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僕の世界  作者: 0u0
第一章
1/33

あるいは、開演前

 金色が、闇に浮かんでいる。

 目が慣れると、それが天井の縁取りだと分かる。翼を生やした人たちの絵が、色あせた空を舞っている。

 その下に、赤いビロードの席が何百と並んでいる。どの背もたれにも、誰の頭もない。

 埃と、古い布のにおいがする。空気は冷えて、動かない。

 物音は、ひとつもない。

 正面の舞台で、閉じた幕だけが──かすかに、揺れている。


「……よし。だれもいない。……よ、っと。──わ、」


「……いったぁ……。まくの、ばか」


「…………。」

「──や。……やあ。ふたりとも、こんなとこにいたの」


「じゃあ、こっちが王さま。こっちが、どろぼう。……ん? ぎゃくだったかも。……ま、いっか。おんなじ顔だし」


「王さまがパンをとったら、『おめしあがりください』。どろぼうがパンをとったら、『つかまえろ』。──おんなじ『とる』なのにね」


「…………。」

「──ねえ。いつから、そこにいたの?」


「みてた? いまの。……ちがうよ、あそびじゃないよ。おしごと。……こほん」


「──ようこそ、お客さま。ほんじつは、かいてん……かいえん? ……どっち? ……ふふ。まあ、どっちでも」


「──…………もういいや」


「ねえ、きみ。……みにきたの?」


「ここ、なんにもないよ。だれもいないし、なにもおきてない。……それでも、みてく?」


「……ふうん。……ものずき」


「……あ。そうだ。こういうときの、あれ。……えーっと」


「──本日は、まだ何も始まっておりません。なにひとつ」


 幕が、音もなく、ゆっくりと開いていく。

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