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神薙少女は普通でいたい  作者: 道草家守
エピローグ

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エピローグ:とある少年の場合

 

 三好和也(みよしかずや)は、初春になったというのに、未だに寒い夜道をあてどもなく歩いていた。

 ほんの2週間ほど前から始めた習慣だが、なかなかに面白い。


 深夜、というほどではないとはいえ、それでも好んで出歩く時間ではないと思っていたのだが、案外人通りはある。


 仕事帰りの疲れた顔をしたサラリーマンや、これから都心へ繰り出すらしい気合いの入った装いの女性、さらには塾帰りの小学生などもいたりして少々驚いたものだ。


 塾通いにも習い事にも縁がなかった和也は、ずっとなじんでいたはずの街の知らなかった一面を目の当たりにして新鮮だった。


 あてどもなく夜道を歩く風変わりな趣味に目覚めた息子を、和也の両親はいぶかしそうな顔をしながらも送り出してくれた。

 ほんの少し、ほっとしている雰囲気であったのは気のせいではないだろう。


 非行に走りたいわけではない。

 成績は中の下を行き来しているが、高校は嫌いではないし、入っている美術部もほどよく緩い雰囲気で、それなりに楽しかった。

 だが、最近一枚も絵を描いていない。いや、ペンさえ握れない。


「こんなときに思い出すんじゃないよ」


 腹の底が煮え立って沈むような、形容しがたい感情を押し込めて、和也はひたすら歩いた。


 夜風はコートを立てたくなるほど寒いが、これでもほんの少し和らいだような、気がする。

 ひたすら歩いて、疲れて家に戻れば、きっとうまく眠れるだろう。


 あんな夢も見ない。





 数週間前から、和也は奇妙な夢を見るようになった。

 暗い場所で、丸くて大きな鏡の前に立つ夢だ。


 濃い、薄気味悪い黒いもやをまとったそれに、ぼんやりと自分が映ったと思ったら、鏡の向こうの自分が、にやりとまがまがしく笑うのだ。


 まるで自分ではないみたいに。


 その日を境に、和也は日中、意識を失うようになった。

 和也はそういう認識なのだが、その間、和也はまるで人が変わったかのように暴れ回るのだという。


 意識が戻ったときには節々の痛みを訴えるから、間違いはないのだろう。

 だが、そんなことをしたいと一度も思ったことはないし、物を壊して発散するくらいなら、絵にぶつけたい。

 だというのに、二週間前からその絵すら、描けなくなってしまった。


 動かないのだ。手が。


 ペンを握って、さあ書こうとすると、線一本すら、どう引けば良いのかわからなくなっていた。

 文字ならば書けるのにもかかわらず、絵だけが描けない。


 おかげで、出そうと思っていた絵画コンテストを逃してしまっていた。

 代わりに、別の部員が送ったが、悔しさよりも、絶望が襲ってきた。

 


 そして、夢も日を重ねるごとに変わって来ていたことに思い至ったのだ。

 腕が動かなくなる前に見た夢では、鏡に映る自分が今までよりもずっと鮮明になっていて、口が動いてこう言ったのだ。



『その腕をくれよ』と。



 ここ最近、和也の体は勝手に暴れない。

 

 その代わりに、意識を保っている時間が短くなっていた。

 病院へ預けるしかないと、両親が話しているのを立ち聞きしたから、おそらくは数日中に病院に閉じ込められることになるのだろう。


 だが、それよりももう一度眠ったら、自分が自分でなくなるような予感がして、その言い表せぬ恐怖が、和也を夜の散歩へ駆り立てていた。


「は、は、本当に、いれば良いのになあ。神薙少女」


 耐えきれずに、和也はくすぶる恐怖をはき出した。


 そう、和也だって、なにもしなかったわけではない。

 図書館では医学の文献に当たり、うさんくさいと知りつつも、WEB上でそういうオカルト的な情報を読みあさった。



 その中でみつけたのが、まことしやかに語られていた都市伝説だった。



 その少女はバリエーション豊かなコスプレ衣装を身にまとい、怪異と呼ばれるたぐいの事象をハリセンで殴り飛ばして解決するのだという。


 初めてその存在を知ったときは正直、訳がわからなかったし、冗談にしても質が悪いと思った。


 和也は水彩画派ではあるものの、美術部員の中にはアニメ、漫画系のイラストを描くものもいるから、二次元と呼ばれるそれに偏見はない。

  それでも、神薙少女はただの目立ちたがり屋にしか思えなかった。


 だが、実際に画像も動画も、しっかり探せばいくつも見つかった上、しかも和也が住む街を中心に目撃情報があったのだ。

 実際に、SNS上でだが、実際に出会ったという人に話を聴くことすらできた。


 そして。その中の一つ、白と赤の巫女服めいた衣装を着た彼女の動画の最後に流れた文章に釘付けになった。



『不思議ごと、怪異にお困りの方は、一度相談を』



 そのURLの先にあったメールフォームに、今の己の状況をはき出して送信したのは、どうかしていたと思う。

 なにせ、自分の住所まで書いてしまったのだから。


 冷静になって真っ青になったが、とりあえず、確認メール以外はなにもないし、ほんの少し、すっきりしたのも確かだ。


 ばからしいと思いつつも、期待している自分がいる。


 確かに、自分と同年代に見える画像や動画の彼女は、かわいらしいと思うから、熱狂するのはわからなくも……ない。


 だが、それだけではない。目撃者は、口をそろえて言うのだ。

 彼女は、かわいい衣装を翻して、闇夜の世界から連れ出してくれた、と。


 自分ではどうしようもない、理不尽な現象に追い詰められていたら、そんな眉唾の都市伝説すら信じたくなってしまうではないか。



 うつら、と自分の意識が遠のきかけるのを感じて、和也はぶるぶると首を横に振った。

 そのような不確かなものに望みをかけるよりも、今日の夜を乗り越えることを考えよう。


 せめて、コーヒーでも買おうか。

 苦手だが、コンビニのブラックコーヒーにすれば苦さで多少は目が開くかも知れない。


 考えた和也は、あたりを見渡して、ぞっとした。

 いつの間にか、見知らぬ場所へたどり着いていた。


 街中、だというのに家の明かりが一切ない。

 街灯の光も消えている。


 おかしい。夜の散歩のルートはあくまで、自分の知っている場所をぐるぐると回るだけだ。


 スマホの時計を見れば、外に出てから1時間もたっていなかった。

 意識が飛んでいるわけでもないのに、知らない場所にたどり着くわけがない。



 ……いや、自分はここを知っている。



 生臭いような、背筋が冷え込むような薄気味悪い気配は、夢の中と同じだ。




 ごろり、ごろり。と、重い物が転がる音が聞こえた。



 ああ、自分はこの音を知っている。



 きしむように振り返れば、背後にはあの、古くて、丸くて、妙にまがまがしく黒々としたもやをまとった鏡があった。


 そうか。と和也は唐突に理解する。

 とうとう自分は、夢の中に入り込んでしまったのだ。


 じっとりと手が汗で湿るのに、のどはからからに乾いていた。

 和也が動けない中で、鏡は、すうとその場で回転し、鏡面を和也に向ける。


 そこには恐怖に震える和也が鮮明に写っていた。


 今日は、それだけではない。


 ふいに、残虐な笑みを浮かべた鏡の中の和也は、こちらへ手を伸ばして来たかと思うと、鏡面に波紋を広げながら、こちら側へ(・・・・・)質量を伴って現れたのだ。

 首まで出てきた鏡の和也は、黒くよどんだ瞳で和也をとらえて、こう言った。



『おまえを、寄越せよ』



 あれに捕まったら、いけない。



「わああああああっ!!!」



 ざっと血の気が引いた和也は、叫び声を上げながら、闇雲に走った。


 背後は見られない。

 見た瞬間足が動かなくなりそうだったからだ。


 だが、耳は鏡の中から、和也に似たなにかが外に出てきて追いかけてくる気配を感じた。



 どこか、どこへ?



 これだけ騒ぎながら走っているというのに、誰も出てこない。



 ともかく、あれが追ってこれなさそうな場所へ!!



 ふいに、朱塗りの鳥居が目に入り、和也はとっさにそこへ飛び込んだ。

 はじけそうな心臓も無視して、階段を上りきった先には、また朱塗りの鳥居とこじんまりとした神社があって、萎えかける足を叱咤して賽銭箱に近づくと鈴を鳴らした。


「神様でもなんでも良いから、たすけて、助けてください!!」


 がらんがらんとけたたましく鳴るが、それだけだ。


 神様はいない。


 荒い息も整えきれずに絶望に染まる和也は、不意に足を取られて地面に転がった。

 石畳に頭は打ち付けなかったものの、そのままものすごい勢いで引きずられる。


 とっさに地面へ爪を立てて防ごうとしたが無理で、振り仰げば、案の定、足を持っていたのは鏡の和也だった。

 目が合った鏡の和也はにいっと笑うと、足を止めないまま、視線を前へと向ける。


 そこにあるのは、例の大きな鏡だ。

 今は、誰も映っていない。


 『代わりになってよ』


 つまり、あの鏡に入れると言うことか。こいつの代わりに。


 ぞうっとした。


「い、いやだあああぁああ!!」


 むちゃくちゃに暴れたが、鏡の和也の腕は万力のように離れない。

 だめなのか、あんな寒そうな、なにもない場所に閉じ込められるのか。


 大きくて古くて、なにも移さない鏡が、和也を飲み込もうとぽっかりと空間を開けている。





 風が吹いた。






 なぜ、こんなときに、そんなことが気になったのかわからない。


 その風が、この生臭い空気の中で、清涼感を帯びているように思えたからか。



 ふと視線を上げると、朱塗りの鳥居の上に、誰かが立っていた。



 冴え冴えとした月光を背に、ワンピースのような物を着た、髪の長い少女のシルエット。



 違う。あれは巫女服だ。



 着物あわせの衿と、たっぷりとした袖の白い上着に、薄い布を金魚のひれのように揺らめかせる赤いスカートからは、すんなりとした足が伸びている。

 黒い髪を風に揺らめかせる姿は、匂い立つように可憐で、こんなときなのに見惚れた。


 そして、片手に持つ真っ白い物は、場違いなほど大きなハリセンだ。


 そのミスマッチとも言える組み合わせをした存在を、和也は、知っている。


「かんなぎ、しょうじょ」



 ろん、と不思議な鈴の音が響いた気がした。



 だが鏡はもはや間近だ。


 和也がありったけの力を振り絞って、声を張り上げようとしたとき、少女の姿が消える。


 刹那、冴えた光があたりに散ったかと思うと、捕らわれていた足が自由になっていた。


 『ぐげげ!?』


 人とは思えない絶叫があたりに響いて、反射的に体を起こせば、白と赤で構成された、少女の背にかばわれていた。


 その顔が半分だけ振り返る。

 柔らかさの中にも、凛とした意志の強さを感じさせる、整った横顔だ。

 透き通るような黒いまなざしが和也を捉える。


 さあと甘い香りが鼻腔をくすぐって、なぜか顔が赤らんだ。


「遅くなったわ。でももう大丈夫だからっ」


 可憐な少女の声にもかかわらず、その力強さに、和也は泣きたいような安堵に包まれたが、それに気づいて声を張り上げた。


「前!」


 そこには今や形容しがたい姿となった鏡の和也が、少女に襲いかかろうとしていたのだ。

 気づいた少女は、だがまったく焦った様子はなく、そのハリセンを振り抜く。


 スパンッと小気味良い音と共に、また清涼な光が散って、鏡の和也は塵となって消滅していった。 


 だが、少女が離れた隙を突くように、あの大鏡が和也に向かって転がってくる。


 速度は予想以上に速く、逃げようにも間に合わない。

 だが、腹が圧迫された瞬間、体が宙に浮いた。


「ぐえっ」

「ずいぶん愚鈍だのう。まあ良きカットが撮れたでよしとするか」


 つぶやかれたのは男のものだったが、その深く寂のある声のなまめかしさに、和也は自分の背筋が震えるのを感じた。


 通常ではあり得ないような跳躍も、内臓が宙に浮くような不快感も意識の外だった。


 少し離れた場所に無造作に転がされた和也は、そこでようやく自分を助けてくれた男を見上げる。


 黒一色に身を包んだ彼は、この闇中でもぽっかりと浮かび上がるような、妙ななまめかしさを帯びた美しい青年だった。

 男に美しいという形容詞を使う日が来るとはと思いつつも、うなじで括られた長い髪に、赤の瞳は恐ろしいほど艶めいて見える。


 思わずごくりとつばを呑んだ和也だったが、片手で頑なにビデオカメラを構えている姿がひどくちぐはぐだとも思った。


 呆然と見上げていると、また小気味の良い音が聞こえる。


 そこにはハリセンを振り抜いて大鏡を牽制する少女が、驚いた表情でこちらを見ていた。


「っ! ナギ!? 出てこないんじゃなかったの!? というか何で撮ってるの!?」

「その予定だったのだが、やはり臨場感が必要と思うてな。おかげでいい絵が撮れたぞ」

「だからっ、なんでっ、撮ってるの!?」


 少女がごまかされないといわんばかりに念を押せば、男はあくまでビデオカメラを維持したまま、非常に良い笑顔で言った。


「今日は『まじかる☆巫女姫ひみこちゃん はいぱあ』の新衣装だからの! やはり間近で鮮明に撮らねばなるまいて! さすがぬしよ、超絶かわゆいぞ!」

「っそれでまた保管するんでしょ!? もうやめてよ!」

「まあ良いではないか、あやつらもぬしの艶姿を期待しておったからなあ」

「っぐ、それで猫耳をつけさせられたんだから、もうその手には乗らないわよ!?」

「おや残念」


 そうして、顔を真っ赤にする少女はひどく愛らしい。

 だが、少女は不意に鋭く表情を引き締めて、大鏡を睨みつけた。


 少女に吹き飛ばされていた大鏡は、独りでに起き上がると、ごろりごろりと不気味にうごめいていた。


「捕らえた人に、外に出たければ別の人間を引きずり込んで成り代われ、なんて言って。結局その魂を全部捕らえるくせに。その所行、許すわけにはいかないわ」


 ハリセンを構える少女に、大鏡がその姿を揺らめかせてその姿を増やす。


 たちまち数十の大鏡に囲まれた少女に和也は真っ青になって、仲間らしい男を仰ぎ見る。

 だが、彼は全く心配などなさそうに、楽しげにカメラを構えるだけだ。


 少女自身も油断なく表情を引き締めているが、落ち着き払っていた。

 彼女がハリセンをひと撫ですると、その刀身が淡く光を持ち、優美な一振りの剣に変わる。


「天つ剣の力を持ちて 全ての禍事を禊ぎ祓い浄め賜うことを かしこみかしこみもうすっ!」


 とたん刀身からあふれ出した清涼な光が、四方を強く照らし出した。


 鏡からあふれ出てきていた大量の黒い人影は、その光にさらされたとたん一気に消し飛んだ上、囲んでいた大鏡も軒並みその姿を揺らがせる。


 そして残った一枚に向けて、少女はあふれる闘気もそのままに跳躍した。



「ヘヴン☆ウイング クリーンアップ!」



 なすすべもない大鏡を袈裟懸けに切り下ろすと、ガラスがきしむような耳障りな悲鳴と共に、大鏡は黒いもやを明るい光に変えて消滅していった。





「ふう」


 和也がその鮮やかな戦いぶりに呆然と見入っていると、息をついた少女がくるりとこちらを振り向いた。

 その拍子にふわりと、金魚のひれのような赤いスカートが舞い踊る。


「君がメールをくれたんでしょう? ちょっと、我慢してね」


 そう言って近づいてきた少女が、少し腰をかがめると、意外なほど量感のある胸が間近に迫って心臓がはねる。


「祓い賜え 浄め賜え」


 とんっと、頭に軽い衝撃を感じたかと思うと、またあの光が散って、身体が一気に軽くなった。

 いつの間にか、剣からハリセンに戻っているそれを構えていた少女は、ほっとしたように微笑んだ。


「呪いは解いたから、もう、絵が描けると思うよ」


 和也は恥ずかしいような嬉しいような気分がこみ上げてきて顔が熱くなった。

 あの、絵が描けない苦しみを延々と書き綴った、それでも切実だった声を、見てくれたのか。


「ありがとう……」


 お礼の言葉も感謝の言葉もたくさん伝えたかったが、言葉になったのはそれだけだった。


「どういたしましてっ」


 だというのに、少女は嬉しさを抑え切れない雰囲気で、少し気恥ずかしげにはにかんだ。

 その笑顔に和也が衝動的に手を伸ばしかけたとき、目の前から少女が消える。


 黒髪の青年が、少女の背と膝裏に腕を回し、横抱きに持ち上げていたのだ。

 その美貌を彩る赤い瞳が、やんわりと和也を射貫く。


「神薙少女がかわゆいのはわかるが、あまり見惚れすぎるのも良くないぞ?」


 なにが良くないというのか、だがその迫力に和也が凍り付いている間に、青年は少女を抱えて歩き出していた。


「きゅ、急に何よナギ!?」

「ぬしが最近とみにかわゆくなったのは嬉しいが、周囲への破壊力も増して、わしはちいと心配だ」

「あんたが着せてるのにそれはないわよ!?」

「あとの、必殺技も全力でやってくれるようになったのも嬉しいのだが。成長を喜ぶべきか、あの恥じらいに満ちた初々しいぬしを懐かしむべきか非常に悩むのだ」

「っ、思い出させないでよ今更恥ずかしくなってきたじゃない!」


 かああっと暗がりだというのに頬を真っ赤に染めているのがありありとわかる少女に、青年がからからと笑う。


 だが、少女は抗議するにもかかわらず、青年の腕に抱えられること自体はいやがるそぶりを見せない上、抱えられる姿はひどくしっくりとくる。


 すると不意に、少女が秘密の話でもするように、青年に顔を近づけた。


「わたしがかわいくなったのなら、全部ナギのせいなんだからね?」


 その声は小さすぎて和也には聞こえなかったが、ふいに青年は歩を止めると、その顔をさらに近づけた。


 一拍して少女がのけぞったことからして、なにをされたのかは想像がつき、和也はあんぐりと口を開ける羽目になる。


「なっなんで急にき、キス……っ」

「これは、ぬしがかわゆいことを言うからいけない」

「そんなこと言って! 再契約の時だって、言葉だけでも十分だったのに、あんなふうにっ」

「うむ、あんまりに頑張るぬしが愛らしゅうて、ついしたくなってしもうたのだよ」

「へんっ」

「変態ではないぞ? 愛しいおなごであれば、深く触れたくなるのは男も神もそう変わらぬ」

「……~~ッ!!」


 そうして、言葉を失った少女を抱えた青年は、上機嫌に笑いながら闇夜の中へ消えていったのだった。







これにて「神薙少女は普通でいたい」は完結です。

好きなものを全力で詰め込んだこの物語。楽しんで頂けたのでしたら幸いです。


活動報告にて、あとがき的なものも更新しております。

よろしければこちらもどうぞ。


ご愛読、まことにありがとうございました。

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