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閑話01

私はマーツ城の一室、来賓室で同僚を待っていた。

無駄に豪華な装飾が目に入るたびに、肩が凝る。

目を瞑りながら時が過ぎるのを待っていた。



「失礼します、暮羽凛様」

ふと、声がする。

私は片目を開けてそちらを向いた。

メイドが給仕に来ていた。


「お好みはありますでしょうか?」


「紅茶をストレートで頼む」


「承知いたしました」

無駄のない動きで紅茶をカップに注ぐ。


「どうぞごゆっくりお過ごしください」

丁寧な礼とともに、部屋から出ていった。



「…うまいな」

シンプルな白いカップだったのはありがたかった。


――


「遅れてごめんなさい、凛」

二杯目を頼もうかというところで、部屋に1人の女性が入ってくる。


「いや大丈夫だ、フラン」

彼女はフラン・フォウヴァー。

現英雄、白夜の継承者の1人であり、かのルアナ・アーヴァントの弟子の1人でもある。

現在は冒険の傍ら、教卓に立っているらしい。


「それで、今日は何の用事なんだ?」

本題へと切り込む。



「凛は死んだ人が生き返ると思う?」



「机上の空論だな」

切り捨てるように答える。


「そうよね…私もそう思う」

フランも同様の意見だった。


「じゃあ何でそんなこと聞いてきたんだ?」


「先日とある貴族の家が襲撃に遭ったの。その時の襲撃者が纏っていたローブの切れ端がこれ」

フランは私に布切れを渡してくる。


「一部?」


「襲撃者は自ら自爆。辺りを巻き込みながら散っていったわ」



「その時にそいつは『フエウ・ディーア万歳!』って言っていたそうよ」


「フエウ・ディーアだとっ!?」

フエウ・ディーアといえば死者の復活を目標にする団体だ。

しかし、遥か昔、黎明の開拓者が団体を打ち壊して以来動きはなかったはず…


私は渡された布切れを見る。


そこには文字の一部がかろうじて見えた。


「…復活が本当なら、まずいことになるぞ?」


「わかってる。だからこの情報は公にはしないわ」


疲れた様子だった。


「大変だな」


「ええ、本当に」


私とフランは互いに天を仰いでしまった。


――


「で、話題を変えてもいいか?」

私は少し暗い空気を変えようと違う話を振ろうとする。


「もちろん」


「ルアナ・アーヴァントは今、どこで、何をしているんだ?」

昨日会った少女、ルアナ。

彼女から受け取った違和感を確かめなければ。


「師匠?師匠なら所長室にいるわ。でも…」


「でも?」


「ここ数年会っていないの」

数年も?

居場所はわかるのに?


「どうしてだ?」

私はフランに聞く。

そしたら意外な答えが返ってきた。



「ずぅっと、体調が悪いんだって。だから、私どころかそれ以外の人すらも師匠とは会ってないわ」

フランは少し寂しそうな雰囲気だった。


数年も体調が悪い?

あの旧雄と言われる存在が…


あの時のルアナは元気の塊だった。


「どうしてそんなこと聞くの?今まで興味なかったでしょ」


「昨日行った居酒屋でルアナと名乗る少女に会ってな。だけど、私の思い違いだったらしい」

ここまで否定要素が重なったんだ。

フランに希望を持たせてはいけない。


「…なら、所長室にいってみる?」

しかし、私が思ったよりもフランは乗り気だったらしい。

とんでもないことを言い出した。


ならば、敵の本拠地に攻め入るか。


「賛成だ」

私は呼んだだけのメイドを下げて、所長室に向かった。


――


「師匠!いますかー?」

フランは扉をノックする。

が、中から返事は来ない。


「誰もいないんじゃないか?」


「いや、そんなはず 」

するとその時だった。


「いかがなさいましたか?」

気配もなく後ろから声が聞こえた。


鈴のような声だった。


すぐさま後ろを振り返るとそこにはメイドが立っていた。


「スズさん、こんにちは」

フランは女性に軽く挨拶をする。

彼女はスズと言うらしい。


「こんにちは、フラン様。お連れの方は?」

スズもフランに軽く挨拶をすると、私にも意識を向けた。


「初めまして、暮羽凛という。フランの同僚だ」

私も軽く挨拶をする。


「こちらこそ初めまして。スズと申します。ところで暮羽というのは、黎明の開拓者の1人の…?」


「ああ、そうだ。よくわかったな」

久しぶりに先祖の名前が出てきてびっくりした。


「たびたび、ルアナが自慢していましたから」

なるほど、ルアナ・アーヴァント。

一応感謝でもしておこう。


「スズさん、師匠は?」

フランは脱線した話を戻すべく、本題に触れた。


「残念ながら、今日も体調が優れなくて…」

スズは申し訳なさそうにいう。


「少し会うことは…?」

フランも引き下がらずに答える。


「…申し訳ありません」

スズも一歩も引く気はないらしい。

そんな会話の傍ら、私は魔力探知を行う。

誰にも悟られないよう、静かにだ。


…部屋の奥に確かに誰かがいる。

ルアナ・アーヴァントが寝込んでいるのは本当らしい。


「フラン、今日は諦めよう」

だが、少しの違和感を感じた私はここを離れるべく、フランを宥める。


「…わかったわ」

フランも会えないと認めたのか、引き下がってくれた。


「今日はありがとう、スズさん。ルアナによろしく言っといてくれ」


「はい。またのお越しをお待ちしております」


私は一刻も早くこの場を離れるために、簡単に挨拶を交わす。

そして、フランの手を引きながら早歩きで、城内を通っていった。


「どっ、どうしたの、凛?」

フランは状況を飲み込めずに慌てる。


「さっきの精霊だろ?」

まずは前提の確認だけしておく。


「ええ、この城の精霊よ」

ふっ、当たりだ。


「フラン、フォルエルングの最高のカフェを教えてくれ!できれば個室のな!」

私は歩きから小走りへとペースを早める。


「カフェ?てっ、ちょっと、落ち着きなさいよー!」

私はそんなフランを他所目に敵の支配地から抜け出していった。

日頃より「隠居のすすめ!?」をご愛読いただき、誠にありがとうございます。


序章はここで一区切りとなり、次回からは第一章が始まります。

物語もより深く、そしてより長く… なっていきます。執筆編集も精一杯頑張ります。

これからもルアナたちの物語をよろしくお願いいたします。

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