23話 ナオエとコロシアム
このお話には、ストーリー、文章力、戦闘描写が欠如しています。
3年。
それだけの期間を費やした計画を潰す。受け入れがたいが、オーゼや仲間の命と比べれば計画自体を捨てても構わない。
元々俺の我がままで始めた計画だった。唯一申し訳なく思う事は、俺の計画に付き合ってくれていたシアや街の皆の努力すらも放棄する事だ。
「シア、すまないが、今までの計画全てを破棄する」
「そうなるじゃろうな。ワシは構わぬよ、ナオエと共に築いた街や仲間は楽しかったしのう。さて、ではワシはどうすれば良い?」
「ホロウ、シアを運ぶ事は出来そうか?」
「無い、問題。塞がれてる、街だけ」
つまり、俺達の街とケンタウロス族達の間に結界が張られているという事か。ホロウの移動を阻むほどの結界を張れるのは教皇率いる『グロリアス』、聖騎士団長率いる『ホーリーオーダー』のどちらかだろう。
計画を破棄した今、争いごとを避ける道は無くなった。クインと王国の連中はすぐに自分達がした事のツケを支払う事になる。
「シア、遠慮はいらない。勇者ごと全ての敵を殲滅しろ」
「ふむ……いいのじゃな?」
「構わん、殲滅が終わったらスリャとメリザンドへ周囲の索敵をさせろ。王国側の関係者がいるはずだ。一番偉そうなヤツだけ残して他は始末して構わない。オーゼと共にケンタウロス族を救出して来い」
最も平和的な方法を取れなくなった今、遠慮などという物は無い。変装セットを全て取り去ると、そのままコロシアム中央までシアとオーゼを抱えて飛んだ。
イキナリの乱入者にコロシアム内は騒然とするが、全て無視する。オーゼも怪訝な表情でこちらを窺うが、全てを説明している暇はない。
「ケンタウロス達が襲われた。シア、ホロウと一緒に助けに向かえ。俺がクインの相手をする。コイツを逃がすわけにはいかない」
「何だって!それは本当な」
「いけ、ホロウ」
オーゼが言い終わる前にホロウに指示を出し転送させる。勇者を相手に出来るシアを一刻も早く送らなければいけない事と、クインの前から全員を移動させる必要があったからだ。
さすがにオーゼを守りながらクインと戦うのは不利としか思えない。
「さて、お前にはいろいろ聞きたいことがある。素直に話せば良し、そうでないなら」
「アッハハハ!そうでないなら何?何?アンタ程度がワタクシに触れられるとでも思っているの?いくら強くてもあの程度の速さでワタクシに?冗談は休み休み言いなさいな!」
「……いつから王国と組んでいた?この作戦を考えたやつは?」
「ハン!聞きたければワタクシを捕まえれば良いじゃない?出来るものならね。ハハハ、無理よね。人間の速さなんて止まっているのと変わらないじゃない」
こちらを馬鹿にしきった声音に苛立ちが募る。前回は罠に嵌めたため直接話したことは無かったが、こんな性格だったのか。
……会わなくて正解だったな。当時だったら問答無用で殺していたかもしれない。まぁ、今も余り変わらないか。
「察しはつくがな。あの女と手を組んだという事は、俺対策のアイテムを持っているんだろう?それ以外にも色々と入れ知恵されてもいるだろうが、それら全てをひっくるめてこう言わせてもらうぞ」
「あら、頭の回転は悪くないのね?それで何を言いたいのかしら?」
「その程度で俺をどうにか出来ると本気で思っているのか?」
たっぷりと嫌味を乗せた声で言ってやると、ビキッと音を立てそうなほどに怒りを顕にするクイン。煽り耐性は無しか。
「た、たかが人間が随分と大きな口を叩くじゃない。どれだけ強い力も、魔力も当たらなければ意味が無いというのに。それに……これでもその程度と言えて?」
クインが手を振り上げると、そこへクインに似た一周りほど小さなプレデタービーが4体現れる。女王直属の護衛か。
それと同時にコロシアム全体に声が響き渡る。どうやら俺の正体をコロシアム中に宣伝し、即席の戦力を用意する気らしい。司会者まで抱き込んでたのか。
確かにその作戦は有効だ。観客席からもわらわらと腕に覚えのある奴等が降りてきている。それ以外の観客は罵倒の雨を降らせてきた。
彼らにとっては魔王の仇だろうしな、このくらいは仕方がない。それになによりこの作戦最大の利点は……。
「ここで会ったが百年目!いざ尋常に勝負しろ!勇者!」
コイツだ。
魔王軍幹部の1人、ドラグノア。俺への復讐を公言してはばからない魔王軍でもトップを争う実力者。有象無象の雑魚とは一線を画すその戦闘力は警戒に値する。
真紅の髪を腰まで伸ばし、その頭頂部からはドラゴンの角が1対伸びている。顔の造りは人間の女性に近いが、ドラゴンの眼に人間よりも大きく裂けた口、そこに並ぶ歯は全てが肉食獣のそれを思わせる牙となっている。背にもドラゴンの翼を持ち、その両手両足はドラゴンの鱗で覆われ、硬質の爪が伸びていた。
レッドドラゴンと人間のハーフ、その出自から半端者と蔑まれ力によって全てを覆した女だ。
「フフ、これだけじゃないわよ!始めなさい!」
クインの号令と同時にコロシアムを覆うように結界が張られた。これは……転移妨害か。まさか、王国側もここまで本気だったとは。さて、ここに来ているのは『グロリアス』か『ホーリーオーダー』のどちらなのやら。
「フフ、アンタの最大戦力の1つオルカ族のクソ女も来れなくなった今、もうアンタに勝ち目は無いわ!無様に命乞いをしなさいな!」
「クイン!、これはどういうことだ!人間をここまで引き込んだのか!?」
「黙りなさいな、ドラグノア。アタクシ達最大の敵を倒す事が、今は無き魔王様への忠誠心を示す事になるのよ。そのために手段なんて選んでいられないわ」
「そ、そうか?……そうだな。細かい事は後回し、まずは貴様を倒す!勇者!」
クインの心にも無い上辺だけの説得で落ちるドラグノアは、相変わらずの脳筋か。それにしても良くここまでの準備をしていたな。恐らく、俺がこの魔王決定戦を見に来る事は分かっていたんだろう。
まぁ、詳しい事情は今更どうでもいい。
「フフ、言葉も無い様ね?さあ、やっておしまい!」
シアの事を悪し様に言ったツケも支払わせよう。
黒い鎧を纏い、黒い棒と盾を出現させる。今まで抑えていた魔力を解放し、通常なら見えない程の速度で飛んでくるプレデタービー近衛兵4体を盾で叩き落し、そのまま魔力を放出する事で周囲に群がってくる雑魚共を吹き飛ばす。そのまま棒をドラグノアへ向けると手元のトリガーを引き、黒い閃光を放った。それはそのままドラグノアの腹を貫通し、その後ろにいた有象無象の多くを消滅させ、コロシアムの座席をものともせず貫き、結界それ自体を引き裂いた。
「1分待ツ、死にたくナいものは今すぐこコを離れろ」
声に魔力を込め、コロシアム所かこの街全体へと俺の声を届ける。それはある種の強制力を持ち、一定以上の強さを持たないものを全て遁走させた。無論、クインが逃げようとした場合はすぐに撃ち落す気だが。
ドラグノアは……ふむ、あれを喰らってもまだ息があるか。さすがだな。
「な、そんな、ここまで圧倒的だなんて。聞いていた話と全然違うじゃない」
「さて、そろソろ1分経つナ。どうスる?このマま降参すれば命だけは助かるカモしれなイぞ?」
「くっ、こうなれば」
翅を広げて飛び立とうとするクインの機先を制し、片方の翅を撃ち抜く。バランスを崩して倒れたクインへ近づくと、残る翅を引き千切った。
「あ、ああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!あ、アタクシの翅が!」
「うるサい。貴様には後で聞く事ガある。黙ってイろ」
そのまま尻尾の先端に生えている針を握りつぶし、逃げられないように両手両足を踏み潰しておく。両目を閉じて気配を探る事で、人間側の結界を張った者達を探り出し追跡型の閃光を放つ、一本の閃光が途中で41本に枝分かれし飛んでいく。
……ん?1本弾かれたな。こいつが教主か団長だろう。さすがに結界魔術の取り扱いに慣れている。
空間をその場所へ開くと、全ての力を出し尽くしたのか気絶している女がいた。
教皇か。
年のころ30代半ばという、教皇としては異例の若さを持つ才女だ。魔力の扱いだけでなく、政治的な手腕にも優れ、行動力もある。まぁ、今回はその行動力のせいでこんなことになったわけだが。
とりあえずこちら側に引き込み空間を閉じておく。このまま広げていても魔力を無駄にするだけだ。
「さテ、1分過ぎたナ。この場にイる全員が戦闘ノ意思があるという事で良いのカね?」
「ま、まってくれ。腰が抜けて立てないんだ。俺たちは逆らう気なんかもうこれっぽっちものこっちゃいねぇ!」
「クインに乗せられタだけの者達まで殺そウとは思わんヨ。だが、逃げるナら早くしろ。いつマで理性を保っていられるか解らんゾ」
そう宣言すると、残っていた奴等も全員這いずりながら逃げていく。これでとりあえず制圧は完了か。
さて、ここからは楽しい楽しい尋問タイムだ。
次回、久しぶりのHENTAI作者復活!
今までの和○?とは違い、強○になっていますので嫌いな方はご注意を。
近日中に更新予定です。




