し
ーーーーピッ
ピッ
ピッ
聞いたことのない電子音。
嗅いだことのない、薬品のような匂い。
少しはなれた所から誰かの話し声がする。
声の主に声をかけようとした。
でも、声が出ない。
声を出したことがないみたいに、喉が動かない。
体を動かそうとした。でも、動く気配もなかった。
せめて指先だけなら、と、動かそうとした。
でも、何一つ動く気配はなかったーー
ーー「被験体M-17、検証終了」
美景の近くで声がした。
「盲目データの採取を始める。」
データの採取…?
頭に付いているヘッドフォンのような機械から音が聞こえ始めた。
『美景?どうしたの?具合でも悪いの?』
お母さん!?近くにいるの!?私、声が出なくて…助けて!!!!
「データの位置を確認」
ーーチャプン
「摘出完了」
何かが水の中に落ちたような音がした。
『美景?どうしたの?具合でも悪いの?』
女性の声がする。なぜか、私の名前を知っている。
「近親データの採取完了。」
『美景!?さっきは大丈夫だった?』
晴美?大丈夫じゃないの!声が出ないし体も動かないの!そこにいるなら助けて!
「データの位置を確認」
ーーチャプン
「摘出完了」
『美景!?さっきは大丈夫だった?』
女の子の声がする。誰だろう。
「友人データの採取完了。」
『おい!どうしたんだ!?』
悠真くんの…声がする…おネがいたスけて…
ーーチャプン
「摘出完了」
ーーチャプン
「摘出完了」
ーーチャプン
「摘出完了」
ーーチャプン
「摘出完了」
「盲目データの採取、すべて完了しました」
「採取部位のみ残して、残りはすべて処分しておけ」
薄れゆく意識の中、聞こえた………
ピーーーー
機械音が、無機質な部屋に響く。
機械の横に立っていた男が、音の原因の機器達をベッドの上に横たわっている“もの”から外していく。
もう一人の男が声をかけた。
「そこの処理が終わったら、次は五体満足の被験体を持ってこい」ーーーー
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ふとした時に
「今、自分が聞いている音は本当に現実なんだろうか」
と考えることがあります。
その感覚を基にした作品です。
あなたが今聞いている音は、本当に"現実"なのでしょうか。




