13話 虎人と異形会議
この物語には、人によっては嫌悪感を抱く可能性のある人外娘が登場する可能性があります。
自己責任においてお読みください。
※昆虫類など
また、お使いの作者はバレンタインデー爆破委員会所属です。
ご安心してお読みください。
「では、世話になった。シア様にはくれぐれもよろしく伝えてくれ。一段落着いたら必ず戻ります、と」
「それについては色々聞きたいことがあるが、まぁいいか。了解、伝えておく」
俺は今、オルストニアの見送りに出ている。
イックという大型の鳥類――一回りほど大きくしたダチョウに似ている――に荷車を引かせ、オルストニア自身は馬での移動だ。
送っていこうかという俺の誘いをオルストニアは断ったため、一般的な長距離移動用の準備を行った。
「それにしても、お前を見捨てた家族がそこまで大事とはな」
「あれは王国がそうするように私の家族に強要したのだろう?」
あれから更にメリザンドに調べさせた結果、オルストニアという戦力を削った上でお家取り潰しを計画した王国の作戦だった事が判明した。
脅迫に近い形で娘を切らせておいて更に殺そうとするとは、王国の上層部は一体どうしたのか・・・。
「まぁ、そうだが。許せるのか?」
「私も同じことをしてしまったからな。気持ちは痛いほど解る・・・つもりだ」
「そうか、ならもう俺が言う事では無いな」
「それと、ナオエさん。あの時の事だが」
「気にするな、俺だって解ってるさ。あの時のお前等は『魔王を倒した人間』が怖かったんだろ?あれから3年も経ってるんだ、理解は出来る」
「ああ、今にして思えば我々はあの時恐怖に取り付かれていたんだろう。普通の魔物でさえ我々騎士が複数いなければ太刀打ちできないのに、その頂点を倒したナオエさんにな」
現代の人間が素手で戦闘機を相手にして勝つ、と言えば少しは通じるだろうか。
勿論その戦闘機は弾薬、燃料をフル装填して空を飛んでいる状態だ。
身を隠す場所も一切無く一方的に攻撃してくるソレを素手で倒す。
ソレを実行した人間がいたとすれば、正しく化け物と言っても間違いないであろう存在にしか見えない。
「そろそろ出発しないと日を跨ぐぞ」
「ああ、ではナオエさん。色々と世話になった。ありがとう・・・昨日の夜も含めてな」
「こちらこそ。楽しい時間だった」
互いに笑い合うと、オルストニアは馬に跨り出発していった。
それを見送ると、誰にも聞こえないよう一言だけ呟く。
「本当に恨んでなんかいない。むしろ・・・ん?」
不意に鋭い視線を感じて、オルストニアが去って行った道からその横に広がる森へ目を移す。
殺気こそないが、射抜くような視線に違和感を覚える。
この周辺にいる魔物はすでに、この街の住人に干渉するのを止めている者達ばかりだ。
なのにこの視線には敵意を感じる。
と言う事は、外部の者か?
王国のスパイというのも考えられるが、そもそも人間では単独でここまでたどり着く事すら難しい筈だ。
「誰だ?用があるなら姿を現したほうが良いぞ。さもなければその周辺ごと磨り潰す事になる」
「あや、気づいてたんだ。さっすが元勇者だね」
鬱蒼とした森の中から物音1つも立てずに現れたそれは、虎の耳と尻尾を持つ獣人だった。
虎人と呼ばれる獣人。
本来は2メートル近い巨躯を誇る種族のはずだが、その虎人は小柄だった。
その顔は人間よりも鼻と口が前に突き出ているが、本来の虎ほどではない。
それ以外は人間とあまり変わらないが、特に目立つのは爛々と光る金の瞳。
捕食者としての威厳と自信を備えている反面、顔の作り自体はまだ幼さを感じさせる。
また、その身体は黄色に黒の横線が入った虎特有の模様を纏った毛に被われていた。
主に身体の外側・・・髪と繋がるように首周り、肩甲骨部分、腕の外側に広がり、背中を通り尻尾までを被っている。
腰から下は、余すところなく虎柄の毛に包まれているため地肌が露出している部分は無いが、猫科特有のしなやかな脚の形に妙な色気を感じた。
そして身体の内側部分・・・胸から腹にかけては毛が生えておらず胸とヘソが露出していた。
特に俺の目を引いたのはその胸で、小柄な身体に似合わぬ巨乳・・・しかもその下に小ぶりな乳房が更に1対付いている。
2対4個の乳房・・・複乳と呼ばれる構造だが本来の虎は4対8個のため、それよりも少ない。
生む子供の数によって同じ猫科でも増減するらしいのでおかしくないのか?
どちらにせよ眼福である。
「虎人か、気配の消し方は雑だが・・・強いな」
「へぇ、見ただけで解るんだ。これなら期待できるかな」
「期待?なんのだ」
「もぅ、解ってるんでしょ?シュカクに聞いたんだ!強いって!」
つまり、戦いたいということか?
虎人は鬼ほど戦闘狂という訳では無いはずだが。
「シュカクに聞いたと言う事は、俺の強さも知ってるんだろう?それでもやるのか?」
「あったりまえだよ!最近じゃ強い人間なんてメッタにいないしね!それもオスで強いなんてレア中のレアだよ!」
まぁ、言わんとしていることは解る。
それにこれはチャンスだ。
シュカクほどでは無いだろうが、強者を手に入れる機会を逃すわけにはいかない。
「勝ち負けの条件をつけるなら良いぞ?」
「そうだね!じゃ、ネメイアが勝ったら・・・そういえば、名前は何て言うんだっけ?」
「ナオエだ」
「ナオエだね!ネメイアはネメイアだよ!で、ネメイアが勝ったらナオエの心臓を頂戴?」
「心臓?それは俺の命が欲しいということか?」
「そうだね!勝った相手の心臓を食べるのは最低限の礼儀だしね!」
「そんな礼儀は聞いたことも無いんだがね。・・・俺が勝ったらこの街の護衛になって欲しい」
「いいよ!じゃあ勝負だね!」
こちらを指差すその手は、ネメイアの身体に大して不釣合いに大きい。
良く見れば手も足も虎のソレと変わらない形をしている。
獣人の身体の比率は個人個人で様々だが、人外度が高いほど戦闘力が高い傾向にある。
気を抜いて負けるのだけは避けないとな。
では、楽しい楽しい戦いの始まりだ。
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薄暗い室内の中央に丸い大きなテーブルが設置された部屋があった。
そのテーブルに設置された椅子に、異形の者達が座る。
そのうちの数人は椅子に座る事が出来ない体型のため、その場に立っている状況だ。
それぞれ真剣な面持ちで向かい合っていたが、そのうちの1人が立ち上がる。
「では、これより第7回ナオエ会議を始める」
そう宣言したのはオルカ族のシア。
椅子へ座り直し、全員を見回したシアは今回の議題を話し出した。
「では今後のナオエと同衾の順番を決めたいと思う。今回は新参が増えたがワシは今まで通りで構わないと思うが?新参で希望のある者を今までのメンバーの後に1日づつ入れれば良い、何か意見のあるものはおるかの?」
「反対、シア最後、順番」
テーブルの上に置かれた『頭』が意見を述べる。
デュラハンのホロウは、シアの順番を最後にするべきと主張する。
「シア、ナオエ、しばらく続く、始めると。だから最後」
「それは私も賛成ね、ナオエ様とシア様が深い関係なのは解りますけど、私達にとって順番を飛ばされるのは死活問題です」
「そうね、何せこの街にいる男で『人間』はナオエ様だけ。私達はさすがに順番を飛ばされると命に関わってしまいますからね。そこを考慮していただけると嬉しいわ」
ホロウの意見に賛成したのはアラクネ族のアラマユとその母親であるパメラだった。
彼女達はアラクネ族の中でも希少な種族で、人間の精気を栄養とする。
ここで問題なのが『人間』のという部分だった。
そのため、シアとの行為で時間を取られ自分達の番を飛ばされてしまうと、タダでさえ我慢している期間が更に延びることになる。
場合によっては命に関わる問題だ。
彼女達がシアの意見に反対するのは至極当然の事。
「その点なら問題を解決できております」
その発言に、周囲の目が集中する。
発言の主であるエルフのスリャは、メリザンドとシアに目配せすると立ち上がって魔術陣をテーブルの上に展開した。
その魔術陣にメリザンドがもう1つの陣を上乗せし、シアがそれを包み込むように結界を張るとそこには1つの扉が現れていた。
「これは今現在この街に存在する魔術を全て調べ直し、調整した異次元封印の応用魔術です。この扉をくぐると『こちら側』と『あちら側』で時間の流れが変わります」
「時間の流れが変わる?つまり・・・どういうことだい?」
その発言の主・・・シュカクは頭に?を浮かべながら説明を求める。
弁護しておくと、シュカクの種族である鬼は魔力を全て筋力強化の一点に使用しているため魔術については詳しくない。
シュカク自身の頭が悪いわけではなく、専門分野がまったく違うため理解出来なかったのだ。
「簡単に言いますとこの扉の向こうでの10日間が、こちらの世界での1日となります。つまり、夜の間だけ使用したとしても約3~4日間は時間を使えると言うことになりますね」
「なおえとやりたいほうだい、いえー」
スリャとメリザンドの発言に場がざわめく。
「つまりシア様がナオエ様のお相手をされたとしても、1日あれば終わると言う事ですわね?」
「そういう事になるの。ワシとしてもこれでお主等に恨まれんで済むと思うと肩の荷が下りる思いじゃ」
そう言ってカカと笑うシアの視線に、その場にいる何人かが目を反らした。
心当たりがあったらしい。
[それは歳を早く取ってしまうのでは?]
今まで沈黙を貫いてきたアント族のメイド達が、その手に持っている板に字を浮かび上がらせて掲げた。
彼女達アント族は、女王以外は声帯を持たないため話せない。
そのため、魔力で文字を浮き上がらせる魔術刻印式の板を常に携帯している。
そして彼女達働き蟻は寿命が他の種族に比べて短いため、少しでも長くナオエといるためにはそのような場で行為を行うわけにはいかない。
1日で最大10日分の寿命を消費してしまうなら、いかにこの魔術結界が優れていようとも使う気にはなれない。
「重要、ソレ。消える、存在、早く、ダメ」
「それも大丈夫じゃ。いくら異形であり寿命も人間に比べて長いとは言え、ワシも女じゃ。好き好んで歳を重ねたくは無い。そのためにワシがこの結界に細工をしておる」
そう言うとシアは扉に触れる。
扉は一切の抵抗も無く静かに開くが『こちら』と『あちら』を繋ぐ境目に、光り輝く薄い壁のようなモノがあった。
「これがあの人間メイドを実験台にして完成した過剰回復魔術じゃ。本来なら肉体を損壊させてしまう過剰回復じゃが、結界による肉体の保護と周辺魔力の遮断により安定化させた結果肉体情報の保存と上書きを出来るようにした」
「・・・何を言っているか全く解らないねぇ。もう少し解りやすく説明してくれないかい?」
シュカクの発言にシア、スリャ、メリザンド以外が頷く。
「この扉に入った際にその身体の情報を、扉自体が保存します。そして、扉の中から外に出る時に過剰回復で自動的に『扉に入ったときの肉体情報まで回復』させます。つまりこの扉の中にいる間は歳を取らないようにしたわけですね」
「すごいでしょ。がんばったんだよ」
「あと、一時的で良いなら若返らせる事も可能じゃ。まぁ、その場合はワシが直接魔術をかける必要があるがの。で、この扉を使えば時間に関しての問題は全て解決じゃ。・・・で、先程のナオエとの同衾の順番じゃが、ワシの提案で良いと思うのじゃがどうかの?」
まさかここまでの準備があるとは思っていなかった女性陣は、その言葉に反対する気も起きない。
ここでダダをこねた結果、この扉の使用を拒否されてはたまらないからだ。
「では、今までの順番に新参であるアラマユ、パメラ、シュカクの順番を組み込んで運用したいと思います。なお、この扉はあくまでナオエ様との時間をとるための魔術です。この言葉の意味を深く考えてくださいね。・・・では、詳細を詰めていきましょう」
スリャの仕切りで再開された会議は、それほど荒れることも無く1時間ほどで終了するのだった。
―――――
折れてしまっている木々を避けつつ森の奥へと進む。
ネメイアとの戦闘の結果だが、鎧を召喚することなく勝つことが出来た。
確かに強かったが、シュカクと比べるとかなり劣る。
速さに関してはシュカクよりも上だったが、それだけだ。
ネメイア自身がまだ若い事も関係するのかもしれないが、スピードはあっても技術が無い。
初見は面食らってしまい、その鋭い爪で腕や足を切り裂かれたがその速さに慣れてしまえばカウンターを入れ放題だったのだ。
まぁ、虎人という種族の特性か身体が恐ろしく柔軟だったため、殴っても衝撃を吸収され、間接を決めてもすぐに外されてしまった。
近接格闘においてはかなり厄介だったが、やっとのことで身体の芯を捕らえたカウンターで吹っ飛ばした。
仰向けに倒れているネメイアを見つけると、彼女は未だに意識を保っていた。
「や、やるねー、さすがシュカクに勝ったオスだよ!さすがにもう動けないや!」
「ではこの勝負俺の勝ちだな?約束通り俺の街で働いてもらうぞ」
「あ~、仕方ないねー。約束だもんね。嫌だけど働くよ」
そう言いつつ肩で大きく息をしているネメイアは全身を汗で濡らしている。
さすがに毛皮部分に汗腺は無いのか、顔と胸、腹部分だけだが大粒の汗が浮かんでいた。
大粒の汗に濡れ、上下に艶めかしく動くその複乳を拝んでいると、その視線に気づいたネメイアがニカッと笑う。
倒れた姿勢のまま右手を股まで持ってくると、毛を掻き分けネメイア自身を露出させ人差し指と中指を使って割り開く。
「戦闘の興奮と交尾の興奮って紙一重だよね!良いよ、私もさっきまでの戦いで滾ってるんだ!」
そういうネメイアは確かにヌラヌラと濡れており、俺の視線を受けるとひくひくと痙攣するように蠢いていた。
考えてみれば毛皮があるとは言えネメイアは全裸と変わらない。
しかも立ち上がれないほどのダメージを受けているにもかかわらず、その顔には情欲が浮かんでいる。
・・・据え膳食わぬは男の恥と言うしな。
俺はネメイアへと向かって歩いていったのだった。
今回の人外はリクエストを頂いていた猫系の獣人でした。
本当はそのまま猫にしていたのですが、せっかくだからと虎にしてみました。
これは書いている途中で私の人外好きの原点であるブレスオブ○ァイア2のリンプーを思い出したからですね。
だって、履いてないんですよ!?その事実に気づいた時の衝撃は忘れませんw
B○F2はニーナ、リンプー、アスパー、ディース等人外好きには堪らない作品ですね。
究極合体後の姿も合わせて2度お得な感じも堪りません!
話がそれましたが、そろそろストーリーを進めたいと思います。
すこしアレ系が薄くなりますが、今後ともよろしくお願いします。




