1-5 捨てられた魔道具
森を抜けて街に入ると、数多くの商店が建ち並んでいる様子が目についた。僕たちが取り寄せている商品は全てここで誂えられている様だ。姉が走り出し、僕がそれに続く。
「食堂で昼食を食べていこう!美味しそうな匂いがするよ」
シーチェルは大衆食堂に入っていった。僕はそれに慌てて続く。人にぶつかりながら、シーチェルの隣まで辿りつく。
「可愛いお客様ね。ご注文は?」
「ここで一番人気のある食べ物を頼めりゅかしら。私と弟で分け合ってたべりゅの」
「(高価な服を着ているし領主の娘さんね)アボベーゲ定食でいいかしら」
アボベーゲ定食とはアボガド、ベーグル、ゲーデー肉を主食とした食べやすくて冒険者に大人気のメニューの一つだ。
「これが冒険者人気のワイドな食事って奴ね。物凄いボリュームです。アボベーゲは半分こにしましょう」
「肉の部分は小さく切って…硬くて食べられない」
フルーツハムカツサンドのような味がして結構おいしい。冒険者にとってこの味でこの量なら人気が出ない方がおかしいだろう。コップに注がれた牛乳を飲みながら少し食べただけでほぼ満腹になってしまった。
「お嬢様、急ぎすぎですよ。余りはしゃがないで下さい。私がお母様に怒られてしまいます」
「はい、ミッチェルもたべりゅ?私達だけでは食べきれないみたいなの」
「そうですね…では、お持ち帰りさせていただきましょう。ここでの用事は済みましたか?」
「うん、もっと別の場所を見て回りたい」
「では確りと私の手を握っていてください」
僕たちは食堂を出た後は、装飾店や道具屋に向かい様々なものを買い込んだ。その後、僕たちは何が売られているか分からない寂れた一軒家に辿り着いた。
「ここでは何を売ってりゅの?」
「何も。ここは商店じゃないんだよ」
「じゃあどうして商店街に並んでるの?やっぱり何か売り物があるんでしょ」
「何も売っとらん…無暗に触るでない!そこいらに置いてるものは危険なものも多いんじゃ」
老婆は僕たちにそんなことを言う。商品のように並べてあるのだからここは店屋ではないのだろうか?それに危険な物といっても大したものではないだろう、こんな辺境の地にそんな希少なものはないだろうから。
「こんな所に一人で住んでいて寂しくはない?」
「もうそんなことは、慣れっこになってしまったよ…案外一人でも何とか生きていける物じゃよ」
「ねぇねぇ、これなぁに?何に使う物なの?」
「ここにあるものは全て魔道具なんじゃよ。だから、ここは危険な場所なんじゃ。容易に触ってはならん」
「ふうん、そうなんだ。危険なのならどうしてこんなに並べてるの?何か楽しい使い道があるんでしょ?」
「ふふん、その通りじゃ。お主が先ほどから眺めておる魔道具、それはその本人の過去を映し出す魔道具なんじゃ。思い出に耽りたいときによく眺めておる」
「へぇ、すごい!でもその何処が危険なの?」
「童の右にある小さな箱に入れてある魔道具は、この世界を破壊しかけたこともある超危険な魔道具なんじゃよ。触れたくらいではなんら危なくない物ばかりを近くに置いておるだけじゃ…もっと危険な物は厳重に仕舞っておるんじゃ」
「この箱の中身はどういう魔道具が入っているのです?世界を破壊できるなんて、信じられない」
「僕達が遊べそうな魔道具はここにはおいてないの?」
「これなんてどうかの…この魔道具はありとあらゆるものを食料に変えてしまう…呪われた魔道具なんじゃ」
「美味しいものが一杯食べれられるなんて!なんて素敵。その何処が呪われているっていうの?」
「食糧難の場所に持っていけば、忽ち戦争を引き起こしてしまうじゃろ?だから呪われておるんじゃ。人間にとって価値のある金でさえ、食料に変えてしまうこの魔道具は世間から葬り去られるべくしてここに捨てれられたんじゃよ。じゃがお主らなら正しく使えるかもしれん…ついでにこのホルダーを付けてやろう…このホルダーに食料化の魔道具をしまっておくといい」
「じゃあ、僕が預かっておくよ。ありがと、御婆さん。こんな所です照られた魔道具と暮らして本当に退屈になったりしない?ここにいなければならない理由があるんじゃない?」
「鋭い奴じゃ、子供にしては。そう、儂はここにある魔道具の効果でここに永遠に縛り付けられておるんじゃ。跡継ぎがおる訳でもないしのぉ…もし儂が逝ってしまったらこの魔道具はどうなるんじゃろう」
「持ち主が無くなれば、又適切な人の手に渡るでしょ」
「そうはならんよ。魔道具が誰かを儂の代わりにこの地へと縛り付ける。ただそれだけの事じゃ」
「また会いに来てもいい?私達が会いに来ればおばあさんも寂しくないでしょう?」
「ふぉっふぉっふぉ、生い先短い婆に気を使ってくれることは無いんじゃよ…好きにしな…」
「ミッシェルが心配してるだろうから僕たちは戻りますね…」
「この場所には選ばれたものしか入れんからのぉ…はよ帰るがよい」
外に出るとミッシェルがあたふたして僕たちを探し回っていた。
「シーチェル、タークス無事だったのですね。心配しました、何処に行っていたのですか?」
「不思議な魔道具屋さん」
「魔道具は販売していなかったじゃないか…だから不思議な老婆の家だよ」
「さぁ、もう夜がやってきます。早いところ帰りましょう」
ミッチェルと一緒に僕たちは帰宅する。ここは辺境の街、辺りは森で囲まれているが故に夜は強力な魔獣が出現する。僕達はそれらの恐怖から逃げるように急いで帰宅した。
「ただいま帰りました」
「遅かったのね…皆で夕食にしましょう」
食卓を囲み、今日の出来事を得意げに語る姉。僕はその会話を静かに聞いていた。
「この街に僕たちと同じ年ごろの子供はいないのかな?」
「この街は辺境で田舎だから、子供の数も少ないのよ…そうね…治安の悪い地区へ行けば、それでも何人かは見つかるでしょうね…それ以外なら孤児院ね。知り合いにはいないわねぇ」
「それって、危険な場所?遊びに行ってもいい?」
「日が暮れるまでに帰ってくるのよ」
僕たちの母は、放任主義だった。確かに雇われているメイドの監視下にいれば安全だというのは間違いがないし、ここにいても裏路地にいても危険度が何か変わる訳じゃなさそうだ。
「ミッシェルと、今度は友達を探しに向かおう」
ここは辺境。戦争があり、魔獣との戦いがあり、人は良く死んでしまう。孤児は珍しい存在ではない。
「戦争が起こる前に…強くなりたい…けど、同じ年ごろの子供なら会いに行ってみたいな(…長い付き合いになりそうだし)」
その日の夜はぐっすりと眠れた。
それから数日後に僕たちは孤児院を訪れることになる。
「別に私は森で遊んでいるだけで、満足だけどね…タークスが行きたいっていうのなら付いて行ってあげる!」
「どうして?同じ年の子供に興味ないの?」
「私達は領主の子供なのよ…まともに遊んでくれるはずないじゃない…趣味だってきっと合わないわよ…惨めに感じるだけよ」
「そっかなぁ…でも僕達には最終兵器があるでしょ?仲良くなれる…」
「そっかぁ、タークスって天才ね。じゃ、急いでいきましょ」
「今回も私の監視付きですからね!目の届かないところにはいかないでくださいね」
三人は教会の傍に立てられている孤児院に向かう。税金で戦争で残された子供たちがここには多く収容されている。ここの孤児院は、薬草や食物を育てて売ることで細々と生きている。
「こんにちは、連絡していた領主の者ですが…」
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