魔王ヘルブレード・フォン・パトラス
「これで終わりだ、魔王ヘルブレード!」
暗夜に包まれた魔王城。
勇者ジークの放った魔剣の一撃が、ヘルブレードの身体を貫く。
「バカな、人間がまさか...魔剣を使いこなすとは」
魔剣を刺すジークの手を掴み、押し戻そうと抵抗する。
魔剣イグナス。
魔族の王であるヘルブレードに対抗できる数少ない武器のひとつであり、神話に語られる武器職人が伝説のモンスターの素材を元に作り上げた。
「ぐ...ぬぅん!」
刺さった魔剣を引き抜き、魔王城の床に投げ捨てる。
「これで終わりだと思うな!吾輩を討ったところで、真の平和は訪れん!
仮初の平和の後、大乱が起こるで...あろう!」
膝から崩れ落ち、ついにヘルブレードは倒れる。
途端、魔王城が大きく揺れ動き崩壊が始まる。
「あばよ、ヘルブレード」
暗転してゆく視界の中、勇者ジークは背を向けて去ってゆく。
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「――――閣下
ヘルブレード閣下!」
「む...」
呼び声で目が覚める。
目を開けると、そこには海軍中将を務めるエレナの姿。
白灰色の髪をした黒い軍服の女性。
「む...我輩としたことが、寝てしまっていたか」
提督の座席から立ち上がり、目を擦る。
(またあの時の夢を見るか)
「こちらの世界」に来る前の出来事。
それを未だに夢見る。
「…現状を報告せよ」
前方を見据えたまま、後ろにいるエレナに報告を求める。
「ハッ、現在当艦隊はトーセイ海峡を抜け、予定通りにイャンガル諸島へと向かっております」
「そうか」
イャンガル諸島。
南半球における海上交易の要。
艦隊の属するランデル国の南西に属し、無数の島で構成されている。
「前方に海洋竜の群れらしき」
「進路を変更、取り舵一杯」
「は、とーりーかーじいっぱーい!」
艦橋内に響く艦長ゴルムの声。
野獣のような立派な体格にふさわしい声量。
海洋竜という、巨大なモンスターの群れを避け、ヘルブレードの指揮する第三撃龍艦隊はそのままイャンガル諸島へと向かう。




