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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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勇者たちの跡地に沈む影

西宮の夜は、やけに明るい。


巨大な商業施設。

ガラス張りのショーウィンドウが光を反射し、

家族連れと若者の笑い声が絶えない。


だがここは、かつて野球場だった。


アンダースローの大投手が、

鋭く落ちるシンカーで強打者をきりきり舞いにした場所。


世界の盗塁王が、

競走馬とのスピード対決で勝利し観衆を沸かせた場所。


代打本塁打世界記録を打ち立てた豪打者。

規格外の鉄砲肩でグラウンドを支配した遊撃手。

ベネズエラ人の丸メガネの二塁手が強打と強肩で魅せた。


少ない観衆でも、

勇者たちは本気で戦った。


あの西宮の土は、今はコンクリートに埋もれている。


だが彩香は思う。


「夢は消えへん。」


NSTは、地下搬入口に立っていた。


押収したデータの解析で、

この施設の地下イベントスペースが

県知事側の“市民集会”準備拠点だと判明。


SNS拡散用の映像制作、資金移動、

そして――


データの中に、玲奈の名前。


“RG-Lead / Media Asset”


Asset。


資産。


人を、そう呼ぶ連中。


彩香の目が冷える。


「証拠は?」


あかりが端末を叩く。


「名前はある。でも確証はない。

直接の映像は消されてる。」


今回の主役は、あかりだ。


以前なら、

怒りに任せて突っ込んでいた。


今は違う。


地下通路のセキュリティを迂回し、

倉庫奥の仮設編集室へ。


モニターに走る映像。


集会用の煽動動画。


だが、サーバー奥に隠しフォルダ。


あかりが囁く。


「見つけた。」


暗号化ファイル。


解読。


画面に浮かぶのは、

拘束された女性の後ろ姿。


白いブーツ。


だが顔は映らない。


玲奈かどうか、決定打はない。


あかりは唇を噛む。


「……ここまでは掴んだのに。」


彩香が肩に手を置く。


「焦るな。線は繋がっとる。」


その瞬間。


遠くから明るい声。


「うわぁ~!このマカロンやばい!」


彩香の額に青筋。


振り返ると――


明るい色のハーフツインテール。

小柄な影。


隣に、気品ある長い黒髪の長身。


「またあいつらや。何で毎回居るんや?」


神戸放送の情報番組。

“新作スイーツ食べ比べ特集”。


よりによって地下イベントスペース前。


さつきがマイクを向ける。


「こんばんは~!

今話題の新作スイーツ、どっちが食べたいですか?」


カメラが回っている。


美月が満面の笑み。


「チョコ派?それとも抹茶派?」


最悪だ。


ここで雑に扱えば、

怪しまれる。


彩香は即座に切り替える。


「……抹茶やな。」


迫田ツインズも頷く。


「私も。」


「同じく。」


さつきが嬉しそうに言う。


「やっぱり抹茶人気ですね!」


美月が割って入る。


「でもチョコも濃厚でな、ほんまに――」


そのとき。


あかりから無線。


「彩香、データ抜けた。

撤収タイミング――」


応えられない。


カメラの前だ。


彩香は微笑みを崩さず、

小さく咳払い。


無線を切る。


美月が覗き込む。


「何?今の。」


「鼻炎や。」


迫田ツインズが真顔で頷く。


「花粉症。」


完璧な嘘。


さつきは気づかない。


「放送は来週ですから、ぜひ見てくださいね!」


NSTは笑顔で応じる。


だが背中は冷たい。


カメラが去る。


あかりが合流。


「……なんで毎回おるん?」


彩香は吐き捨てる。


「知らん。」


データは押収。

集会は未遂に終わる。


だが玲奈の確証は、まだない。


勇者たちが躍動した跡地で、

今は別の戦いが進む。


あかりは静かに言う。


「玲奈さん、ここ通った可能性高い。」


彩香はガラス越しに夜景を見る。


「まだ兵庫に居る。」


そう信じたい。


ショーウィンドウは輝く。


家族が笑う。


スイーツの甘い匂い。


だが地下では、

闇が動いている。


数日後。


神戸放送でオンエア。


彩香と迫田ツインズが

満面の笑みでスイーツを選ぶ姿が流れる。


美月がナレーション。


「こちらの三人は抹茶派でした!」


NSTはテレビを無言で見つめる。


画面の中は平和だ。


その裏で、

リーダーはまだ闇の中。


彩香は立ち上がる。


「次、行くで。」


西宮の光は眩しい。


だがその下に、

影は確かにある。


勇者たちの夢の跡地で、

NSTは新たな戦いを続けている。

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