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武器相性 (主人公能力説明・前編)

 俺と舞依、ティアラの3人は、ヴァルス王国有数の名門ダイアデム学園の普通科(Nクラス)に入学した。

 異世界学園の初授業は性質診断――自分の武器相性と魔法属性を調べるものだったが、そこへ優等生(Sクラス)のロバルトがやってきた。

 ロバルトはティアラの傍にいる俺へ一方的に対抗意識を燃やし、性質診断の手本を見せると挑発してきた――ていうか止めろよ、先生。


「いいかい、まずは武器相性だ。僕の完璧なお手本と類稀な才覚を、その劣等遺伝子に叩き込んであげるよ。ティアラ姫、これを見ればあなたも分かるはずだ……僕以上に優秀な人間はいない、とね」


 ロバルトが指を鳴らすと、ドゴォと巨大な岩が彼の目の前に現れた。

 その岩は綺麗な球体に見えたが、よく見ると両側に手形のような窪みがある。


「この『シャーロック』は、触れたものの素質に応じて形を変える特性を持っている。すなわち、この側面に手を置くと、その人物と相性の良い武器の形に変化する」


 ロバルトは説明しながら、そのシャーロックの真ん前に立った。


「人によって武器相性は様々だが、一般的には1人につき多くて2,3種類とされている。武器の種類も様々だから、この診断はまさしく本人の潜在能力がどれだけ多くの武器と相性が良いか、素質の高さを測る方法といえる」


 ロバルトは声高に言いながら、シャーロックに手をかざした。


「そして――」


 ロバルトが窪みに手を触れた瞬間。ガコガコガコッとシャーロックが変形し始めた。まるで中にそういう機構が仕組まれているかのように、各部位が滑らかに移動し、様々な形状を作り上げる。

 やがて、シャーロックの変形の全貌が分かってきた。岩の表面に、それぞれ柄や武器の先端が形成され、シャーロック自体が巨大な武器のようになった。

 上からは剣、右には大斧、左に拳、下から杖――。


「――僕の武器相性は、4種類だ」


 Sクラスからは黄色い歓声が、Nクラスからはざわめきが聞こえた。どうやら、武器相性が4種類っていうのは、よほどすごいことらしい。

 いまいち凄さが分からないでいると、ティアラが俺の服の袖をちょこちょこ引っ張ってきた。


「武器相性レベル4は、滅多に現れない逸材とされています。ヴァルス王国内の総人口の中でも、おそらく10パーセント未満……精鋭中の精鋭、超優秀な方々に匹敵します。

 学園はおろか、ヴァルス王国へ来て間もないケイスケさんに対して、あまりにずるくて不公平です。私が言って、こんな無意味なこと、終わらせます」


 ティアラが怒りを露わにして呟く。俺のために怒ってくれているのか……。

 どうやら、いかに不利な状況とはいえ、俺が大衆の面前で恥をかくようなことはさせたくないらしい。 

 ――けれど。


「ありがとうティアラ。でも、俺はやる」


 ここで退いたら、コムレイズの名折れだ。それに、俺の恥は、すなわちティアラの恥でもある。

 ティアラに迷惑をかけないためにも、ここはたとえ無謀でも挑むべきだ。それが男だ。そうだろ?

 俺はティアラの肩を叩いて、ロバルトと対峙した。


「簡単そうだな。次は俺がやる」


 すると、取り巻きガールズ3トリオが立ちはだかった。


「はぁ? ちょっと、今目の前で起こってる状況わかってないの? ロバルトは最上級エリートの特級貴族ですら一握りの天才しかいない武器相性レベル4なのよ? それに挑戦するとか……え、もしかして間抜け?」

「いい加減にしてくれないかなぁ? ロバルトきゅんは忙し過ぎて勉強の超過密スケジュールの合間縫って来てくれてるんですけどぉ。時間の無駄だから醜態晒す前に土下座して消え失せなよ」

「もしかして、自分なら勝てるとか思ってんの? それとも、ロバルト様が凄すぎて頭おかしくなったぁ? マジでウケる。なに食べたらそんな愚かになるんだろぉ?」


 いやうるさいなほんと。


「まあまあ、格上に挑む度胸は大事だよ。僕も男の子だから分かる。ここは、その度胸と愚行の違いを理解させてあげるのが、せめてもの優しさだと思うな」


 ロバルトは取り巻きトリオを宥めながら、後ろに下がらせた。トリオはまたキャーキャー騒いでいるが、もはや動物の鳴き声くらいにしか聞こえない。

 ロバルトはなんか勝手に喧嘩売ってくる面倒くさいやつだが、正直、こういう自信満々ゆえに外野を引っ込めるところは好感が持てる。

 これで、誰を取り巻きにするか選んで煽り癖をなくせば、きっと良いやつになると思うんだけどな。


「いいからよこせよ、シャーロック」


 俺が言うと、ロバルトは少し顔を歪め、ダンッと地面を踏みつけた。

 すると、俺の足元に大岩が出現する。でかい。俺よりも頭2つ分くらい巨大だ。

 俺は、シャーロックの窪みに手を添えた。


「これは……」


 ガコガコガコガコガコガコ! 目まぐるしく形を変えていくシャーロック。俺は指先の熱さに歯を食いしばった。岩の中に吸い込まれ、手の皮が剥がれそうだ。

 ズオオォォォと砂煙が舞い、周りの生徒たちが悲鳴をあげる。ティアラと舞依が心配になったが、どうやら無事のようだ。ちょうど2人のスカートが強風でめくれたので、俺は目を逸らした。

 やがて、シャーロックの変形が終わり、辺りは静かになった。俺は、ギザギザで意味不明な形状になった大岩を見て、顔をしかめた。


「なんだ、これ……」


 よくよく見てみると、それはロバルトの時と同様、シャーロックの表面が武器の形になっていた。

 だけど、1つ2つではない。多すぎて、一目ではとても数え切れない。

 刀、槍、短剣、メイス、盾、クロスボウ、手裏剣――。


「バカな…………!?」


 ロバルトが叫んだ。


「武器相性、7種類…………」


 ティアラが指差しで数え終え、呟いた。


「ケイスケさんの武器相性は、レベル7です……!」

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