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第1章

【免責表示】

本小書(以下「本作」)はフィクションです。登場する人物・団体・地名・出来事等は、実在のものとは一切関係がありません。実在の人物・団体等と同名・類似の名称が登場する場合がありますが、いずれも偶然の一致です。

本作の内容は創作上の表現であり、特定の人物・団体・宗教・信条を中傷・誹謗する意図はありません。読者の解釈・受け止め方は各自の責任に属するものとし、作者および関係者は、本作の利用・引用等により発生したいかなる損害・トラブルについても、一切の責任を負いません。

本作の無断転載・複製・再配布を禁じます。引用等を行う場合は、出典の明記および引用の範囲内での利用をお願いします。

以上の点にご同意いただけない場合は、閲読をお控えください。

台湾の小さな山間部に位置する山間部の教会。その小さな木造の建物は、原住民のタイヤル族が多く住む地域にあった。十年前まで、この教会の礼拝に参加する人は十人にも満たなかったが、今では毎週日曜日に約百人の会衆が集まる活気ある場所となっていた。

その変化の中心にいたのが、牧師の陳明輝チェン・ミンフイだった。三十八歳の彼は、タイヤル族の血を引く端正な顔立ちと、人々の心を打つ説教で知られていた。彼の歌声もまた素晴らしく、讃美歌を歌う時には、会衆全体が神の存在を感じるほどだった。

「神様は私たちの内側に光を灯してくださいます。その光が消えることはありません。どんな闇の中でも...」

その日の礼拝も、いつものように明輝の力強い言葉で始まった。最前列には彼の妻、林美玲リン・メイリンが座っていた。彼女は教会の音楽ミニストリーを担当し、ピアノの演奏で礼拝を支えていた。夫婦二人の奉仕により、ある教会は地域で最も活気ある信仰共同体の一つとなっていた。

会衆の中には、老夫婦の呉家族、若い大学生の許智恩シュウ・ジーエン、最近離婚を経験した張麗華ジャン・リーファなど、様々な人生の物語を持つ人々がいた。彼らは皆、明輝の言葉に希望を見出し、この場所に集っていた。

しかし、その日の礼拝は途中から異様な空気に包まれた。

説教を終えた明輝は、突然マイクを持ったまま立ち尽くした。会衆が不思議に思い始めた時、彼はゆっくりと膝をついた。

「皆さん...今日は、私から皆さんに謝らなければならないことがあります」

彼の声は震えていた。美玲の顔から笑顔が消え、緊張した表情に変わった。

「私は...牧師として、夫として、大きな罪を犯しました。一年前から...教会の働きで知り合った女性と不適切な関係を持っていました」

会堂に衝撃的な静寂が広がった。誰も動けず、息をするのも忘れたかのようだった。

「美玲は先週このことを知り、今...私たちは別居しています。彼女は離婚を考えています。それは...私の責任です」

最前列の美玲は石のように固まっていた。しかし、その目からは静かに涙が流れ落ちていた。

後ろの列から、若い女性の泣き声が聞こえ始めた。それは許智恩だった。彼女にとって明輝と美玲は信仰の模範だった。その理想が崩れ去る瞬間に、彼女は耐えられなかった。

「神様、私を救ってください...」明輝は声を絞り出すように言った。「私の犯した罪を...そして、私が傷つけた全ての人を癒してください」

会堂の中で、次第に悲しみのつぶやきや、ショックを受けた声が広がっていった。助理牧師の陳學平チェン・シュエピンが立ち上がり、明輝の肩に手を置いた。

「私たちは皆、罪人です。しかし、神の恵みはそれを超えるものです。明輝牧師、私たちは共にこの試練を乗り越えていきましょう」

しかし、美玲は静かに立ち上がり、一言も発することなく会堂を出て行った。彼女の後ろ姿には、十年の結婚生活と信頼が崩れ去った重みが感じられた。

会衆の間に広がる混乱と動揺の中、明輝は祭壇の前で泣き崩れていた。

ある教会の試練は、この日から始まった。

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