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3話 青髪のエレア

http://ylvania.org/jp/elona/

この物語は、Elonaというフリーゲームの二次創作です。

二次創作は自由ということでさせていただきました。

ところどころ自己解釈が含まれたり、用語の解説がなかったりします、ご了承ください。

 リミアとともに着いた所は、小さい家だった。

 レンガ造りの、きれいな家。

 お金持ちと聞くと大きな豪邸を思い浮かべるが、この家は小さいながらもお金持ち感を感じさせる。

 リミア=シェブルといったか。

 そうだ、思い出した。

 シェブルといえばエルフの中でもかなり有名な一族の名だ。

 となると、貴族……なのかな、リミアは。

 リミアが鍵を開け、ドアを開く。

 目に映ったのは綺麗に並べられたモンスターの剥製達と、生活感ある普通の家のリビング。


「剥製?」


「あぁ、私は剥製を集めるのが大好きなんだ」


 言葉を交わしながら、どうぞと招かれたので家に足を踏み入れる。

 リミアは帰宅と同時にプチの剥製に目をやったのがわかる。

 そして、それを見つめる目に少しの恐怖を覚えた。

 なぜだろう。


「狭いが、ゆっくりしてくれ、ここは君の家も同然だから」


「いいのか? こんな出会ったばかりの人間を」


「あぁ、いざとなれば私もそこそこの腕前があるからね」


 壁に立てかけられた杖を握りながら、リミアは言った。


「魔法、使えるのか」


「代々魔法を使う一家だからね、ある程度は……と、まあエレアなら当然だが」


 綺麗な青い髪。

 耳に髪をかけながら、杖をしっかりと握って言う。

 なんて、綺麗な人なんだろう。


「ベッドは君が使うといい、近いうちにもう一つ買うからそれまではね」


「いやいやいや、申し訳なさすぎる」


「招いたのは私だ、気を使うな」


 ではお言葉に甘えて、という意を込めて軽く頭を下げ、ベットに横たわる。

 久々にちゃんとしたベットに横になったなぁ。

 今までは野営だったし、なんなら仮眠をとっては動き、仮眠をとっては動き、といった生活だったから。

 布団からほのかにするリミアの匂いが、私に安心感を与える。

 今まで緊張感に包まれた生活だったが故か、ちゃんと睡眠をとってなかったが故か、次第に私は眠りに落ちた――



 ――はっ!!

 窓から差す光に起こされた。

 あのまま寝てしまったのか。

 しかし、こんなにいい目覚めは人生で初めてかもしれない。


「起きたようだね、おはよう」


 リミアは部屋のやや奥に置かれたテーブルの上で、本を読んでいたようだった。

 私が起きたことに気づくと、本を閉じて机に置き、キッチンへと向かう。


「簡単なものしかつくれないが……アピの実は好きかい?」


「アピの実……まあ、それなりには」


「よかった、丁度パイを焼いていたんだ」


 そういえば、なんだか鼻をくすぐる甘くて香ばしいいい香りがするなぁ。

 しかし朝食にパイを焼くなんて、なんて女子力の高さ。

 そして起きてすぐ、血でまみれた服のまま寝てしまっていたことに気づく。


「わわ、血が」


「気にしないでいい、替えのシーツはあるから」


 オーブンからパイを取り出し、本を置いた机に置く。


「こっちへおいで、一緒に食べよう」


 胸がばくん、と鼓動する。

 こくりとうなずくので精一杯だった。

 起き上がって軽外套をコート掛けに掛け、リミアの向かいに座る

 リミアはパイを切り分け、ひと欠けを皿に乗せて私の前に置いた。


「召し上がれ」


 こんなにも手の込んだ食事をするのも、初めてかもしれないな。

 私のはじめてが、この家にはたくさん詰まっているようだ。

 だが、剥製と同じ部屋で朝食を食べる、というのも中々落ち着かない。

 リミアは平気なようだが。

 とりあえず一口ほおばってみる。

 するとどうだろう、甘いだけでなくわずかな酸味を感じるアピの実と、香ばしいパイ生地がよくあう。


「味はどうかな」


「これ、うまいなぁ」


「よかった」


 私の反応を見てから、リミアもパイに手をつける。

 二人でパイを食べる、優雅な朝。

 私の今までの生活とはまるで違うが、不思議と嫌じゃない。

 むしろ、こっちのほうがいいかも、なんて思い始める。


「さて、私は少し出かけるが、ルーアも来るかい?」


 パイを食べ終えると、外行きの準備をしながらリミアが言う。

 私も頷いてコート掛けに掛けた外套を羽織ると、じゃあいこう、とリミアがドアを開けた。

 なぜ杖を置いて、代わりにダガーを持ったのか。

 その答えはすぐにわかることになる。




 野原を歩き、どこの街でもない方向へ進むリミア。


「どこに行くんだ」


「今日はやどかりを探してるんだよ」


「やどかり?」


「そう、やどかり」


 朗らかに歩みを進めるリミアの後ろを私がついていくように歩く。

 私の生計の立て方は盗みが主流だったので、いつも街中を歩いていた。

 なのでこうやってピクニックみたいに広い平野を歩くのは、なんだか落ち着かない。

 そして見晴らしがいいので、奇襲に警戒する必要がないのも楽でいい。


「やどかりの肉を食べるのか」


「いや、剥製にするんだ、コレクションにほしくて」


 なるほど、リミアは相当剥製が好きらしい。

 家にあった剥製だけでも、10種類程度のモンスターが飾られていたもんな。

 ただ、剥製をつくる作業場のようなものがなかったが……?

 と考えていると、リミアがあ! と大きな声をあげた。

 視線の先に、今回のターゲット、やどかりがいたのだ。

 動きの鈍いやどかりに、リミアは後ろから近寄ると、ダガーで首元を一刺しにした。

 浅かったのか、息の根を止められていない。

 が、体重をかけるようにしてダガーを奥へ奥へと刺していく。

 やどかりはもがき、はさみを振るうが背後までその立派なはさみは届かない。

 やがて大量の出血とともに、やどかりは活動を停止する。

 私なら

 もっと素早く殺せたのにな、と思ったが、こういう殺し方をしたのには意味があったたしい。


「こうやって傷口を小さくして殺さないと、剥製にしたとき傷が目立つんだよ」


「なるほど」


 相手の急所を一突きで確実に狙う。

 それには相当な知識と、技術がいることを私は知っているだけに、驚いた。

 さらに驚いたのが、リミアはその細い腕でやどかりの死体を持ち上げ、帰ろうと言い出したのだ。

 軽く私の体重くらいはあるであろうやどかりを、持ち上げて持って帰る気か。

 このリミアという女は、とんでもないエレアだと、思い知らされた。

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