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名もなき物語〜主人公のいない物語〜  作者: 真黒
第一章 「世界の“矛盾”」
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第一章 21話 「デート大作戦!(計画編)」

「何て言えばいいんだろう。そもそも愛美、OKしてくれるかな。」


真雲雷は、悩んでいた。何に悩んでいるかといえば、彼の年ではごく普通のことである。それは、愛美をデートに誘うという任務であった。

なぜそうなったかを語るためには、この日の昼休憩に遡らなくてはいけないだろう。


雷がいつも通りに席に着くと,佳奈がニヤニヤしながら歩み寄ってきた。


「真雲,聞いたわよ?愛美と何か進展あったんでしょ。」

「いえ,何も!」


昨日のことを思い出し,顔が熱くなる。流石に言えない。愛美の家で寝落ちして泊まったなんて。詮索から逃れるように,佳奈に矛先を向ける。


「じゃあ浅野はどうなんだよ。」

「えっ、いやっ、...何もなし。」



このような経緯で雷は佳奈と話していた。その課程で、互いに自分の想い人をデートに誘うという話が登場し、雷はつい勢いでそれに乗っかってしまったのだ。


「真雲はどこに行く予定なの?」

「僕はショッピングモールで買い物でもしようと思うんだけど、どうだろう。」

「いいんじゃない?無難で。ってか、愛美の誕生日、もうすぐだよ。丁度いいじゃん。」

「初耳だ...。」


思いがけない新情報に、佳奈と二人で妄想していたデートプランが、形をなし始める。


「待ち合わせは駅がいいわね。」

「ショッピングモールで待ち合わせじゃだめなのか?」

「馬鹿ね。デートは、二人の時間を大切にしないと。歩いてる最中も雑談とかできるでしょ。」

「なるほど...。」


意外にもそういったことに詳しい佳奈に尊敬のまなざしを向ける。


「どこでそんなこと学ぶんだよ。」

「真雲が知らなさすぎなのよ。」


そういえば、と雷は一つの懸念を持ち出す。


「浅野、聞きたいことがあるんだ。」

「何?」

「この前愛美の家に行ったときなんだけど...」

「ちょっと待ちな!」


突然佳奈に話を遮られ、雷は少々苛つきながら聞き返す。


「...何?」

「あんた、愛美の家に行ったって言った?」

「言いましたけど?」

「それはもう99%確じゃん。何日和ってんのよ。」

「だから、聞きたいことがあるって言っただろ...。」


雷は佳奈に愛美の突然の発作のことを話した。最初のうちこそ彼女もいやいやといった感じだったが、次第にその目つきは真剣な物に変化していった。


「...という訳なんだ。」

「愛美はなんか言ってた?病気とか、そっち系の話。」

「いや、だから浅野に聞いてるんだ。昔からそういう発作はあった?」

「いや、そんなの全くなかったよ。」

「「う~ん。」」


悪魔や魔法のことについて、佳奈には伏せて話しているため、解決の糸口など見つかるはずもない。結局そのことについて何も進展はないまま、今に至る。


結局何も思いつかないままに、愛美を待つべく校門前でうろうろしていたのだが、


「ら~いくん!」


雷の心など知るよしもなく、愛美はいつものようにその可憐な笑顔で飛びついてきた。


(絶対に、言わないと。この機を逃しては、きっと後で後悔する。)


大きく深呼吸をして、愛美の目をまっすぐに見つめる。


「...雷くん?」


愛美の大きな瞳が、不思議そうに上目で見つめてくる。


「...愛美、もしよかったら明日、僕とデートに行かない?」


愛美の目が、こぼれんばかりに大きく見開かれた。


『作戦その1。愛美はいつもからかう側だけど、押しに弱い。だから、できるだけ衝撃の強い言葉を最初に持ってくること。』


佳奈と話し合って決めた計画の一つだ。

案の定、愛美は顔を真っ赤にして指を絡ませた。


「えっ、そのっ、で、でーと?わたし、一回もやったことないんだけどっ!」

「大丈夫。僕がリードしてあげるから。」

「えぇぇっ!?」


(よし、計画通り!愛美にちょっと悪い気はするけど。)


「デート、してもい、いいけど...」

「いい?本当?」

「...うん。でも、ちゃんとリードしてね?」

「もちろん!」


(嘘だろ、本当にOKされちゃった!)


「僕が言うのもなんだけど、本当にいいの?」

「...うん。だって、雷くんだもん。」


天にも昇るような心地で、愛美と別れる。


「明日、駅前で10時半集合で!」

「わかった。とびっきりのおめかししていくね。」


とびきりの笑顔で、愛美は見送ってくれた。




雷が角を曲がった直後、愛美はその場に膝をついた。


「っあ、っふ、けほっ。」


(また、だ。息ができない。気持ち悪いっ!)


正体不明の吐き気に襲われ、立つことすらままならない。


(雷くんに心配かけたくなくて、平気なふりしてたけどっ、もう無理っ!)


視界が狭窄し、地面が急激に近づいてくる。


(わたし、死ぬの、かな?)


しかし、重力に従って地面に投げ出されるはずだった彼女の体はふわりと受け止められた。


「久しぶりに来てみれば、どうしたんだい?暑さにやられたのかい?」


聞いたことのある優しい声に、愛美の意識が覚醒する。


「ちょっと待ちなさい、今楽にしてあげよう。『治療(キュア)』」


その魔法の発動を境に、先ほどまでの吐き気と呼吸困難な状況は幻のように霧散した。


「あ、あぁ...」


愛美は、自分の体を抱きかかえる人物の顔を認識し、声を漏らした。


「大丈夫かい?私の可愛い愛美。」


美しい金髪に、特徴的な金縁の眼鏡。温和な表情を浮かべる、整った顔立ち。


「真門おじさん!」

「ただいま、愛美。」


「真門おじさん」は、優しく微笑んだ。

真門おじさん登場です。さて、どうなることやら。

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