1-4 地下壕の完成
「この魔法が暴走したときはどうしたらいい?何か対抗魔法はなあい?」
「その中は真空ですね?もしその魔法が暴走したのなら、中にある雷が辺りに放たれる、もしくは真空の影響で辺りに暴風が巻き起こることが容易に予想できます」
「それで?」
「雷から辺りを守るためには避雷針を立てれば宜しいかと。暴風から身を守るには、それと同等の風をぶつけるか防御魔法で身を守るかすれば宜しいかと。但し吹き飛ばされないようにする必要があります」
「どうやって?足場を固定するだけじゃあ、倒れてしまうよ」
「足を地面に突き刺して動けなくするのはどうでしょう。魔法障壁を地面に突き刺して支えにするのもいいかもしれません」
要するに、風、魔法障壁、避雷針の三つの魔法を覚えればいいと分かる。僕は拳大の魔法障壁の中で風魔法の練習を開始することにした。少しでもリスクを減らしたい…そう思う事は自然な発想だろう。
僕が魔法障壁、炎、風の三つも魔法を繰り返し練習するようになって一年の月日が流れた。家族には既に僕が話せて歩けることがばれていた。本が読めることはまだ知られていないが、それも時間の問題かもしれない。ティミィが書斎に書かれていることは全て覚えてくれているので、苦労して本を開く必要性は無くなった。分からないことは全てティミィが教えてくれる。けれど一人でいるのも退屈なので、人目を盗んで本を読んだりしていた。一年経ったことで爆破された僕の部屋は修理され、僕は元居た部屋に戻されることになった。
「本を読むことが難しくなっちゃったね」
「必要であればいつでもディスプレイに表示させますので、ご安心ください」
「ティミィの目ってどうなってるの?ほんと便利だよね」
「褒めても何も出ませんよ」
僕は相変わらずベビーベッドで寝ていると、姉が突撃するように部屋に入って来た。
「私の実力がテストでピンチなの!タークス、私の魔法練習に付き合いなさい」
「じゃあ、お庭に連れて行って!」
僕は姉の魔法の面倒を見るという名目でミッシェルと一緒に庭で遊ぶことを許されるようになった。
「実力テストって何?」
「入学の為にテストがあるんだって。私それで一番になりたい!的を破壊した魔法を教えてえよ」
「教えてすぐできる物じゃあないよ。毎日瞑想を繰り返して身に着けた魔力があったからできたことなんだ」
「瞑想って何?教えて」
「意識を自分の中に向けて、目を瞑って体の中に流れている力を感じるんだ…それが瞑想」
「目を閉じたら眠くなっちゃう…そんな化石のようなことできない!」
「そうだよね…じゃあ姉さんは重い剣でも振っているほうが能力は上昇するよ」
「ほんと!分かった!早速警備隊から剣を借りてくる!」
何も考えずにこの領地を守っている警備隊のところまで走り去ってしまった。僕はまだこの屋敷から外へ出たことがないので若干羨ましく感じる。そしてこの領地にも学校があることが分かった。僕は教育機関なんて存在していないかもしれないので、今学べることは全て学んでおこうとしていた。教育機関があるとしても基本的なことしか教えないというのは間違いないだろう。特に平民にとっては…。
姉が去ってしまったので、僕はミッシェルさんに寝室へと戻された。相変わらずティミィが半目になって直立不動の状態で佇んでいる。
「いつ見ても物凄く不気味。何とかならないのかな」
「スリープモードを変更することはできません。エネルギー節約には必要な佇まいなのです」
僕は訓練を続け、有事に備えるために何か良い魔法がないかティミィに聞いてみることにした。
「そうですね、戦争に大事なのは情報です。ですがそういう事を聞きたいわけではなさそうですね」
「相手が攻めてきたとき、どうすれば守り切ることができる?戦争に勝つことができる?」
「そうですね…攻撃は最大の防御と言います。相手が攻めてくる前に、相手を全員葬れば勝てるでしょう」
「もっと穏便な方法ってないの?」
「そうですね…本当に守りたいものが一つなら、大きな砦を作ってその中で匿ってしまえば宜しいのです」
僕はその日、ぐっすりと眠ることができた。
この地で数年後戦争が起きることは間違いがない。その前に僕は完成させなければならない、その砦というものを。
「砦ってどうやって作ればいいの?」
「一朝一夕にはいきません、そうですね…ではこの家の庭に一緒に地下室を作りましょうか?頑丈な砦を地下室に」
僕とティミィは誰にも見られない時間帯を選んで、秘密の地下室を作ることにした。誰にも攻め落とせない頑強な…秘密基地。
「タークスに言っておかなければならないことがあります。この地下室は誰にも知られてはいけません。それ(情報隠蔽)がよりこの砦を強固にするのです。わかりましたね?では掘り始めるとしましょう」
僕は未だ、魔法障壁と風魔法と火魔法と夢魔法しか使えないので地面を掘ることはできない。全てティミィの技術に頼ることになった。
「では私が魔法を発動させますので、タークスは魔力を一定量注いでください。魔法陣を発動させる要領で魔力を注いでください。そうすれば私が魔法陣の代わりとなって魔法を発動させることができます」
「魔法陣の代わりとなる機能が付いているんだね!すごい。何処から魔力を注げばいいかな?」
「右手を出してください。そこから魔力を吸収します」
庭の物置小屋に入り【静寂】を掛け外に音が漏れないようにする。それから【土魔法】を使って地下に穴を掘りつつ【収納】で掘った土を異次元へと送っていく。充分下へと掘り終えた後は崩れないように壁を補強し【硬化】させておく。その後横穴を掘り迷宮と化す。
「迷うだけで砦とは言えないんじゃないかな」
「では逆砦を作りましょう。通常の砦は上へと伸びて作られていく強固な建造物ですが、逆砦は下へと回想が伸びていく砦の事です」
「それって、単なる地下室とどう違うの?」
「罠が沢山あります」
「その砦の最上階にはできるだけ遠くの場所に繋がる隠し通路を用意しておこうよ」
「危険かもしれませんよ、逆走されてしまえばすべてが無駄になりかねません」
「じゃあ地上への穴は掘らずに、最後のスイッチを押せば爆発で土が吹き飛んで空が見えるようにしておこう。そうすれば逆走はできないでしょ」
「そうですね…では行き止まりに深い穴を掘っておきましょう。そうすれば天井の土が落ちてきても穴に収まってくれます」
僕たちは長い時間をかけて地下の秘密基地を完成させた。その頃まで僕は修業を休んだこともなかったし、地下基地の建設作業もほぼ毎日行った。
「僕はもう疲れたよ…」
その日は何か月かぶりにぐっすりと眠れた。
「タークス、街に遊びに行きましょう!貴方はもう歩けるんでしょう?ママは知らない様だけど」
「ママが僕を連れて行ってもいいっていうのなら…」
「分かった、確認を取ってくりゅ」
僕たちはミッシェルの監視の元、治めている土地に遊びに行くことを許された。正直言って僕は生まれてこの方領館しか見たことがなかったから、この日街に行くことは物凄く新鮮な気分に見舞われた。
「必ず私の目の届く範囲にいてくださいね?街は危険な場所もありますが、必ずお守りいたします」
そんなことを言われたが、ランラン気分で歩いていたため全く耳に入っていなかった。それは僕だけではなく姉も同じようであり、それが原因となり僕たちは事件に巻き込まれることになるのだった。
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