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序章
この作品は、私の過去の連載作品「美味なる純血」の続編にあたる作品です。が、前作を読まなくてもそれ程問題ないようにしてあるつもりですので、あまり気にせずどうぞ。
ズブリと。深くカッターが彼女へ突き刺さる。人間へ何かを突き刺すという感覚は、ゲームや漫画で見るような爽快感のあるものではなかった。
親友だった。彼の日常に必要な、大事な親友だった――否、今この瞬間、カッターを突き刺しているこの瞬間でさえ、彼にとっての彼女は大切な存在だった。その彼女へカッターを突き刺さなければならないという現実に、彼は歯噛みした。
もっと何か出来た。助けてやることが出来たかも知れない。こんな方法ではなく、もっと何か別の方法で……彼女を助けることが出来たかも知れない。
なのに。
それなのに彼女は。
「真……」
苦痛に表情を歪めもせず、傷口を押さえもせず、微笑んだ。
「ありがとう……」
お礼を言われるようなことは出来ていない。むしろ罵倒されても良いくらいだ。なのに彼女は無理して微笑んで、ありがとうだなんて、お礼の言葉まで言って――
そっと。目を閉じた。




