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スツーカ戦記  作者: 空仰
序章
2/2

ここはどこだ?

投稿後数日でそれなりの方に見ていただけ、感想までいただけて正直驚いています。そこそこ話が進むまで見向きもされないだろうと考えていたのですが……

やっぱり、ルーデル閣下は偉大ですね。逸話に事欠きませんし、知名度も高いもの。ルーデル閣下の創作話が少ないのは、多分ルーデル閣下が生きてきた道が既にひとつのお話となってるからでしょうね。わざわざルーデル閣下を題材に話書かなくても、もう彼の人生たどるだけで暫くは暇しませんから。

しかし! 私はルーデル閣下を書きますよ! 何故って? それは、ルーデル閣下にまだまだ活躍してもらうためですよ(悪い顔

お気づきのかたもいるかもしれませんが、このお話の主人公はどちらかと言うとニールマンです。まぁ、ほぼ一緒に行動するのでどちらが主人公でも変わりませんが。

では、今回も短めですが続きをどうぞ!

 ふわふわとした、まるで夢を見ているかのような感覚の中、ニールマンは意識を取り戻した。



――うぐ……あ、れ……?



 わけもわからぬままその身を起こそうとして、ニールマンは異常に気がつく。起こそうにも、身体のどこも反応を返してくれないばかりか、声すら出ない。視線だけならどうやら動かせるが、自分の体が今どういった状態なのか把握することは出来なかった。素早く周囲を見回した結果、どうやら周囲にあるのは堅牢な石畳であるらしい、ということだけは確認できた。



――これは……まずいかも、しれないな……



 気を失う前の最後の感覚。突き上げるかのようなあの衝撃は、おそらく墜落したためのものだろう。ルーデルが乱気流ごときで失速、墜落するようなヘマは起こすはずもないとは思うが、今はそれどころではない。

 再び、身体のどこでもいいから動かそうとして、失敗する。こうなると、脊髄を損傷して全身麻痺を起こしている可能性も……

 ニールマンがどこか他人事のようにそう考えていると、ふと何処からか声が聞こえてきた。



「……誰?」



 耳は聞こえるのか、などと割りとどうでもいいことに驚愕を覚えながら、ニールマンは必死に声を出そうと呼びかけた。



――誰か居るのか? すまない、体が動かないんだ。私が今どんな状態にあるか、教えてもらえないか?

「……あなたは、何処にいるの?」



 伝わった! そのことに疑問を挟む余地もなく、ニールマンは一気にまくし立てた。



――見ないのか? 声の聞こえる範囲だ、少し動けば見えるだろう。そうだ、動くついでに周囲に誰かいないかも確認してくれないか? 私の仲間も一緒にこの辺りにいるはずなんだ。

「…………」



 しかし、ニールマンの呼びかけに声は一向に答えない。もしや、たち去ってしまったか? そんなふうに思ってしまい始めた時、漸く返答が聞こえてきた。



「ごめんなさい。私は、動くことができないの。それに、あなたも、あなたのお仲間も、本当に何処にいるかわからないの。一体、あなたは……」



 そう言って言葉を濁す声に対し、ニールマンは僅かな失望を覚えた。いや、声にと言うより、今の現状にといったほうが正しいか。ここが何処なのかも、ましてや今どんな状態にあるのかも分からず、自身は体を動かすことさえできない。この状況で未だに希望を持てるのは、それこそルーデルぐらいなものだろう。

 ニールマンが僅かな失望を抱いていると、声がためらうように話しかけてきた。



「あの、あなたは……何処の国の、なんというお方なんですか……?」

――おっと、これは失礼。私はドイツ帝国第2地上攻撃航空団本部小隊所属、エルンスト=アウグスト・ニールマン。階級は大尉だ。

「どい、つ……?」

――ん? どうかしたか?

「い、いえ……エルンスト、あす……あう……?」

――ニールマンでいい。

「では、ニールマン様。私はラムド共和国第三皇女、名を――」



 その後、声がなんと言ったのか。ニールマンには、最後まで聞き取る時間は与えられなかった。

 急激に視界はぼやけ、声は何処か遠くから響くように聞こえてくる。夢の様なふわふわした感覚は弾け、別の強烈な感覚が割り込んでくる。

 先程まで聞こえてきていたものとは別の、馴染み深い声が聞こえ始めるに至って、ニールマンは漸く自覚する。

 あぁ、今までのは夢だったのか、と。

 そして、声の――彼女の名は、なんというのだったのだろうか、と。

 一つの世界が弾け、ニールマンの意識は現実へと浮上する。






◇   ◇   ◇   ◇   ◇






「ニールマン、おいニールマン! しっかりしろ、まだ生きているか?」

「生きた心地はしませんけどね、なんとか」

「嫌味を言っている暇はないぞ、すぐにここから移動だ」

「大佐には他人をいたわるという考えはないのですか……」

「何を言う、五体満足の健全者をどういたわれと言うんだ」



 ニールマンが目を覚ますと、視界に広がっていたのは阻むものなど何もない大空……などではなく、ルーデルの顔面だった。

 普段からあまり表情をかえない顔を、やはり一切変えずにニールマンの無事を確認すると、徐ろに立ち上がって移動を促す。

 それを受けたニールマンは、愚痴をこぼしつつも素早く体を起こして周囲を確認した。

 幸い、先ほどのように体が動かないということもなかったのだが……



「大佐、何処ですか? ここ」

「知らん」



 確かソ連の包囲網を抜けて、バイエルン州のアメリカ軍に投降しようとし、ソ連軍に見つからないよう山岳地帯を飛んでいたはずだ。ニールマン達が今いる場所は明らかに平原であったし、近くの林には見慣れない植物まで生えている。

 近くには民家も人影も見えなかったが、果たしてここが自分の知るドイツ帝国の中なのか、とニールマンは疑問を抱かずに入られなかった。



「ここが何処だかわからないが、とりあえず墜落したスツーカのところまで行くぞ。通信機さえ無事なら、他のものの安否も分かるかもしれん」

「そうですね。おっとっと……」



 多少ふらつく身体を足を踏ん張ることで支えつつ、ルーデルの後に従って歩き始めた。

 どちらを見てもやはり見覚えのある風景はなく、広がるのはまるで異国の地。心なしか、上空を舞う鳥さえも知らないものに思えてしまう。

 そんな風に、見かけぬ風景を物珍しそうに眺めていたニールマンは、ふと疑問に思ったことを前を行くルーデルに問いかけてみた。



「そういえば大佐、私達が墜落したということは理解できたんですが、何故無事なのでしょうか? ものすごい衝撃が合ったので、てっきり死んだものかと……」

「それはだな、ニールマン。私の操縦技能とか、機体の性能とかそんなものは関係なく、一重に幸運の賜だよ」

「幸運、ですか?」

「私も数瞬気を失っていたようでな、気がついたら機体は墜落寸前だった。あわてて操縦桿を握り直したが、錐揉みしながら落ちる機体を立て直す方法なぞ、私も知らん。流石にここまでか、そう思った直後ほんの一瞬だけ機体が安定した。必死でその状態を保とうとし、なんとかランディングギアで接地することができたんだ」



 ほんの一瞬の機体の安定を、腕一つで保ち軟着陸までこぎつけたルーデルの腕は、最早語るべくもないだろう。

 ニールマンもそれに同意で、ルーデルの凄さを再確認した。だが、ルーデルの話はそれで終わりではなかった。



「だが、着陸した正面には雑木林が広がっており、コースの変更も再離陸も間に合わなかった。結局のところ、絶体絶命には変わりなかった」

「しかし大佐、我々はこの通り、五体満足で無事に居ますが……」

「そのことだ、ニールマン。最早雑木林に突っ込むしかないと諦めたところで、突然ランディングギアが片方折れ、勢いそのままに機体がひっくり返った。その瞬間、風防が外れ、我々は機体とは逆の進行方向(・・・・・・・・・・)に、機体とほぼ同速(・ ・・・・・・・)で射出(・・・)されたんだ」



 その話を聞いて、ニールマンはまずルーデルの気を疑った。

 そんな都合のいい話(・・・・・・)がありえるわけがないと。

 しかし、ルーデルの表情は真剣そのもので、このようなどうでもいい冗談をいう男でもない。

 それに、もし――もし、本当なのであれば、確かに無傷なのも納得の行く話だ。



「なんだか、夢の様な偶然が重なりあっていますね」

「あぁ、今でもいささか信じがたい現象だった」

「大佐の愛機が、最後に大佐を助けるために身を挺してくれたのかもしれませんね」



 冗談めかすようにそう話したニールマンは、その数時間後頭を抱えることになる。

 あの時、あんなことを言っていなければ、あるいは……と。



 ルーデルの愛機、Ju87G-2が墜落したと思わしき場所には残骸は存在せず、ただなぎ倒され広げられた空間が広がっていた。

 いや、破壊の跡だけではない。その中央にボロボロになって横たわる少女の姿があった。

 ニールマンが慌てて少女に駆け寄って抱き起こすと、わずかに身じろぎをした後に薄く目を開け、ルーデルとニールマンを交互に見た後、儚げに笑ってこういったのだった。



Dann() ist() es() gut.()

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