表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森林開拓日誌  作者: tanuki
森を守るお仕事
67/188

五日目・シャールの町⑤

 意気込んで向かった雑貨屋だったが、結果は芳しいものではなかった。石像を5体持ってきたのだが、どれも大した金額にならなかった。最初の提示金額に納得がいかず、交渉に交渉を重ねたが、結果は5体で銅貨12枚にしかならなかった。帰りの荷物を減らすために、仕方なくそこで妥結した。

 先程のように建物と建物の間に入り込み、リリティアさんと話をする。

 「あまり値が付きませんでしたね」

 「石像はサイズがそのまま金額に反映される。小型の石像ならばあの程度になっても仕方ないだろう」

 「出来はいいんですけどねぇ。クマが鮭を咥えているやつなんかは躍動感がありましたし、イノシシは毛並みまで再現されていました」

 この2つは、森の近くにある町には身近な生物だろうと思って用意した。

 「動物の石像は、人間の世界に住む動物たちを精巧に模して作られている。神々や精霊たちにとって、見たことのない動物たちだからな。その姿が見られるからと人気になり、シリーズ化された。今では数十の世界の動物が石像化されている」

 それで地球の動物も石像になっているのか。・・・ん?石像は実物そっくりに作られているんだよな。

 「じゃあ、三葉虫もトリケラトプスも、あの姿・形をしてたってことですか?」

 「商品化する際、細部まで拘って作られているはずだ。私は本物を見たことがないから断定はできないが、おそらくあの姿で実際に生きていたのだろう」

 身近な生物だけでは面白くないと思い、残りの3つはこの町の近くにはいなさそうなものにしたのだ。しかし、トリケラトプスはあんな姿をしていたのか。他の恐竜や古代生物もあったから、暇な時に作ってみよう。恐竜は太古のロマンだ。

 「まあ、雑貨屋の主人には笑われて終わりでしたけどね。こんな生き物がいたら見せてほしいって。見れるものなら俺が見たいってのに・・・もう一つ、ユニコーンもダメでしたね。馬に角をつけただけの陳腐な創作だって、散々な言われ方でした」

 「そう言っていたな・・・だが、居るぞ?あれ」

 「え?」

 「居るぞ?森に」

 1つくらいは想像上の生き物でもいいだろうと思って、最後の1つはユニコーンにしたのだ。サラブレッドに似た体躯と額からまっすぐ伸びる角。長いたてがみがたなびかせ悠然と佇むその姿に、俺は胸を高鳴らせた。製品カタログの写真を一目見て気に入り、即決したのだ。そんなユニコーンが、実際に存在する?

 「森にいるんですか?」

 「ああ。人里近い所には生息していないため、この町の住人が知らないのも無理はないがな。警戒心が強いため滅多にお目にかかれないが、北の山脈の麓が主な生息域だ」

 「ホントですか!?いるなら是非会ってみたいなぁ」

 「それならば尚更、管理の仕事を頑張ってもらわないとな。生息域で仕事をしていれば、目にする機会もあるだろう」

 「はい。頑張ります」

 この仕事を続けていれば、ユニコーンに会えるかもしれない。それに、未知の生物はユニコーンだけではないだろう。それを考えるとやる気が出る。食事の不安がなくなったこと、それが何より大きい。銀貨や銅貨の入った革袋に手を入れ、その感触を確かめる。固くひんやりとした、金属特有の手触りがした。

 「そうだ、これから鉱物商の所へ行こうか。転移装置製作に必要な金属が売っているかもしれない。おそらく今購入できる金額ではないだろうが、あるのかを確認するだけでもしておこう」

 「そうですね。いくらで買えるのか、わかっていれば目標になりますからね。必要な金属は確か・・・鉄とプラチナと・・・あと何でしたっけ?」

 神の門の取扱説明書に付いている、製品カタログには必要な材料も書いてあった。それを読んだのだが、忘れてしまった。数字と元素に関しては頭が勝手に拒否してしまう。文系の俺には仕方のないことだろう。

 「スズと水銀、タングステンだ。スズと鉄は買えるだろうが、プラチナはないだろうな。あっても銀貨では到底足りないだろうが」

 プラチナだもんな。銀と比べたら、日本でもかなり高価だろう。

 「タングステンは、この世界ではまだ発見すらされていないし、水銀はオストーンでは一般の販売は規制がかかっている。毒薬として利用された事件があってな。全国的に販売も所持も許可制になった」

 タングステン・・・漫画で出てきたなぁ、という程度の知識しかない。水銀は、中国では不老長寿の秘薬とされていたんだっけ。でも、人間にとって有害だから、実際には寿命を縮めるだけだったらしい。

 「規制されているなら、そもそも俺が持ってはいけないんじゃないんですか?」

 「どうしてだ?オストーンでは許可が必要だ。だが、森はオストーン領ではない。お前の水銀所有について、何も問題もないぞ?オストーンがどう考えているのかはわからないが、実効支配をしているわけではないからな」

 森はどの国にも属していない、そんな説明をされた気がする。だが、いずれにしても水銀の入手方法については考えないといけない。それ以上に希少そうなタングステンもだけれど。

 「わかりました。まあ、ここで考えても仕方ないですね。鉱物商の所へ向かいましょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ