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日向の君と日陰の僕  作者: からむますたー
9/10

take8 家族からの電話

十二月二十九日——

心に重たいものをぶら下げたまま、家に着くなりベッドに倒れこんだ。そこまでは覚えている。あのとき、なぜ嫌な気持ちにさせてしまったのか、自分でもよく分からない。


(参ったな…どうしよう…)


悩むものの、理由も分からないし、名案もでない。そして、年末年始をこちらで過ごすので、完全に一人である。


(とりあえず、お風呂に入ってから考えるか)


と思って、お風呂にお湯を貯めようとしたとき、電話が鳴った。慌てて電話の主を確認すると、父親だった。


(最悪なタイミングだな…)


とはいえ、出るしかない。僕は応答のボタンを押した。


「はい、もしもし」

「泰典、元気か」

「あぁ、元気だよ」

「こっちへは帰らないのか」

「あぁ、そのことね。バイトと集中講義があってさ」

「集中講義などないって書いてあったぞ。それと…飲食店じゃないなら、アルバイトも休みだろ。その程度で騙せると思ったのか。」

「……」

「返事はなしか、泰典。何もないなら、帰ってこい。」


完全に見抜かれていた。僕は何も反論できなかった。


「それでも、帰ってこないと言うなら、生活費の仕送りを無しにするぞ。」

「わかりました…帰ります…」

「チケットは自分で用意できるな?」

「はい…」

「明日、夜までに帰ってくるように。いいな。」

「わかりました…」


僕は通話が切れたのを確認して、ふぅ…とため息をついた。この問い詰めるような父親の話し方は未だに慣れないし、対応できない。完全に気が重くなってしまって、その場にしゃがみ込んだとき。電話が鳴った。姉からの着信だった。


「もしもし」

「おー、泰典。元気かー」

「元気だよ、姉さん」

「元気なら、よかったー。前の話はうまくいった?」


(恐らく、前に服のことを相談したことだな。)


「あ、あぁ、あれね。うまくはいったよ。」

「よかったー。私がプロデュースした甲斐があったわね」

「あのときはありがとう。助かったよ」

「ふっふっふっ、弟の願いとあれば、お姉ちゃん頑張っちゃうからな」


姉のこの軽いやり取りは、今の自分にとって、とてもありがたかった。


「さて、弟よ。本題がある」

「何、姉さん?」

「先ほど、お父さんから『年末年始は帰ってこい』って連絡が来なかった?」

「あぁ、ついさっきね、来たよ」

「その件でね、あんたに言わないといけないことがあってね」

「うん、なぁに?」

「会わせたい人がいるのよ、ご挨拶ってやつ」

「あぁ、姉さん、ついに…」


姉さんにはお付き合いをしている人がいるのは知っていた。付き合いも長く、『そろそろ籍を入れるかも』という話は受けていたので、納得の展開だ。


「そそっ。それで、年始にご挨拶に行こうって話になってるのよ」

「あぁ、それでお父さんは帰ってこいって言ってたのか」

「お父さんからこの話は聞いてなかった?」

「いいや、全く。帰ってこいしか言われてない」

「あぁ、お父さん、いつもの言葉足らずか…」


電話の先で姉がため息をつくようにつぶやいたのが聞こえた。


「ごめんね、私のせいで強引に実家に帰らせて…」

「いや、別に大丈夫だよ。姉さんがそういう事情なら」

「会ってくれたら、すぐ帰りな。あんまり居ても、しんどいだけだろうから」

「うん、わかった」

「あんたはいつ帰ってくるの?」

「明日の夜までには着くように今からチケットをとるつもり」

「わかった、途中で拾っていこうか?」

「いいの、姉さん?」

「いいよ、私も明日の夜に着く予定でいたから」

「じゃあ、お願いします」

「おっけー、じゃあチケットが取れたら、メールしてね」

「うん、わかった」

「じゃあ、またね」


ばいばいと言ったところで、通話は切れた。


(そういう理由があるんなら、まだ気は楽かな…)


僕は少しだけ晴れた気持ちで、お風呂に向かった。


(さて…あいつらにも言っておくか。)


お風呂から出た後、僕はSNSのアプリを起動した。大学のサークル仲間で、今年の夏にサークル内で起こったある事件を一緒に解決したメンツでもある。


『やす:俺も実家に帰ることになった』

『ミノ:おおっ、楽しんで』

『Shun:ということは、ぼっちじゃなくなるのか』

『Massa:新年を一人で迎えるのは辛いからな。よかったやん』

『ミノ:実家は最高だぜぇ』

『やす:実家に帰ると、ご飯の準備をしなくて済むのは楽だよな』

『Massa:普段から実家住まいだから、たまには一人でいたい』

『Shun:それな』

『ミノ:そういや、やすの実家ってどこだっけ?』

『やす:香川』

『Massa:おっ、讃岐うどん食べれるやん』

『Shun:お土産に讃岐うどんをよろしく笑』

『やす:色々なうどん店があるから、旅行しに来い笑』

『ミノ:一度くらいは行ってみたいよな、四国』

『Shun:卒業旅行で行くのはありかもな』

『Massa:いや、そこは海外だろ』

『やす:卒業旅行は海外がいいと思うよ』

『Shun:えー、国内のほうが安心感があるやん』

『Massa:海外も海外で楽しいぞ』

『ミノ:さすが、Massa…』

『やす:ゲームの聖地巡りのために海外旅行に行っただけある…』

『Massa:ドイツはいいぞぉ』

『Shun:でた、ドイツ笑』

『ミノ:その行動力と経済力がうらやましいわ』

『Massa:実家暮らしの強みです笑』


僕はしばらく友人たちとのやり取りを楽しんでいた。真典のドイツ話が一通り終わり、区切りがついたところでお開きになった。


(さて、準備をしていきましょうかね…)


僕はスーツケースに衣服を詰め込んで、実家に帰る準備を整えたのだった。


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