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タークスの日常  作者: @kohe75438489
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2-0 ワッカ王国の事情

 マグマベル隊長は部下数十名を引き連れて這う這うの体で帰って来ていた。快く迎え入れられた隊長は一直線に領主の館へと向かい、戦争の結果を報告する。


「隣国への遠征ご苦労であった、結果を報告し賜え」

「はっ、我が部隊と敵国は中央平原にて交戦、例年通り大規模魔法の打ち合いとなりました。魔術戦では決着がつきませんでしたが我が部隊が数に物言わせて敵兵を圧倒。あと一歩で壊滅させることができそうでした。ですが、敵部隊は領主を守るように殿部隊を残して撤退。我々は完全な勝利を求めて領主の息の根を止めに追撃を開始しました」

「ふむ、そこまでは報告通りであるな。それからどうなったのだ?」

「はっ。領主は自らの領地まで撤退。ですが一部の壁を破城槌で壊し侵入し、領館の中まで追い詰めた筈でした。ですが領館の中には誰もおらず、街の住人も既に避難した後だったのです。私達はまんまと罠に嵌められました。領地のありとあらゆるところから爆発が起こったのです。私の率いていた部隊はほぼ壊滅状態に陥りました。魔法障壁を張って守れた数名と奇跡的に生き延びていた数名とを引き連れて撤退を指揮したわけであります」

「ほほお、それは興味深い。街に爆弾を設置する策士が向こうにはいたというのだな?設置型の爆発罠はその威力の低さから諦められた技術だが、何か新しい物質が見つかったのやもしれぬ。良く情報を持ち帰ってくれた」

「ははっ。敵の策にはしてやられました。ですが今から再び攻め込めば確実に一つの領地を奪えます。私に再度出撃の許可を」

「それはできない相談だ。今回の戦争は引き分けで片が付いた。例年通り、戦うならまた5年後だ」

「何故です?これは又とない絶好の機会なのですよ?せめて理由位教えてください」

「そうか、…いいだろう。まぁ座り給え。酒でも注ごう。最初から順を追って説明しようじゃないか」


 近くのソファにマグマベルは体を預ける。戦場から一直線にここにやって来たので、体の全身が披露して休息を求めていた様だ。戦争終結を知り、安堵の溜息をつく。


「では私は暫く休息しても宜しいのですね?安心致しました」

「マグマベル隊長はよくやってくれた。そこのところは安心してくれ給(たま)え。既に停戦協定は結ばれた。暫く戦う必要はない。ゆっくり体を休めてくれ…それで、何処まで話したかな?」

「今戦わない理由は何なのかという所です」

「結論だけ言ってしまえば簡単な話なのだよ。戦争の目的は十二分に達成したからだ。我々は余り敵領土の侵略にあまり興味がない。侵略したとしても余り旨味のある場所ではないし、仮に領土としても直ぐに奪い返されてしまうだろう。我々が戦争をしているのは、領土が欲しいからではないのだよ」

「では一体何のために、戦争なんかを態々引き起こしているんです?」

「私達はあらゆる魔道具を使い、生活は便利になり街の中にいる限り外を闊歩している魔獣(モンスター)から襲われることもなくなった。その為、非力なものでも法律を守っていれば幸せな人生を送ることが可能となり人口は爆発的に増えた。これはわが国だけではなく、他のどの国にも言えることだ。このことは、知っていたかね?」

「ええ、まぁ。私も一応ではありますが兵士学校を卒業しておりますから、最低限度の知識はあります」

「ではそれがどういう結果を齎(もたら)すか考えたことはあるかね?」

「いえ…全く。平和になって人口が増えること、それは良いことではないのですか?」

「マウマウラビットを繁殖させ、一定の領域に詰め込んで育てるとどうなるか知ってるかね?一定数を越えるとマウマウラビットはなんと自殺を始めるんだよ。人間でも同じことが起き、人口が爆発的に増えれば人は自殺しだすんだ。そんな社会に未来があると思うかね?」

「確かにそれはより良い社会とは言えないでしょうねぇ…。では増えすぎれば都市の外に出せば宜しいではないですか?また新しい街を作ればよいでしょう」

「それよりももっと簡単な解決方法があるとは思わんかね?これは軍務に関わっている者なら誰でも知ってしまうことだよ」


 フレッシェン卿は自ら注いだ酒を一気に呷った。それにつられてマグマベルも酒に手を付ける。


「戦争ですか?」

「そうだ。戦争だ。溢れた人口を消費するには戦争は最も都合の良い方法なんだ。私達は意図的に戦争をし、意図的に人口を減らしている。両国の間の戦争は、やらせのような物なんだ。戦争する事にこそ意義があるのさ」

「それでは、私が領地に攻め込んだ意味は?」

「戦争に最早意味はない。全てが形骸化してしまっている。人口を減らすための手段にしか過ぎない。そして貴殿の任務は終了だ。理解したかね」

「言葉の意味は理解しました。ですがまだ信じられません。私の部下たちは、無駄死にだったのですか?」

「無駄死にではなかった…充分我が国に貢献してくれた」

「暫くの間休暇を頂いても宜しいでしょうか?部下を弔いに行ってやりたいのです」

「そうだな…行ってやるといい今言った通り、次に起こる戦争は5年後だ。それまでには帰ってこい」

「今までお世話になりました」


 マグマベルはワッカ国の全ての兵士達の慰問に回り、それが終わるとナッゲリュー国の戦争で死んだ人たちの慰問へと向かった。彼は戦争を悼んだ立派な隊長だと、未来の伝書に記されることになる。


「不思議な奴だった。もしこれからの軍務に支障が出るのなら始末するしかないと準備していたのだがな」

「良かったのですか?このまま行かせてしまって」

「ああ、彼ほど無害な人物もおるまい。事の真相を知ったとして、忠義の厚い男よ。あのような人物がまだ残っておるとはな…この国も捨てたものではないな」

「左様でございますか、気が変わればいつでもお申し付けください」


 フレッシェン卿は街並みを見ながら、マグマベルの供述を書類へと書き記している。


「向こうの領地は、爆弾で木っ端微塵か。戦争なんて、本当はしない方がいいんだろうが…政治がそうはさせない」


 この街も辺境。この土地には何の価値もない。それにしても、爆弾でこの街を吹き飛ばすなんて大胆な作戦を考えたものだ。もし同じような状況に追い込まれたとして、この街を廃墟にしようなんて思いつきもしない。私ならばマニュアル通り隣街に逃げて、この街を包囲し奪還するだろう。


「クローブ、いるか?」

「はい、ここに。何か御用でしょうか?」

「ナッゲリュー国で使われた爆弾について調査してこい。どのくらいの威力の物でどれくらいの機能が搭載されているのか、詳しく分かったら戻ってこい。分かったな?」

「はっ。調査機関と、調査範囲はどのくらいでしょう」

「一先ず隣接している領地で使われた爆弾について調べが付いたら一旦戻ってこい。本来の調査範囲はナッゲリュー国全体だ」

「隣接領地は爆発ですべて吹き飛んだと聞き及んでいますが…人が残っているのでしょうか」

「領地が吹き飛ばされた後、伏兵に襲われたらしい。つまり住人は無事って事だ」

「それは朗報ですね。直ぐに行って調べてまいります」

「相手には切れ者がいる。今回の任務は充分に気を付けるんだ」


 戦争なんてなかったかのように、普段通りの生活を続けている民たちを見ながらもっと素晴らしい政策はないものかとその日ばかりは頭を悩ませる。


「私一人で考えても答えは出そうにない…という事だけは理解できた…この地獄のような世界を救ってくれる人物が現れたりしない物かな…」


 全ての問題を解決できる人物、それこそがまさしく伝説の勇者という存在なのだろう。







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