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村の集会所でバルダークさん達四人を呼んで相談をした。
「あ~・・・と言う訳で、姫様付きの俺は外に出られる状態じゃないんで、メアリーを連れてきた俺が代わりに相談に来ました」
「いや、別にどっちもブレッド君なんだから、どっちのとか関係ないし、問題も無いでしょ?」
「今はその突っ込みが有難いです、ケティさん・・・マジで精神的にやられてるんで・・・・・え~っと、服の方は皆さんの協力のお陰で何とかなりました。有難う御座います。それで、名前を付けてあげたいんですけど何か良い案は有りませんか?魔族の常識に疎いので、タブーとかあると拙いかと思いまして」
「特に無いが、通常は両親が話し合って事前に決めておくものなのだ。そして生まれて来るまでは誰にも話さない、と言う事位だな」
「ほうほう、それは何か理由でも?」
「名を赤子に授ける前に知られると、悪魔に魂ごと奪われ利用されると言われているな」
バルダークさん・・・見た目が悪魔な貴方がそれを言ったらあかんやろ。まぁ、迷信なんだろうけど。
「ん~・・・そうだ、実母の名前を教えて貰えます?母親の分まで長生きして貰いたいって願いも込めて姫様に送りたいと思うんですけど、如何ですかね?」
「あら良いじゃない。他の皆にもそう伝えておくわ」
「ああ、今日からセシリア様で決まりだな」
「そうね、私も素敵な理由で付けて貰いたかったわ~」
「では、セシリア様と言う事で周知しに行くとするか!」
「おう!」
「「おー!」」
それで本当に良いのか?とか、他の村人の承諾を得ないで良いのか?とか、言う間も無く決まってしまって、止める間も無く四人は行ってしまった。
俺は四人を止めるべく上げ掛けた右手で目を覆い天を仰いだ。
何なのこれ?魔族って皆こんなに直線的なの?姫様・・・じゃなくてセシリアだけでなく、魔族全員で俺の精神ゴリゴリ削ってくんなよ!って・・・メアリーもだったわ・・・・・
で、決まってしまったみたいなので屋敷の方の俺が姫様に名前を教えた。
「と、言う訳で、姫様のお名前はセシリアに決まりました」
「セシリア?あたしのお名前はセシリアなの?じゃあお兄ちゃんは?」
「俺はブレッドですよ、セシリア様」
「ちがうの!セシリアさまじゃなくてセシリアなの!」
「あ~・・・はいはい、セシリアですよ~・・・まぁ、その辺の違いは追々教えて行くしかないか~」
「ないか~」
子供の相手は慣れているつもりだったけど、見た目とのギャップでどうしても疲れるなぁ。メアリーはその微笑ましい物を見るような目は止めろ。
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「御館様。王都よりお客様がいらっしゃいました」
おっ、やっと動いたか?王都までの距離が解らないから何時動いたのかは知らんけど。
「何だ?先触れも無しに来るとは無礼な」
「それが、その・・・将軍閣下に御座います・・・・・」
「なあっ!!ほ、本当に‶あの〟フォスター様なのか?」
「はい。確かに『殲滅騎士』フォスター・ブラッドリー将軍に御座います」
「お、応接室にお通しするのだ!決して失礼の無いようにするのだぞ!」
「は、はい!直ちに!」
何か知らんが相当偉い人な上に怖い人が来たみたいだな。しかし『殲滅騎士』って中二病全開の二つ名が笑える。フォスターさんか・・・覚えとこう。
で、応接室に通された人を隠れてる俺が見てんだけど・・・何この人、怖い。身長は190cm以上はあるし、服の上からでも解る位身体も引き締まってる。まぁ、騎士で将軍なんだからそれは当たり前なのかもしれないけど、顔がね?その左目の横から顎までの傷跡は何で付いちゃたの?目付きも鋭いとか通り超えてて、目が合っただけで人を殺せるような?スキンヘッドと相まって存在感がもう半端なくヤバい。冗談抜きで、この人が魔王だって言われたら信じちゃうレベルだよこれ。
マジか~・・・最悪この人と戦う事になるとか勘弁して欲しいわ~・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座います。