ集めたいんです。後は薪とかも。俺は良くても皆には厳しい旅になるでしょうし」


「は?皆?旅?何だそりゃ?この雪の中何処に誰と行くってんだ?」


「ザイツェンさんも言ったじゃないですか、ロイドの町に帰りたいって。ロイドの町に帰るんですよ、皆で」


 呆気に取られたザイツェンさんを連れて町中を回り、馬と馬車や薪等を買えるだけ買い漁った。勿論お金は領主館から持って来たものだ。罪悪感?そんな物ねぇよ、宣戦布告されたんだし。


「それじゃザイツェンさん、後は頼みます。俺はまだやる事が有りますので」


「お、おい!待てよ!何処行く気だ!!」


「明後日までに準備は整えて置いて下さい。それと全員の意思の統一が肝になりますから、ザイツェンさんの腕の見せ所ですよ」


 ザイツェンさんと別れてお目当ての店を数軒回ったが、中々色好い返事は貰えなかった。それでも、その気になったら明後日までに来て欲しいと伝えて更に街の奥へと足を運んだ。


「ちょっと良いかい?この辺を仕切ってる奴とか居るなら何処に居るか教えて欲しいんだけど」


 路地裏の更に奥、普通の人なら絶対に足を踏み入れないであろう場所で焚火を炊いて屯している集団に話しかけた。


「あん?何だてめぇ、この辺じゃ見ない面だな?」


「ああ、ロイドの町から来たんだ。知ってんだろ?今避難して来てるって。そんな事より教えてくれないか?」


「ハッ!何の用か知らねぇけど、はいそうですかって教える訳ねぇだろ。とっとと帰ぇんな」


「そうか~、残念だ。こんな所で管巻いてるだけの下らねぇ人生におさらばする良い話を持って来てやったんだけどなぁ~。あんた等の大嫌いな衛兵達にも一泡吹かせられる最高に楽しい催しに参加出来る機会だったんだけど、嫌なら俺は帰るとするよ。それじゃ、死ぬまでここで腐ってるんだな」


 煽るだけ煽って立ち去る振りをして、後ろを向いた瞬間に一人の男が身体ごとぶつかって来た。両手で握られた大振りのナイフを俺の背中に突き立てて。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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