32話
「おはよう、ナズナ」
「おはよハルキ!準備万端みたいやな」
オオサカ夏祭り3日目。つまり最終日。
今日はナズナと一緒に街を見て回る日だ。凛風と桜には申し訳ないが戻ってもらっている。
事前にクロさんとヨモギさんに朝ご飯はいらないと伝えてあるから、お腹はもうペコペコだ。
「うん。ご飯も食べてないし、買い食いも楽しみだな……お買い物もしたいし」
「なんか買いたいものあるん?案内したるから、気軽に言ってや」
手を繋いで2人で金の招き猫亭を出る。
人混みが凄まじく、下手したら分断されて流されるからだからなのだが受付のヨモギさんにからかわれて、2人して若干照れてしまった。
「ほ、ほら行くで!まずは腹ごしらいでええ?」
「大丈夫」
2人で歩いて行く。屋台と言っても本当になんでもあるな……前世で見たようなB級グルメの屋台、魔物の素材でできた家具?道具?を売っている屋台。後でナズナに聞かないとだけど、鉱石を売ってる屋台も探さないとだな。
「これとかどや?」
「妖精チャーハン……え?」
「店員さんが妖精のハーフなんやな」
「良かった……本当に……」
朝に食べるものなのかよく分からないが、ナズナは結構面白がっているみたいで2人で分けて食べた。
「あとは歩きながら良さげなお店あったら寄ろか」
「うん。……あ、そうそう、鉱石の屋台とかあったら見たいな」
「鉱石?ん、ええで」
鉱石の屋台を見つけ、ちょくちょく買い物をしていきながら街を回って行く。
「そういやおとといオークションやったやろ?スクロールあったやん?1つはどっかのハンターが、もう1つは商人の人が落札したんやってな」
「へえ……」
ハンターは間違いなく自分に使うだろう。商人は……半々かな。
自分に使ってハンターになるか、息子なり後継者なりのスキルを増やして強くするかだろう。
「ウチらももっともっとスキル増やさなあかんな、3つでも騎士はやってけるけど、ウチはもっと強くなりたいんや!」
「それは俺も……だね」
学校のみんなもだし、ナズナもそう。誰も彼もが向上心に満ちた才能あるものばかりで、自然と俺もやる気になっていく。
これで今も村にいたら、俺天狗になってたかもしれないな……★2を倒せるとかで。
「ハルキはなんか欲しいスキルあるん?ウチは回避術だったり、軽業あたりが欲しいんやけどな……弱みを潰していきたいんや」
「俺は……どうだろうな……」
俺にはチート、転生者スキルがある。
サモナーを取った時は「微妙」と感じだが、今思えば成長スキルと併せて破格の効果かもしれないな。基本的に自由に取れないスキルを取れる……ユニークモンスターを倒す以外の条件が分からないが、何を取れば良いんだろう。
「逆にさ、ナズナは俺がどんなスキルを持ったら強いと思う?」
「うーん、せやなあ……ハルキのスキルって言ったら刀術3、サモナー2、火魔法2やろ?」
「うん。感覚的にもうすぐどれも3になりそうな……気もするんだけど」
「そればかりはウチにも分からんしなあ。今のハルキってなんでもできるんよな。それは確かに強いけど、でもそれっていつまでも通用するかは分からんやん」
「うーん、確かに」
「前衛・中衛・後衛のどれになりたいかを考えてみるんはどうや?サモナーのスキルがあるし、ハルキがどれ選んでもモンスターの編成でカバーできそうやな」
「ありがとう!……まあいつ新しいスキルが手に入るかだけど」
「あはは、ユニークが出てもな……後は狩場の奥でたまに手に入るらしいんやろ?後は修行でレベル1を生やす……後なんや?」
「大会とかオークションとかじゃないかな、それこそ」
「せやな……」
雑談一つとっても物騒になってしまうが、俺もナズナも楽しく祭りを回ってる……と思う。ゲームとかアニメとかないし、娯楽もな……あるはあるけどスポーツは大体狩りに置き換わってるし。
夕方までぶらぶらと買い食いをしたり、何の効果もない雑貨品を買い漁ったりと本当に平和な日々を過ごす。
射的なんかは面白かった。砲術スキル持ちのナズナは上級者向けの所に回されていたが、ナズナの砲術スキルはおもちゃの銃に乗らなかったのだ。
「あんのクソ店主!顔覚えたかんな!」
「どうどう!落ち着いて落ち着いて」
「フーッ!!!!」
半分ネタだろうが怒ったナズナを諌めながらソフトクリームを2人分買う。
1個をナズナに渡しながら、手を引いて金の招き猫亭の方へ誘導する。
「そろそろ招き猫亭に戻る?」
「あー、せやなあ。あそこで晩ご飯食べれるやろし、テイクアウトするなりして待とか」
「うん」
招き猫亭に戻ろうとして、大忙しの食堂を見て、諦めて周りでテイクアウトの食材を買う。
ヨモギさんには事前に頼んでおいたので、2階の梯子を登って上に上がる。
「おお……!すごい!」
「?」
ナズナはここに住んでるから分からないのかもしれないが、俺は花火の前だというのに感動していた。
まさに和風ファンタジーの世界観で、目の前に綺麗な街の風景が、行き交う人々の風景が、色とりどりの屋台の風景が見えるのだ。
「ほら言うじゃんナズナ、俺と煙は高い所が好きって」
「それでええんかい!」
ふざけ合って笑う。それももうすぐおしまいか……。
「ねえナズナ、来年もまた会いに行きたいな」
「……期待してええん?じゃあウチも、どっかでハルキに会いに行くわ」
「ふふ、約束ね」
「せやな、約束!嘘ついたらアカンで!」
それを約束してしばらく2人で黙々とご飯をつまんでいた。
「おっ、見てみ見てみ!ハルキあそこ!」
「あ!ほんとだ!」
花火が上がって行く。ほとんど前世の花火と変わらないが、モンスターの形をした花火が上がったり、一部の花火は夜空で固まったままになったかと思うとさらにもう一度上がり、別の色になって散って行く。
「ここの花火職人、花火師8を持っとる人がおるんや。だから周りと差ができてまうやつがそれ」
「へー……」
周りと差か……でも俺にもナズナにも当てはまらないしな。
「あ、せやせやハルキ。膝貸してもろてええ?」
「え?いいけど」
膝にナズナの頭が載せられる。
彼女は楽しそうにこちらを見て、花火を見る。
「ハルキもいて、花火も見れて、今年は今までで一番楽しかったわ」
「俺もこんな祭り初めてで、楽しかっよ。オオサカっていい所なんだね」
「せやろ?やからさあ、いつか……しょに……」
「ナズナ?………寝てる」
というか今気付いたが酒臭くないか?お酒飲んでる?
アルコールに規制なんて皆無な世界だからいいんだけど、これどうしようなあ……。
眠るナズナの満足げな表情を確かめてから、俺はひとまず、花火が終わるまで屋上に居た。




