ルルガ公国
クック海軍基地より東に位置するダラ島に建てられた、ルルガ公国の首都モーラン。
イャンガル諸島で最も島の面積が大きく、それに伴って都市規模も大きい。
十一月の下旬とあって季節は春から夏に移ろいつつある。
温帯に位置するイャンガル諸島。
四季があり、一年を通して過ごしやすい。
公用車であることを示すルルガ公国とランデル国の国旗がはためかせながら、ヘルブレード一行は公都のメインストリートを馬車で進む。
「ヘルブレード大将、こちらが当国で一番の市場、トルム地区です」
首都の見どころを紹介するクルス。
トルム地区には様々な国の交易品を並べた交易所が並んでおり、各国からやってきた商人たちが、こちらにはわき目も振らずに商談に勤しんでいる。
「活気がありますね」
金髪をなびかせながら、窓から街並みを見て呟くコルベット参謀長。
商家の出身であるだけに、コルベットは南半球有数の市場トルムに強い興味をもつ。
市場を抜け、王城が見えてくる。
建国以来、戦災にも見舞われず、数百年の歴史を見守ってきたベリス城。
琥珀色の屋根と白い外壁が美しく、ガイドマップにも大きく載ってある。
王城前広場に建てられた建国の英雄像の横を通過し、ベリス城にある停車場で馬車が止まる。
馬車を降り、正門への道を進む。
正門へと続く赤い石畳の両脇には正装の衛兵たちが整列し、ラッパを奏でながら一行を出迎える。
(皮肉なものだな)
前世で魔王として人類に戦いを挑んだヘルブレード。
ベリス城とその衛兵たちを前世で敵対した人間軍に重ねながら、城門前で立ち止まる。
「開門!」
門番長が指示を出し、城門がゴゴゴという重低音を鳴らしながら内側に左右に開く。
「ようこそいらっしゃいました。
皆様のご来訪を心より歓迎いたします」
最敬礼しながら出迎える儀典長。
彼に案内される形で、大公の待つ謁見の間に進む。
ヘルブレード、エレナ、コルベッド。
一挙手一投足、失礼のないように注意して城を進む。
(ずいぶんと綺麗好きな様だな)
日光が反射するほどに磨き清められた内装。
とにかく明るく、女神が住んでいそうな神聖な空気さえ感じる。
暗く、禍々しい雰囲気に包まれていたヘルブレードの居城とは真逆のデザインである。
「門を開けなさい」
儀典長の指示に従い、謁見の間の門が静かに開く。
奥には玉座に座る大公。
きらびやかな装飾品で飾られ、髭は左右対称に立派に整えられている。
「ようこそいらっしゃいました、ルルガ公国大公のリレイスです」
炎のような赤色の正装を揺らしながら、起立して歩み寄るリレイス。
対するヘルブレードたちもルルガ公国の作法に則り、大公に最敬礼を示す。




