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くっころの騎士団と枢軸の魔術師  作者: Tand0
Saga 6: やせいの王女さまが現れた!
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エクスカリバー(かがわ(後編②

 闘技場。


 道化と化したカンニバル・ラウンド。

 カンニバルは優勝者であることの貫禄もなにもなく、ウィンター将軍を言葉で攻める程度のことしかできることはなかった。


「よしんばその魔術師と妖狐がいたとしてなんだというのだ。こちらには秘策がある! 伝説の聖剣エクスカリバー! あれに掛かればいかに強大な敵であろうと……」


「まぁ、大丈夫だとは思うのだけれど」


 ここで始めてサクラが発言する。

 確か彼女、サクラ・サバッキーノはアーカンソーの公爵で召喚術師 (Summoner)系列の妖術を使うという。


「そうか。召喚術で幻獣を召喚してウィンター将軍をオーストロシアに帰そうというのか!? だがそれでも間に合いはしない!」


 ようやく事の真相に気づいたカンニバルは抜刀する。

 その刹那、カンニバルとサクラの間に割って入るカーラ軍団長。


「それ以上近寄って私の間合いに入るな。アーカンソーの貴人たるサクラ様に手をあげたとなると、アーカンソー王国とエクスカリバー王国の関係がまずいことになりますよ?」

「カンニバル卿。間に合いはしないのであれば震えた腕を剣に添えないことだ。行っても無駄なのであろう?」


 ウィンター将軍が不敵に笑う。


「その自信、どこから来る?」

「だってほら。もう戦闘は終わっているもの。聖剣エクスカリバーの使い手はわたくしのだんな様によってすでに倒されている」

「嘘だ!」


 サクラと妖狐はいわゆる召喚契約をしており、妖狐が見たものはサクラに見えている。エクスカリバー王国軍が既に真っ白でしこしこのうどんによって崩壊していることをサクラは知っているが、カンニバルにそれを知る手段はない。

 その隙に、サクラは呪文詠唱を行使した。それは召喚術師 (Summoner)の妖術。


「≪ほら、想像しなかった? わたくしの騎士団。女騎士達を助ける強い存在を。


――でも、わたくしではキットそんな強い存在にはなれない。


 だからわたくしは創造する。そんな強い存在を。


 悲哀(あい)幽鬼(ゆうき)鬼謀(きぼう)の名のもとに!

 今、わたくしはそんなチカラを召喚する。


 いでよ! グリフォン!≫」


 魔獣グリフォン。


 光が集まり、形をなす。

 それは鷹の顔と翼。ライオンの体を持つ偉業たる異形の魔物。

 巨大な身体に大きな黒い双翼の羽をもつ強大な存在。


 魔方陣が瞬時に中空に描かれると待っていたかのように即座に現れたソレは大きく吼えた。


「くぉぉーーーん」


 羽をはためかせる。

 それだけでカンニバルは再び闘技場のスミまで吹きとばされた。


「な、上位サモナーの妖術、サモンサーバントだと!」


 もっと弱い魔獣を想定していたカンニバルであったが、ことの外強大な敵の出現に恐れおののいた。


「く……。サクラが貴族として妖術を学んでいることは知っていたが、まさかこれほどとは」


 アーカンソーのヒメノ姫も驚きに目を見開く。

 サクラは妖狐との契約によって以前とは異なる強大なる魔力を得ているのだ。ヒメノ姫が知らないことも当然である。


「さぁいきましょう!」


 ウィンター将軍に手を差し伸べるサクラ。

 ウィンター将軍はさっくりとグリフォンに搭乗すると、サーと飛来していった。


「あれ? わたくしも乗っていくはずだったのに……」


 置いてけぼりを食らいボーゼンとするサクラ。


『今回助けたから、次は私たちを助けてくださいねー!』


 ヒメノ姫が大声でグリフォンに向かって叫ぶ。


『おうよ。征夷大将軍である我の名において誓おう。はいよー。シルバー!』


 ウィンター将軍はくるいと闘技場の周りを1回旋廻すると一路北に向かって旅立っていった。


「いや、だからあの娘(グリフォン)の名前はシルバーじゃないのだけれど」


 勝手にとんでいったウィンター将軍にサクラは毒づいた。

 実はサクラも魔術師のところに行ってついでにのんびりとしようと思っていたのだ。当てが外れてしまったために怒ったのは仕方がない話だろう。


 だが、アーカンソー王国が真に震撼する事態はこの後起こった。


「ウィンター将軍かっけー!」


 ヒメノ姫はつぶやく。


「え、あんなのが?」


 驚愕に目を見開くサクラ。

 自分の趣味も大概だと思ったが、その斜め上をいく人物を目の当たりにする。それが姉と呼ぶ人物であるならばなおさら驚く他ない。


「やっぱり嫁にいくならああいう強い行動力のある人の方が良くない?」


 ヒメノ姫は隣にいたオジ・サーマキーノに問いかけた。

 オジ・サーマキーノはたまったものではなかった。


「さすがに待ってください! ウィンター将軍にヒメノ姫が嫁がれるようなことになれば、この国は属国になってしまうのでは?」

「属国というか、アーカンソーが将軍を尻に引いて帝国そのものになるのは悪くはない話でしょう? なにしろ将軍に嫁を出した家系になる。大手を振って凱旋してくれるわよ」


 だいたい年齢がどうのこうとヒメノ姫を乗り気にさせないように喰い留めようとするオジ・サーマキーノ。

 だが、その熱はどうにも止められそうもない。


「そ、そこを、なんとか。ほら、サクラ様もなんとかー」

「たとえば国を一つ――。たとえばオーストロシアの降伏を条件にするのであれば、婚姻を認めますわ」

「やめて――」


 オジ・サーマキーノはヒメノ姫と同じ女性であるサクラに助けを求めたが逆に煽られてしまった。

 ぐぁー。と頭を抱え倒れるオジ・サーマキーノ。このままでは恋愛脳の女どもによって国が風前の灯となってしまう――


「ふ。風前の灯なのは帝国であろう。少なくとも嫁に来いとかいっていたのだから言質はとってあるはずだ」


 だからそこで姫。一発で決めてやるとかいって中指立てるのはおやめなさい。


「話*だけ*は聞くって、一回断っているでしょうがぁー」

「話*だけ*は伺うだけだから、まだ断ってはいないでしょう? オンナ心は移り気なのでね。そして加速する恋は止められないのよ。サクラ。君のところから使者は出せるかな?」

「それはもちろん」


「オーストロシア攻めの件に関して秘密にして、あげくに、うちのサクラに剣を向けたカンニバル卿には、ぜひ挙式出てもらうことにしましょうか」

「えぇ、涙を流して喜んでくれることでしょうよ。なんの涙かは知りませんが」


 オジ・サーマキーノはカンニバルが背負うであろう苦労に他人事ながら眉をひそめた。

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