プロローグ
———いい子で待っててね。
玄関で手を振り、朝お母さんはお仕事に行くために家を出ていった。
だから、いつものようにテレビを付けて好きなアニメを見て待つことにしたんだ。
だけど、その日、お母さんはお仕事から帰ってこなかった。
夜まで帰りを待っていたから、ソファでそのまま眠ってしまっていたみたい。
好きなアニメはもうやっていなくて、朝のニュース番組が流れていたんだ。
お腹が減ったから、昨日の朝、お母さんと食べた食パンの残りと冷蔵庫の牛乳を自分でコップに注いで食べたよ。
いつも零さずに出来るから、お母さん褒めてくれるんだ。
たまに、お母さんが帰ってこない日があったから、お仕事が忙しいのかなって思ったんだ。
だから、ここで待っていさせて。
知らない大人に連れてこられたのは、児童養護施設っていう子供が集まって生活している施設だった。
お気に入りのおもちゃとお洋服を鞄に詰めて、僕はその場所の門の前に立っていた。
「ここが今日から、蒼真くんのお家だよ」
知らない大人はにっこりと微笑んだ。
建物の中で知らない大人と大人が何か話しているけど、意味はよく分からなかった。
———ねぇ、僕のお家はここじゃないよ。
お母さんとのお家があるよ。
声に出したかったけど、出なかった。
不安になって、泣きそうな顔をしていたら、ここの園長先生と名乗るおばさんがまた、優しく笑った。
「大丈夫よ、今日から一緒に暮らそうね」
そのひと言で、僕はもうお家に帰れないんだと知ってしまって、声をあげて大泣きした。
泣き出した僕に慌てて、2人が背中を擦ってくれたりして、なだめてくれたけど、涙は止まらなかった。
しばらくして、生活する部屋に通された。
そこには僕と同じ位の男の子が居て、なんだか、凄く寂しそうな目をしているように見えた。
「蓮くん、今日から同じお部屋の蒼真くんよ」
園長先生がそう言うと、蓮くんと呼ばれたその子は、ただ静かに頷いていた。




