エピローグ
エピローグ
妊娠に気づいたのは肇さんの方が先だった。
「遅れている気がするから調べてもらおう。」
そう言ってお腹をなでられ笑い飛ばした。絶対あり得ないって思ったからすぐに検査薬を使った、そのはずなのに。疑いもしなかった目の前でピンクの+の印がくっきりと浮き出て来て、呆然としている私に彼が
「おめでとう。」
を言う。
取り乱しているのは私だけ。
肇さんが報告したら、父さんは頷きながら彼の肩を叩き、母さんは赤飯の用意を始めた。見合いから1週間後には入籍していたけれど、とりあえず挙式までは自宅で暮らすつもりだったから、心の用意ができていなかった。何もかも。まごつく私を尻目に肇さんは図々しくも私の部屋で暮らすようになってしまって
「離れているのは嫌だ。」
と駄々をこね、毎朝あの騒々しいちゃぶ台で一緒にご飯を食べ、夜中にこっそりやって来てはむくみ始めた足を揉んでくれた。
「もうすぐこの子に君を盗られると思うと、少ししゃくだな。」
そんな事を呟きながら、寝ている私のまだ平らなお腹を擦ってる。
夜中にふとした拍子で目が覚めて、左手に絡んでいる彼の指を感じものすごく安心する。銀色の指輪が二つ並んでいいて、彼は相変わらず時々だけど寝言を言う。
「むにゃむにゃ。」
もうすぐ転勤で忙しくなる。お式の用意だって大変だ。それなのに肇さんは平気な顔で笑っている。
「愛してる。」
まるでそれが全てかのように。私はその腕の中で丸くなる。
あのうるさいガキどもは私が妊娠したと分かったとたん豹変し、妙にかいがいしく家事をするようになった。
こうやって幸せが増えていく。
披露宴の出席の返事もほとんど集まり、沢山の祝辞が書き込まれていた。その中の一枚には、彼女も同席させたいから席を作れと書かれている一言も有り。私たちはそれを笑った。
「やっぱりあいつは尻に敷かれているんだ。」
そう言う肇さんの表情にしこりは無かった。
私は独りじゃなかった。取り残されたと思ったのは、自分しか見えてなかった所為だって今なら分る。独りが良い、なんて、嘘だ。
Left Alone Fin
今までお付き合い頂いてありがとうございます。
やっぱり ハッピーエンド が一番 ♪