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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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静かなる日常、潜行する影 ― 影の準備線・交差点

NSTは、止まっている。

少なくとも、外から見れば。


書類の上では活動休止。

ボスは謹慎。

組織は凍結。


だが――現場は止まらない。


そして、彼女たちも。


――


ヒロ室西日本分室。


「……ここ、もう一回洗うで」


西川彩香の声は低い。


机の上には資料が並ぶ。

細かく切り刻まれた情報。

断片的な記録。


「抜け、潰す」


短く言う。


派手な任務はない。

だが精度は確実に上がっている。


凡事徹底。


それだけが、今できる唯一の戦いだった。


(……来る)


彩香は確信している。


出番は必ず来る。

その時に振れるかどうか。


それだけだ。


――


一方、表の顔。


戦隊ヒロインプロジェクトは、むしろ忙しくなっていた。


イベント。

広報。

地方巡業。


NSTの影が薄れた分、光の部分が増えている。


「よう来てくれはりましたなぁ」


西園寺綾乃が、柔らかく微笑む。


その視線の先にいるのは――美咲。


「美咲はん、随分と逞しい顔になりましたなぁ」


はんなりとした京都の言葉。


美咲は一瞬、言葉を失う。


「……え、あ、そんな……」


頬がわずかに赤くなる。


綾乃は、ただの先輩ではない。

美咲にとっては、憧れに近い存在だった。


所作。

言葉。

立ち居振る舞い。


すべてが“上品”で、強い。


その綾乃に認められる。


それだけで、胸が熱くなる。


「……まだまだです」


小さく頭を下げる。


だがその目は、以前とは違う。


揺れない。


綾乃は静かに頷く。


「ええええ、よう頑張ってはります」


NSTの存在など知らない。


だが、感じ取っている。


この少女が、ただのヒロインではないことを。


――


別の場所。


大学のキャンパス。


「なぁ澄香、最近どないやねん」


赤嶺美月が、抹茶ラテを啜りながら言う。


向かいにいるのは――


「……普通やで」


澄香。


淡々と答える。


だが実際は澪香。


完全に入れ替わっている。


「なんやそれ、もっと青春してる感じ出してくれや」


美月は気づかない。


まったく気づかない。


「してるやろ、これが」


澪香は軽く返す。


少し離れた席で、澄香が小さく笑う。


(……まあ、ええか)


訂正する理由もない。


「ほな今度どっか行こや!」


「ええな」


話はそのまま進む。


完全に成立している。


――


四日市。


「あー……終わらん」


あかりが机に突っ伏す。


教科書。

レポート。

単位。


「なんで今やねん……」


NSTが止まった結果、逃げ場がなくなった。


「……これも任務やな」


自分に言い聞かせる。


ペンを持つ。


戦場は違うが、やることは同じ。


――


和歌山。


みかん畑。


「そっち、気ぃつけてください!」


麻衣が声を張る。


収穫の手伝い。


汗が流れる。


だがその後、日陰に入りノートを開く。


幼児教育。

発達心理。


「……ちゃんとなりたいから」


本気だった。


現場で見たものが、彼女を変えた。


守られる側ではなく、守る側へ。


――


神戸。


夜の直線道路。


美音のバイクが滑るように走る。


加速。

減速。

旋回。


すべてが無駄なく、正確。


「……問題ない」


短く呟く。


体は鈍っていない。


むしろ研ぎ澄まされている。


――


上空。


あおいのヘリが円を描く。


「視界良好」


誰も聞いていない報告。


だが、それでいい。


空の感覚は失っていない。


――


そして。


どこにも属さない場所。


静かな部屋。


岡本玲奈は、一人立っていた。


謹慎。


公式には何もしていない。


だがその目は、死んでいない。


動かない。

語らない。


ただ、待つ。


――


NSTは止まっている。


そう思われている。


だが違う。


日常の中に潜り、

静かに準備を続ける影。


誰にも見えない場所で、

確実に積み上げている。


出番は、まだ来ない。


だが来る。


その瞬間のために――


彼女たちは、今日も振り続けている。

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