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33話

「……」


「おーきーて!マスター!」


二つの振動に体を揺すられるような感覚で目が覚める。


「おはよう、凛風、桜」


「……」


「おはよ、マスター!」


俺のテイムした2人。

キョンシーのユニークモンスター、凛風。

フェアリー、桜。


「昨日は夜中まではしゃぎすぎてたのよ!あたしも体で擦ってその、しろなんて……」


桜が顔を真っ赤にしているのは面白いが、気付いたろうか?そう、凛風と桜を同時に召喚できている事だ。


俺のカードを見る。


ココノエ ハルキ

★1

刀術3

テイマー3(キョンシー・フェアリー)

火魔法2


連日の先頭で、ついにテイマーが3になったのだ。

これで俺は同時に2人まで召喚ができるし、契約枠も1増えた。

契約枠についてはまたすぐにとはならないだろうが、それはそれとして重要なのがテイマーの行える従者強化である。


「へ?そんなに見つめて……もしかして昨日のであたし、マスターをメロメロにしちゃった!?」


「凛風は今日も可愛いなあ」


「ちょっと!?あたし!!!!」


桜をからかって遊びながら、彼女を知りたいと念じる。

頭に浮かぶのは彼女の名前。装備。スキル増設。進化。


モンスターに武器を持たせる事もできる。これはいずれやりたいが……しかしここまではテイマーでも出来る事だ。

スキル増設と進化。これらが大事な要素。


「とはいえ、スキル増設なんて簡単にできないよな」


スキル増設は2枠までテイムしたモンスターにスキルを生やす。モンスターは生まれつきの能力で戦っており、通常スキルを持たないためこれはかなりのアドバンテージとなる。


…………スクロールを消費してランダムにスキルを手に入れるという形式でなければ。


「普通スクロールがあればサモナーだろうが自分で使うんだよな……」


「えー!私も強くなりたい!」


「……」


凛風まで頷いている。

強くなりたいのはみんな同じかあ……そりゃそうだ。


「でもほら、進化はできるから。しばらくは我慢して。そもそもスクロールなんていつ手に入るのか」


「む、いいわ!ちゃんと約束を守ってくれるなんて、あなたは……抱腹絶倒のマスターね!」


「お前意味分かってないだろ」


「わ、分かるし!めっちゃカッコいいって意味!」


「桜は可愛いなあ」


「えへへ、そう?」


一方進化である。大抵は1回の進化で★が1ずつ上がるそう。

フェアリーである桜にも進化先が3種類ほど見えているが、果たしてどれがいいやら。

この辺りはツェルニ先生に聞くために、桜には我慢してもらっている。


★1から★2に進化させる素材は、★1の素材や魔石が大体20ほど。★2の素材や魔石が5個ほどだ。

幸い「河童の魔石」とかではなく、「水属性の魔石」と言ったように属性で素材を指定されているため、探せば★2進化はすぐだ。


「じゃあ2人とも戻すね」


「……」


「またね!マスター」


2人を戻してシャワーを浴び、荷造りをする。

そう……今日はオオサカを出る日だ。


「寂しくなるニャねえ」


「私も1ヶ月以上見てきたからね、ちょっと寂しいかも」


クロさん、そしてヨモギさんがそれぞれチェックアウトの時に声をかけてくれた。

金の招き猫亭……すごく良かったな。高級宿というわけではないが、立地もいいし部屋も悪くない。ご飯も美味しい。屋上の花火観覧サービスなんて最高だった。


「そう言ってくれるととっても嬉しいよ!……夏だけじゃなくて、オオサカは年中活気があるからまた来てね!」


「ニャニャ、ご飯を美味しいと言ってくれる子は伸びるニャ。これからも元気に強くなるニャよ?」


ヨモギさんとクロさんたちが笑顔で送り出してくれる。クロさんはお弁当までサービスで作ってくれた。

客商売と言えばそれまでだけど、オオサカの生活でこの2人と少し仲良くなれた気がして嬉しくなった。


「ありがとうございます!また来ますから!」


手を振ってオオサカの馬車乗り場に向かう。

オオサカの街は祭りが終わり、すっかり元の平穏を取り戻した……という事は全くなく。

恐ろしいほどの人数が地元に帰って行くのだ。当然その移動量も凄まじく、祭りの片付けも全て終わっている訳ではない。


「なんというか……すぐに祭りの雰囲気が消えてた日本より、こっちのが好きかも?」


「なにが好きなん?」


「おわっ!?ナズナ!?」


「油断大敵!へへっ、おはよハルキ」


ナズナに後ろから奇襲されて、思わず変な声が出る。

彼女には今日帰る事を伝えてある。馬車の時間と場所を聞いて、そこで集合のつもりだったが……?


「どうしたの?こんな道中で」


「そりゃ折角やで金の招き猫亭から集合場所まで歩いてこかと思ってな。したら散歩できるかも思て……」


「金の招き猫亭集合でも良かったのに」


「な、なんか恥ずかしくなってしもたんや……そ、その祭りの時は朝帰りやったし……」


「う……そこは申し訳ないと言いますか……」


花火の後だが、ナズナの酔いは中々醒めなかったし、人混みはすごいしで結局2人で金の招き猫亭に泊まった。

結果朝帰りという訳だ。


「う、ウチも嫌やった訳やないんよ?ただな、ちょっと思い出すと熱くなってまうって言うか」


「あ、あはは……また来年の夏祭りも会おうね」


「……それまでにもどっかで会いたいねんな」


「うん、それもいいかも」


ちょっとゆっくり話しながら歩いていたからか。馬車の近くに着く頃には出発の30分前になってしまった。流石にそろそろ声はかけたほうがいい。


「……じゃあ、ナズナ。お互い強くなってまた会おうね」


「おう!せや……これ、プレゼント。夏祭りの時に買ったんや」


ナズナが出してくれたのは……腕輪?


「これやったら狩りでも邪魔にならんし、金属製やから早々簡単には壊れん!と思う。まあ壊れたらしゃあないねんけど」


「いいの?ありがとう!こういうのはじめてだから嬉しいよ」


しまったな、俺も何か用意すれば良かった。オウミ領でゆっくり探してみよう。


「ええんや!また会えたらそれで……じゃあ付けるから、ハルキこっち寄ってな」


「うん、じゃあ右手……を……」


腕輪を付けると同時、唇に柔らかい感触が。


「またな!」


呆然としている内に、ナズナの後ろ姿が小さくなって行く。

まさかこんな人だらけの所でキスさ!るなんて……。


「女の子って……強い」


馬車で帰る間も、しばらくの間悶々とする羽目になるのだった。

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