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プロローグ
この物語は、この世でいちばん美しい魔法使いと臆病な騎士さまのおはなしです。
◆
昔々あるところに――
おはなしはいつもそこから始まります。
昔々あるところに、深い森がありました。
森は絶えず濃い霧に包まれており、迷い込んだ人たちの多くは行方知れずになってしまうというおそろしい森です。
そんな森の奥に、古い小さな塔がありました。
ある人が言いました。あの塔には怖ろしい魔法使いが住んでいて、人々を惑わせて食べてしまうのだと。
ある人が言いました。あの塔にはあわれな年老いた男が一人いるだけで、迷い込んだ人々は霧に惑わされてしまうだけなのだと。
ある人が言いました。迷い込んだ人々が帰って来ないのは当然だ。何故ならあの塔にはこの世のものとは思えない美しい姫君が囚われていて、人々を虜にしてしまうのだと。
そうして長い長い時間の間に、たくさんの噂はいつしか形を変えてひとつの噂になりました。
あの森にはその昔から、迷い込んだ人を食べてしまう「この世でいちばん美しい魔法使い」が住んでいるのだと――。




