7 最高級の餌
光歩はうな垂れてバスタオルを腰に巻くと浴室から出て、4階の保健室からも出て行こうとする。
「コーフ、待て!」
保健室の空間にも、リデル司令の映像が四角いモニター画面風に現れる。
室内には、ラン、ミキ、スーがまだいた。
光歩は足を止める。
「リデルちゃ~ん」
スーが映像のリデル司令に手を振った。
リデル司令は眉をひそめる。
「お風呂で言ったこと以外にも伝えることがある」
光歩は暗い顔で、リデル司令の方に身体を向ける。
「お前とリオンは、美少女魔獣物体を誘い出す餌でもあるんだ」
「――エサ!?」
「忘れただろうけど、お前は知っていて志願したのだよ」
莉音がバスローブを着て浴室から出て来る。
光歩はチラッと莉音に視線を向けて頬を赤らめた。
「子作りしながら餌になるのは大変だわな。本当の餌にならないように、オモチャのそいつらがいるわけよ」
「オレたちがいないとただの餌のくせに、オモチャとは言ってくれるぜ。ちびっ子のリデルちゃんよ」
「ラン、お前が私の部下だったらぶっ壊してやるんだけどな」
リデル司令とランはお互いの顔を見てニヤッと笑う。
「子作りってなに?ミキ姉ちゃん」
「人間の男性と女性が合体なさって小さな人間を作ることですわ」
「合体?人間も戦闘ロボ形態になれるんだ!スーたちは合体しても仲間を作れないね。人間ってスゴイ!」
光歩は、莉音と目が合ってしまい赤面する。
「人間だけじゃないですわ。下等な生物の殆どは合体して仲間を増やしますの。人間については、必要もないのに合体して、作った小さな人間を処分することもありますのよ」
「スー、意味分かんな~い!」
「美少女魔獣物体は、異空間転送された我々コンナンス人を食べると、能力がも~のスゴ~ク上がるんだよ。だから食べられるんじゃないぞ。言っておくが、ランが言ったみたいなコンナンス人はただの餌ではない」
「そうなんです、先輩。単純なんですけど、私たちには戦う魔法があるんです」
莉音が積極的に視線を向けて来たので、光歩は恥ずかしくて俯いた。
「そんなもん役に立ったことねえぞ」
「お姉様!たまには役に立つこともありますわ」
「……それでか!ボクたちの名前が分りやすく変えられてないのは!普通だったら、敵に分らないように全然違う名前にするはずなのに、例えば――」
「スーが大好きな宇宙刑事ギャバンは、一乗寺烈だったよね」
「宇宙刑事シャリバンは、伊賀電のコードネームなんだぜ」
「宇宙刑事シャイダーも、沢村大のコードネームなのですわ」
「コーフ・ナボーが、奈坊光歩って――魔獣のおねえさんたちには顔を見られちゃったけど、名簿とか入手されたら一発でバレちゃうでしょ」
「せっかくの異世界だからな。名前にその国の漢字を当てたのは私のアイデアだ。別に意味なんかないんだよ、最初っから」
そう言って、リデル司令はいたずらっぽく舌を出した。
「……」
「あいつら、美少女魔獣物体は、異空間転送の着地点を嗅ぎつける能力があるんだわ。昨日、あいつらに襲われただろ?コーフちゃん」
「――はい」
「あいつらが、ランたちキャンディボーグを怖がってるのも分ったんじゃないか?」
「スーがいたから、ここまで歩いて来れたんだね」
光歩は笑顔のスーに顔を向ける。
「他のキャンディボーグは来てくれなかったけど」
「贅沢言うんじゃねえ。一人に一体だと思っとけ」
「ワタクシたちに頼りきってもいけませんわ。守り切れなくて食べられたり、大ケガされることもありますので、油断は禁物ですの」
「先輩、これからは長距離を歩いて帰って来るのは危険です!」
「だけど、ここって大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。ここがある限り、最高級の餌がやって来るんだからな。それを邪魔するなんて、あいつらはそんなバカじゃないよ」
そう言うと、リデル司令は小さなクッキーを口に放り込んだ。
(子作りに餌って、ボクはヤバイところに来ちゃったぞ!)
光歩はそう思って、緩んだ腰のバスタオルを両手で掴んだ。
読んで下さって、ありがとうございました。




