第6話 龍姫転生②ー遭遇
詩篇登場人物の死に際の声に導かれるように森の中を駆け抜ける。
声が鮮明になるにつれ森の様子が騒がしくなっていく。
鹿やウサギといった野生動物に混じって灰色熊や大軍隊蟻の姿も見受けられる。
一様に何かから逃げてくるような様子だ。
「いや〜な予感しかしないんだけどね〜。」
思わず独り言を漏らしてしまう。
念の為、気というか魔力を体表を循環するようにして練り上げていく。
〈スキル:魔力操作を取得しました。〉
〈スキル:魔力操作を操気術に統合します。〉
〈統合に成功しました。〉
いきなり頭の中に声が響いた。
なるほど、この詩篇世界では、こうやって能力を習得するわけか。
練り上げた魔力を脚部に留めるように調整して地面を蹴り込むと、地表部分が爆発するような感覚と共に急加速する。
地面に小規模なクレーターを量産しながら森の奥へと進んで行くと警戒音を響かせる大軍隊蟻の群れが立ち塞がった。
正確には、進行方向から逃げて来ているだけなのだが…。
「邪魔っ、だよっ!」
右手にハルバードを握りしめ、速度を落とさずに先頭の一匹に対して上段から振り下ろす。
軽い手応えと共に両断、続く一匹に対して柄の部分を蹴り上げてピック部分で頭部を粉砕する。
〈スキル:断頭を習得しました。〉
〈スキル:粉砕を習得しました。〉
ピックが上に流れるのと同時に跳躍、進路上の個体に対して連続して突きを繰り出し撃破していく。
〈スキル:多段突きを習得しました。〉
進路上最後の個体は、跳躍の足場として利用、と同時に潰す。
追って来るかと思ったが、やはり何かから逃げるのを優先しているのか、そんな気配はない。
しばらく進むと森が急に開けた。
以前ならここに村が存在したのだろうが、現在は面影もない。
というか、現実進行形で燃えている。
家屋があった場所が森から幾分離れていたためかまだ森への延焼はないが、このまま放置すればいずれは…。
とはいえ、今の俺にとって延焼は目の前の状況に比べれば大した問題ではなかった。
「おいおい…。最初に遭遇するボス級が竜種とか、どんな嫌がらせだよ…。」
村の中心に鎮座し、おそらくというか、間違いなくこの騒動の中心でもあろうモンスターは、最強種である竜種だった。
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名前:*%#**
種族:亜竜種
体力:5000
魔力:0
筋力:5000
知力:40
敏捷:2000
器用:500
スキル
息吹〈火〉
加護
なし
ロッダ山脈に巣を持つ亜竜種の一体。
驚異的な筋力と堅牢な鱗を持つ。
驚異レベル 50
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『神の眼【アイズ】』を使用してステータスを確認してみたが…。
おかしい、というか突っ込みどころが満載過ぎる!
筋力は俺より高いが、差があり過ぎるというわけでもない。
しかもそれ以外のステータスは軒並み俺より低い…。
極め付けは驚異レベル50って何だ!?
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驚異レベル
1〜29:目を瞑っていても勝てます。はっきり言って雑魚。
30〜49:雑魚です。でも、油断は禁物。
50〜69:ちょっと気合を入れましょう。
70〜89:仲間との連携を意識しましょう。
90〜99:仲間と一緒に死力を尽くしましょう。一瞬の油断が死に直結します。
100:出来れば逃げた方が無難です。死にたいなら止めませんよ?
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これ書いたの絶対メタトロンだろ…。
緊張感が無さ過ぎる…。
とりあえず、驚異レベルとしては俺一人でも大丈夫そうなので、怨嗟を含む面白い死に際の声を発していた人物を探す。
居た。
が、場所が悪すぎる…。
竜種の目の前、しかも相手は前足を振り上げている。
間に合うか?
魔力操作を全開にして蹴り込み声の主の前に回り込む。
同時にハルバードを斜めに構え、振り下ろされる前足を去なす。
腕が痺れるような感覚はあるが、無事に否せたようだ。
何にせよ、こいつが暴れてる状況ではゆっくり話もできない。
メタトロンからは多用禁止と言われているが、仕方ないだろう。
「『世界の扉【ワールド・ゲート】、系外利用。『失われた箱庭【ロスト・ガーデン】』起動!」
〈神技の発動を確認しました。詩篇世界の時間を神域での経過時間30分間停止します。〉
〈神技発動者ジークフリード・ランベルト及び詩篇登場人物ソニア・メルルを除く全ての個体の時間を強制停止します。〉
〈停止に成功しました。停止時間は残り29分です。〉
時間停止を確認してから、後ろを振り返る。
「力が欲しいかい?」
さて、では始めようか。
今回も短めです。
主人はステータスもスキルも基本チートです。
一応初めての世界のため調整が上手くいってないということでお願いします。