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まほー(物理)  作者: 林檎とエリンギ
11th Theory
459/476

Chapter 006_無限窟①

Dwarf(ドワーフ)

・・・リブラリアのドワーフは偏屈でなければ、ケチでもない。


辛抱強く、鍛錬を欠かさない。

陽気で明るく、お祭り好き。

故郷や伝統を大事にする一方で新技術や流行に目がなく。

他の文化を抵抗なく受け入れる懐の深さもある。


穏やかな性格をしており人間とも、エルフとも、

魔族とさえ仲良くできる社交的な種族だ。


細かくて口(うるさ)い一面はあるケド、ソレは真剣さの裏返し。


私はドワーフが好きだ。

リブラリアで唯一、”種族”として好感を持てる


・・・

・・



「…み?行き止まり…」

「おいおいゲオ君。どうなって…」

「…焦るな。壁の最後、数センチ残しておいただけだ。こぞ…」

「わー…ってるよ!…ったく。ギロチンはツルハシじゃねーってのに…」



・・

・・・けれど。

ドワーフは愛すべき隣人ではあるけれど。


私達人間は”山の子”ドワーフを”本当の意味”で

理解するコトはできない。


彼らドワーフは山を”父”大地を”母”と呼ぶ独特な

山岳信仰をしている。


【山岳信仰】なんて異世界にもあるし・・・いったい、ナニが独特なの?


と、いうと。

彼等の山岳信仰は・・・山を”崇め”ているのは

間違いないんだけど・・・その、”崇め方”が、独特。


信仰対象である神様や仏様って。

普通、大事にするモノだよね?


けれどドワーフは自分達の故郷である・・・”父”である

・・・その山を。


“攻略”するコトを本懐ほんかいとしている。



・・・

・・



「・・・ルクス。お願い・・・」

「…へーへー。…っと!」


『キインッ!』



・・

・・・



裾野に家を建て。

木々を伐採し。

山肌を切り崩し。

穴を掘って。

資源を根こそぎ掘り尽くし。

ゴミと死体と汚染物質を埋め立てる・・・


・・・ソレが。

彼等なりの”崇め方”なのだ。



父なる山はドワーフ達の

揺りかごであり、

家であり、

お墓でもある。


そして同時に

金の成る木であり、

生活の場であり、

ゴミ捨て場でもある。



・・・

・・






「みゃっ!?」

「シュ!?」

「っ!とぉ…危ない危ない。…大丈夫か?シュー?」

「に…に、にゃん。です…。…あ、ありがとです…」

「・・・ほ。・・・ありがとうございましたゲオ様。落ちそうになったシュシュを助けてくれて・・・」

「…いや。今のは足下を照らさなかったオレが悪かった。スマンなシュー…」

「に…、にゃんのです。シュシュも…ちょっと。警戒し過ぎて。足下注意が足りなかったですよ…」

「…オッサン。ちょっとズレろ。穴を拡げてやる…」

「…おぉ。そうだな…」



・・

・・・



ドワーフの神話・・・おとぎ話・・・によると、

山の資源を取り尽くしたその先には【聖域】と呼ばれる場所があり。

ソコには【山の真髄】なるモノが在るそうだ。


ドワーフの攻略目標はこの【聖域】に到達するコトであり。

【山の真髄】を手に入れるコト。



ただし、彼ら自身。


聖域とはどのような場所なのか?

山の真髄とは何か?

そもそも、本当にそんなモノが存在するのか・・・


・・・なにひとつ、分からない。



けれど、

少なくとも旅の途中で出逢った・・・出逢ったと言っていいのか

・・・【焔の(フレイム)ドワーフ】はソコに辿り着き。

ソレを手に入れたと綴られていた。


”滅亡”と。引き換えに・・・



・・・

・・



「ふー…こんなもんか?」

「・・・ありがと。ルクス」

「お、おぅ…」


「…マシェリィ。危ないから気をつけなきゃダメだよ?…ま。もっとも。もし落ちそうになっても助けるけど!」

「・・・ん、んぅ。・・・ありがとフルート。頼りにしてるね。」

「ふふふ!頼られたさ!」



・・

・・・



ドワーフ達の技術も。知識も。その生活も。

全ては、この【山の真髄】(という正体不明のモノ)

を手に入れる為に存在している(少なくとも、彼等はそう考えている)。


山の真髄を手に入れて”どう”するのか?・・・とか。

手に入れた後”どう”なるのか?・・・とか。


彼らは、そんなコトを微塵も考えていない。


技を磨き

知識を蓄え

世代を重ねることで


【聖域】に至り。

【山の真髄】を手に入れる・・・



・・・ソレが。

ドワーフの”存在理由”であると言って

(はばか)らない。



・・・

・・



「…か、壁を開けたらイキナリ垂直の崖とは…」

「危険が危ないですね!」

「風が吹いていないので…こ、こうして照らさないと。ソレと分かりませんね…」


「…ご令妹様も。あまり前に出てはいけませんよ?」

「…う?う、うん。うん…」



・・

・・・



【聖域】とは?

【山の真髄】とは?

【焔のドワーフ】を滅ぼしたのは・・・ダレか?


帽子の先でリングを回す”力場の王”は

きっと、その答えを知っている。



けれど、教えてくれたのは

”力の使い方”だけだった。


【ドワーフ】については何ひとつ、

教えてはくれなかった。






・・・けれど。

()の山の扉を開き、凍える山を抜けた”今”なら

その問いに・・・おそらく。では、あるけれど・・・

答えを出すことができる。



この山の【ドワーフ】達は。

きっと



・・・

・・



・・・

・・



・・・

・・






「…ここが。」

「【無限窟(むげんくつ)】…」


【無限窟】・・・

中2感満載の素敵な名前だけど

ナンのコトは無い。


無限窟とは、昇降機がある(あった)大穴のコト。

天空回路のある上層部とエントランスから伸びる回廊。そして、

はるか地下深くまで続く垂直の穴だ。


どこまで続いているのか・・・ソレは当時のドワーフ達さえ、

(天然の穴だったらしい)分からなかったそうだ。


故に、【無限窟】と名付けられたとか・・・



「…」


大きな耳と目を全開にして暗闇を見つめ、

集中していたシュシュに



「…どうだシュー?何か…」


ゲオ様が問いかけると・・・



「………に…」


・・・シュシュは。



「…微かに…」


ゆっくりと振り返り・・・



「…ずぅ〜…っと。遠くの方に…」


瞳を閉じて。



 「…魔物と。」


開いて・・・



「…強い。”ナニカ”の気配を。感じますです…」


・・・唱えた。





「…魔物だと?」


最初に返したのは、ルクス。



「ドワーフの坑道…だよね?と、いうことは…」


次いでフルート。

(※ドワーフの坑道は本来、魔物が出現しない。仮に出現したとしても、ドワーフ自身が総力を挙げて処理する。だから、魔物の気配がある…というコトは、この坑道が”役目を終えている”事を意味する。)



「シュー。規模は?ソレに…強い”ナニカ”とは?」


ゲオ様に・・・



「規模…と、遠すぎて正確には分からないのです。でも…気配が『モヤモヤ』してるから、たぶん。”群れ”なのですよ…」


・・・シュシュが答え。



「つ、強いナニカ…わ、私も感じます!こ、この無限窟に入った途端。なんと言うか…こ、この穴全体。山全体を”包み込む”ような…し、”支配”するかのような強い気配を!」


グリッサンドさんがシュシュに同意し。



「ナニカ…きょ、強力な魔物でしょうか!?」


ザイロフォンさんは弓を構え



「もしかして…げ、幻獣!?それとも精霊でしょうか!?」


リゾルートさんは警戒を強め



「ご令妹様!」


ローズさんはティシアを抱き締め



「ねさま!」


ティシアが伸ばした手が



「・・・ティシ・・・」


私の手に触れる・・・



「「「「「っ!!!!!」」」」」


直前!!



「来ますです!!」


シュシュの叫びとともに。



「フォニア!」

「マシェリィ!」


無限に続く暗がりから・・・



『ビュオォッ!!!!』


・・・風切り音!?





- - - - -

ここからお話の本筋から離れて、作者による解説となります!!


【天空回廊】の構造に関して・・・

前話でフォニアが説明してくれていますが、

分かり辛かったかもしれないと思い。図を用意しました。


挿絵(By みてみん)


↑要は、こういうこと。

黒い矢印のラインが【天空回廊】となります。


※ただし、スケールは適当なので、ご注意ください。


・・・よろしくね!

- - - - -

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