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闘将(たたかえ)!ダンゴロン3兄弟!!(&リザーバー2名リタイア済み)

ずいぶん長いこと時間を空けてしまいました、まことに申し訳ありませんでした。

思うところあって150年ばかり時間旅行をしておりました。

もう駆け足で行ける年齢ではありませんので、ゆっくりと歩いて行こうと思います。

怪獣同士の闘いの場から輸送ヘリは既に遠く離れ、人間の目には都市の影すらもう見えない。

ヘリの貨物室に座って小窓から外を黙って見ていた老人(に擬態した)大怪鳥・バルバルゥスがイライラした声を出した。


「おい、若造!」

「…………」

「返事ぐらいせんか、若造!」

「…………」


操縦席のパイロットに声をかけるが反応はない。

ヘッドフォンをしているせいで老人の声が聞こえないのだろうか?


「チッ、聞こえんフリしおって……ジン・カイザウェル巡査、ちょっと頼みたいのだが!」

「おや?謎の大富豪のバル様、私めに何か御用デ?」


やや意地の悪さを含んだ声で答えるパイロットのジン。

礼儀正しくかつ白々しい態度はあからさますぎて清々しいほどだ。


「貴様がさっきから見てる映像をこっちにも回せ!」

「はて?派遣警官の仕事ぶりなど興味がなとおっしゃっていたのでハ?」

「こちらが派遣した銀河パトロール隊員が奮戦中なのだ、知らぬフリするわけにもいくまい」

「不鮮明な監視カメラの映像など必要ないのでハ?貴方の目、視力ならこの距離でも十分見えていたでしょうニ」


バルバルゥス―――見た目は平凡な老人だが―――正体は宇宙を超光速で飛び回る宇宙怪鳥!

その視力は衛星軌道上から人間の顔を見分けることも造作ない。

事実、ついさっきまでバルバルゥスは彼方で繰り広げられる大怪獣ルキィと甲殻怪獣ダンゴロン3兄弟(プラス2)との戦闘を直接見ていたし、そのことをジンも気づいていた。

しかし今、バルバルゥスはイラつきながらコンコンと小さな窓のガラスを叩いて不機嫌な言葉を吐き捨てた。


「ふん!さすがに高齢(とし)で視力が落ちてな。それにこんな安物のガラス越しではよく見えん」

「そうですカ、では……」


空中に浮かぶ厚さゼロミリのディスプレイの一枚がいきなりホワイトアウトした。

と思った次の瞬間には巨大な赤い怪獣と、やや小さめのアルマジロ似の怪獣3体が睨みあう修羅場を映し出した。

驚いたのはバーチャルディスプレイ群を操作していた少年・スパロウ君だ。


「僕のシステムに介入したッ?ど、ど、ど、どうやって……」

「ああ、僕じゃないヨ。元同級生にチョット頼んでネ」

「そうか、狂咲(くるいざき)教授……」


狂咲の名前を出しかけて、何か言いかけてスパロウ君は沈黙する。

紙一重の向こう側の天才科学者・狂咲 凶子の名は執事見習いの彼でも耳にしていた。

常人の手の届かない領域に居座る銀河最高の超頭脳、かつ関わりあってはいけない存在として。

彼女がこの惑星・地球出身とは聞いていたが。


「そういえば『歩く大災害』が数年前に里帰りした、と聞いていたが。貴様とつるんでいたとはな」

「おやおや、ご存じとばかり思ってましたガ」


少年の思考の続きを続けたのはバルバルゥスだった。

映像の鮮明さが気に入ったのだろう、不機嫌さは影を潜めている。

映像に見入っているせいか、ジンの無礼な物言いにも関心がない。


「何分、忙しい身でな。辺境惑星の動向まで気にしていられんのだ」

「なるほど、ところで……映像にご満足いただけましたカ?」

「……どういう意味かな?」

「大した意味は、ただ『一番見たいもの』がなかなか映らないのでは、と思いましテ」


ジンの気遣い?にバルバルゥスは答えない、表情も変えない。

対するジンは背中を向けたまま、ヘリの操縦に専念している、ように振舞っている。

老執事スワロウは黙って無表情に揺れる機内で直立不動の姿勢を維持している。

スパロウ少年だけはどうしていいかわからずに、狼狽えているだけだった。

それでも少年の指先は一瞬たりとも澱むことなく、正確精密迅速に膨大な情報量を制御していた。

その結果は?少年の予測結果を聞いたバルバルゥスは、少しだけ機嫌を悪くした。


「3分30秒で……ルキィ巡査、重傷を負って敗北……」

「スワロウ、お前の息子はやはり半人前だな。決着は戦闘開始後、1分というところか」


主人の評価に少年は恐縮し、老執事は沈黙のまま一礼した。


★☆★☆★☆★☆★

にらみ合いが続く巨大な赤い怪獣・ルキィと、一回り小さいものの3体で包囲するアルマジロ型甲殻怪獣・ダンゴロン3兄弟。

ルキィは足を止めて敵の出方を待ち、ダンゴロン3兄弟は少しずつ間合いを詰めてくる。

そして3兄弟の真ん中、体が一番大きい奴、おそらくは長兄が口を開いた。


「いい気になるなよ、小娘!」

「こっちはまだ本気じゃねーだよ、小娘!」

「プロの恐さを思い知らせてやるぜ、小娘!」


調子に乗った次男、末弟らしいのが野次を入れる。

その挑発に対し圧倒的に不利な状況にあるルキィは……喜んだ?


「や、やっぱり?私みたいな小柄で華奢な小娘じゃ、相手になりませんよね?」

「えっ……い、いやそーゆー意味じゃ……」

「私もどーかなー?って思ってたんです!小娘ひとりじゃ無理かもって!」

「い、いや。こっちこそ3人じゃ心もとないかなーって……」

「わかってるんです、私じゃまだまだ力不足だって!」

「ど、どっちかってゆーと、力ありすぎな……」

「ですからッ!私ッ!全力でッ!お相手しますッ!ヨロシクお願いしますッッッ!」


3兄弟はそれ以上は言葉を返さなかった、返している場合ではなかった。

犯罪怪獣仲間で囁かれていた辺境の魔獣『赤い怪獣』の、あの巨体、あの怪力が、全力で反撃してくるのだ!

まことしやかな武勇伝が単なるウワサでないことを今、体感してハッキリ悟った。

自分たちが命のやり取りの瀬戸際に立たされてしまったことを。

気を引き締めて体を小さく丸める、一見して防御を固めたに見えるが!

これこそ彼らの最終戦闘形態、自信と同時に闘志が再燃する!


「……殺るぜ、デカイだけで勝てると思うなよッ!」

「えっ、ワタシ…デカイ?」

「テメーが独活の大木だってこと思い知らせてやるッ!」

「独活の……大木ぅ?」

「馬鹿力だけで生き残れる世界じゃねーん……ッ???」

「…………だ・れ・がッ!馬鹿デカくてッ、ゴッツくてッ、筋肉ダルマな馬鹿オンナですかぁッ!」

「え……俺たち、そこまで言ってない……ヨ」×3


ルキィの全身から物理的圧力をもった怒気と殺気が放射された。

3兄弟の、燃え上がった闘志が一瞬で、吹き消されそうになった。

少し離れたところ、痛車パトカーの中に退避していた見た目美少女・真榊 弾太郎巡査とロボット巡査・Kにも危険の気配が押し寄せてきた。


「ルキィさんの様子が変です?弾太郎さん、どうします!」

「すぐに移動を!避難所のバリアの影に!あそこならなんとか!」

「バリアの影に?そんなに危険なのですか?」


黙ってうなずく弾太郎の顔にはわずかな余裕もない。

それ以上は何も聞かずにKはアクセルを踏み込んだ。

ギャギャギャッと車輪を軋ませて痛車パトカーを走らせ、避難所入り口である体躯館の向こう側に移動する。


「これで避難所の防壁(シールド)を利用できる。多少は安全なハズだです」

「とにかく移動させましたが。そんなにあの敵は危険なのですか、弾太郎さん?」

「イヤ、危険な敵というより……敵が危険な状態に、あ!始まったッ!」


ズズシィンッッ……大地を揺るがして、ルキィが一歩踏み出したのだ。

戦闘再開を告げる一歩、その一歩は恐るべき地獄を生み出した。


「グギャァァァッッ!」


地獄の底から響いてくるかのような絶叫!

正確には言うなら足元から、もっと正確に言うならルキィの足の下からだ。

3兄弟とルキィの視線が悲鳴の発生源に集中する。


「えっ?あっ、しまった……」

「あ、テメェ!」「なんてマネしやがる!」「それでも警官かよ!」


そこに、ルキィの足の下に忘れさられた戦士がいた。

さっきルキィに踏みつぶされて地面にめり込んでたカメレオン怪獣さんだ。

完全に失神していたカメレオン怪獣さんだったが、体重5万……4万9千8百50トンの加重を受けて即座に目を覚まし、そしてすぐまた失神した(負傷者→再起不能(リタイア)にクラスチェンジ)

まぁルキィの体重、これだけの超重量で踏まれれば当然だろう。

ルキィもさすがに慌てて足をどけて飛び下がった。


「す、すいません!今どきますから……あ、ああッ?」

ベキブキバキバキポキ……

「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

「ご、ごめんなさい!すぐにどきますから!」


跳び下がった先にはもう一人の『忘れられた戦士』がいたッッ!

真っ先に不意打ちをかけて散った、あの従弟のアルマジロ怪獣(小型)さんだ。

こっちは自力で意識を取り戻したばかりのところに、全体重を乗せて着地したルキィの片足が背中に降ってきた。

結果、いろいろな何かが砕け潰れひしゃげていく、沢山の嫌ァーな異音を自分の体の内側から聞いた。

そしてドロッとした液体を吐いて、アルマジロ怪獣(小型)は再び意識を失った。

従兄弟&幼馴染を踏みつぶされて、当然だがダンゴロン3兄弟は激怒した。


「て、テメェッ!」

「よくもやってくれたな!」

「もう許さねェッ!」


一列に並んだアルマジロ怪獣たちの、あまりの剣幕にルキィも焦りまくった。

現行犯とはいえ「逮捕前の犯人怪獣を踏み潰しました」など過剰防衛もいいところである。

ここはとにかく、平謝りに謝るしかない。


「す、すいません!ワザとじゃないです!」

「るっせェッ、このデカ女!」

「謝って済むか、独活の大木の分際で!」

「ちょっと図体がデカイくらいで図に乗り……やがって?」

「…………あ?…………今、なんて言いました?」

「…………えっ?」×3


ダンゴロン3兄弟は気づいてなかった、自分たちが余計な一言を口にしてしまったことを。

3兄弟の罵詈雑言が耳に入るたびに、ルキィから発せられる禍々しい闘気が強さとドス黒さを増していくことに。


「誰が、体重5万トン越えのデカ女ですか?」

「え、5万トンもあるの?」

「誰が、馬鹿力だけが取り柄の頭の悪い独活の大木ですか?」

「い、いや?そこまでヒドイことはいってないぞ?」

「誰が、誰が!誰がッ!ちょっとカワイイだけのうすらデカイ馬鹿力の怪獣娘ですかッッ!」

「ま、待て!そこまでくると冤罪だぞ?!」

「やかましいです……今すぐ殺してあげます!」


もう何を言っても無駄だった、このままではダンゴロン3兄弟の生命の危機だッ!

グズグズしているヒマはない、ダンゴロン3兄弟は体を丸めてシュバッと三方に散った!

いや、散ったのではない、散開してルキィを取り囲んで高速で回り始めた。

見え透いた目くらまし、ルキィは惑わされることなく各個撃破を考えたが……


「これはッ!さっきより全然速いですッ?」

「俺たちが!」「さっきまでと!」「同じとは!」

「思うなよ!」×3


三つの異なる方向、異なる高さ異なる軌道、そして異なるスピードだが?

収束点とタイミングは完全一致、一歩も動けないルキィに集中攻撃!

考えているヒマなどなし!

バンッ!爆発のような音と土煙を上げてルキィはグランドを蹴った!

ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ!空中で見事な後方宙返りを決めたルキィの真下を3つの巨大球が通過する。


(危なかった……コンマ1秒遅れていたら……)


熱くなっていたルキィの背筋に冷たいものが走った。

躱す伏せるは間に合わない速度、受けきるのは無理な破壊力、空中に逃れるしかなかった。

そうしなければルキィは全身の骨を砕かれて倒されていただろう。

離れて見ていた弾太郎も安堵する。


「今のは危なかっですね。Kさん」

「ええ、素晴らしい反射神経で……まだです、弾太郎さん!」


弾太郎たちの眼前で信じられないことが起きていた。

必殺の攻撃を外されたダンゴロン3兄弟の軌道が一斉にUターン!

着地寸前のルキィに殺到した。

未だ地に足が触れていないルキィは再度のジャンプで逃げることはできない。

空中では自由な回避運動もままならない、絶対絶命の状況下でルキィにできたのは……


(受けも回避も無理ならば!)

「攻撃あるのみ!ですッ!」


不利な空中で咄嗟にルキィは身をよじって、3兄弟のうち二人に右腕で掌打、左足で蹴りを繰り出した。

しかし足場のない空中、無理な体勢では硬い装甲を誇る敵に対してダメージを与えられるはずもない。

案の定、掌打も蹴りもやすやすと弾かれた、と誰もが思った。


「おおっ?」

「やるね、ルキィさん!」


冷静な機械のはずのKの驚きと、弾太郎の賞賛。

確かにルキィの攻撃は跳ね返された。

しかし回転の反動は強烈で、地に落ちかけていたルキィの巨体を再び真上に押し上げていた。


「何ィッ!」「ちィッ!」「躱しやがったッ!」


交差する3兄弟の攻撃はまたしても何もない空間を通過するだけに終わった。

最初の攻撃より格段にスピードダウンしていた、無理な軌道変更でUターンしたのが原因だった。

最初のスピードを維持できていたならば、今頃はルキィの無残な姿が晒されていたことだろう。


★☆★☆★☆★☆★

視界のはるか外まで離れた輸送ヘリの中で、バルバルゥス老は静かにスポーツ観戦しているかのように、執事スワロウは一見無関心に、少年室時見習いスパロウ君は息をつめて緊張して映像を見ていた。

ポツリとスパロウがつぶやく、生まれて初めて見る巨大怪獣同士の戦いに恐ろしいほど圧倒されていた。


「すごいや……これが本物の戦いなのか」

「まだ序盤だ。そんな緊張していては決着までもたんぞ」

「は、はい!すいません!」


バルバルゥスの優し気な忠告に幼い少年は姿勢を正して深呼吸をした。

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